小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第78話

side 平沢 唯

あれよあれよと時が過ぎて、俺達の卒業式が近づいた日。

俺達三年生は、受験が終わり学校は卒業式まで来なくてもいい日が続いていた。
そんなある日に律からメールが来て、今日学校に集合な、という内容により制服へと着替えるのだ。
すると、ポニーテールに結び制服へと着替えた憂がとてとてと俺の近くに近寄った。


「お姉ちゃん、どうしたの?今日、学校休みでしょ?」

憂はこてん、と首を傾げて俺に質問を浴びせる。俺は憂を見つめて、口を開く。

「うん。律ちゃんが、学校に集合だってさ。だから、制服に着替えているんだよ」


憂は『そうなんだ』と納得し、鞄とギターケースを持ち、俺と共に我が家を出て、学校へと歩を進めていたのであった。


ーーーーーー

学校に着いて、憂と別れ俺は集合場所となっている音楽室へと足を運ぶ。
そして、ドアの前で『ふんすっ!』と気合いを入れてドアノブを捻り。

ガチャ
「うぃ〜す」

のほほんとした声を出しながら音楽室へと入る。すると律、澪、紬はお茶を優雅に啜っていたのだ。もうお茶しているのか、と呆れてしまうが仕方ないよな、と甘やかしてしまう俺。はぁ、やれやれ。

「お茶淹れるね〜」

「ありがとうね、ムギちゃん」

紬によるお茶の差し入れを俺も優雅に啜っていたのだ。俺も依存しているな。

「お〜。いい匂いだ〜」

「うふふ。今日はとっておきのお茶なの〜」


俺と紬による、のほほん世界(ワールド)に律、澪はたじたじになってしまう。

「さーて、何すっかなー」

「おい律、今日は何かするから集合かけたんじゃ無いのか?」

そう俺達は律の提案で学校に来ているのだから、今の発言に疑問があるという訳だ。

「へへっ。ノープラン♪」

「わぁ♪りっちゃんらしいね」

何も考えていなかった律。や、何かあるだろうが・・・
とりあえず、紬が持ってきたお菓子を食べる事にする俺。ポッキーを手に取り『ももももっ』と一本のポッキーを何回噛めるかと自分で考え、やったのだ。何か知らんが急にやりたくなったのだ。


「唯ちゃん、何やっているの?」


「一本のポッキーを何回噛めるかを計っていたの」


「わっ、ぐだらねー・・・」


紬の疑問に答え、律はかなりやる気が無さそうにツッコミを入れる。ま、ぐだらないよな。

「し、勝負!」

紬はポッキーを手に取り俺に戦いを挑む。いいだろう、その勝負受けて立とう!
律に審判させて律は渋々了承。律の『よーい。どん』というやる気の無い声で俺達は『ももももっ』とポッキーを小刻みにかじりつく。

「私、三十回!」

「私もだよ唯ちゃん!うふふ♪引き分けね」

「格闘家の道はまだ遠い・・・」


「や、格闘家関係無いだろ」

俺のボケに澪はツッコミを入れる。いや、いい勝負だったではなかったか。
律は立ち上がって俺達は何だ?と聞くと


「あ、そういえば、教科書とか持ち帰っていなかったなー」


「え?まだなのか?卒業式まで後ちょっとしか無いのに」


律の発言に耳を疑った澪。それはそうだよな、山中先生は、早い内に持って帰りなさいと俺達に厳重注意したのだ。故にもう持って帰っただろうと誰もが確信してしまうのだ。
三年二組の教室へと向かい律は自分の机の中を漁り、教科書をたくさん出す。おいおい、何でそうなる前に持って帰らないんだよと呆れかえってしまう。

「あら?何で唯達がここにいるの?」

何と和の登場により俺達は少し硬直したが、俺は『遊びに来たんだよ〜』とのほほんとした声で答えて和は『そうなんだ・・・』とジト目で見ていた。や、別にいいだろ?和よ。

「私は、卒業式で答辞を任されているから最終確認と生徒会の整理をやる為に学校に来たの」

『おお・・・卒業生っぽい』

和はいつの間にか俺が見ない間にものすごく成長していたのだ。ああーー時が流れるのは早いな、としみじみに思う俺なのであった。

俺達は暇なので和について行き、職員室へ移動する。どうやら答辞の確認するのは山中先生らしい。

「うん。いいわね。あと、一言を付け加えたいんだけどね『山中先生のおかげで私は卒業する事が出来ました。ありがとうございます山中先生』て。感動するわよー」

「さわちゃんがだろ?」

「そ、それはちょっと・・・」


山中先生の無茶ぶりに和がたじたじになってしまう。おい、これ以上和をいじめるなよ。いくら先生とはいえ、怒る時は怒るぞコノヤロー。

「教頭先生に渡してね。教頭先生もチェックするから」

「はい。分かりました」

和は退出し俺達も退出しようとするのだが、山中先生に呼ばれた。

「みんなは何で来たの?」

そんな山中先生の疑問に俺達は『遊びに来た』と言ったら果てしなく困っていた。
とりあえず、他の学年には迷惑をかけないようにと注意され、俺達は職員室を退出した。
外には和が立っていて俺達を待っていてくれていたようだ。

「じゃ、私、生徒会室に行くから」

という事で和は生徒会室に行くが、俺達は相当暇なので生徒会室へと直行。

「お邪魔しまーす」

「え?何か用?」

俺達は急に訪問するから和は焦っていた。
俺は普通に音楽室に行くのがつまらないからという勝手な言い訳をしてずかずかと生徒会室へと入る。
俺は本棚に直行し、とある赤い本一冊が飛び出していて気になり手にとってみると・・・

「ふぉっ!?」

そこには和の写真が写し出されていたのだ。それに生徒会のメンバーが勢揃いの写真もあり、まるで・・・

「お見合い写真みたいだね!和ちゃん!」


きっぱりと言い張った俺に和は恥ずかしそうに頬に朱を浮かばせ、ポリポリと頬を掻き

「それずっと前から続けていたそうで年度が変わる度に生徒会の写真を撮るの」

はにかみながら和が言う。すごい貴重なシーンだな和よ。
俺達はそろそろ飯を食べたいので生徒会室を出て購買部へと向かう。が、三年生である俺達が購買部に行くのは些か恥ずかしいのだ。何故ここにいるのか?等が言われる可能性があるので立ち往生していたのだ。
すると、ジャージ姿の純、梓が見えてきたので声をかけると・・・

「へぇ、来ていたんですか・・・」

「はぅ!?梓ちゃんが冷たいよ!」

ジト目で見てくる梓にショックし、泣きそうな声を出す。ま、それよりもだ。各自、欲しい食べ物を欲求して梓は仕方無さそうに購買部へと向かい食べ物を買う。が、純は・・・

「あ、あのっ、唯先輩の分は私が買います!」

「あ、ありがとうね。純ちゃん」

キラキラした目で俺を見るのだ。俺は少し硬直して『じ、じゃ、チョココロネを・・・』と頼み、純は元気よく『はいっ!』と言い購買部へと向かっていたのだ。まぁ、買ってもらえればいいのだが。憂はどうしたのか?と聞くと憂は何らかの用事で来れないそうだ。で、音楽室へと向かい買ってもらったパンを机の上に並べていたのだが・・・40cmはある長さのチョコパンがどーんと置いてあったのだ。何なんだ?これ。俺は購買部をまったくといい程利用していないのでよく分からなかったのだ。

「え?知らないんですか?これ『ゴールデンチョコパン』ですよ。いつも先輩達に取られていて一年生や二年生に大人気なんですよ」


「ゴールデン・・・どの辺が?」


梓の説明に、ごもっともな発言者の紬。確かに、何か全体的に黒いし全然黄金じゃない件について俺達はざわついていたのだ。
こう。『ざわ・・・ざわ・・・』みたいな感じでな。
そのゴールデンチョコパンの味はとってもとっても甘く、チョコが中までぎっしりと入っており何だか幸せを感じたのだ。


「このパンは隅っこに隠れてました」

「や、これが隠れる事は無いだろ・・・」

梓の説明にツッコミを入れる律。
五人だけでその人気のパンを食べるのは、何だか気が引けなくて憂や純の分を残し、お土産に、と梓に渡す。
梓は『分かりました』と了承して、次の授業の準備をするので音楽室を出たのだ。

さて、また俺達三年生組がだらっとしているのだ。おいおい、やる事があるだろ。
あ・・・そういえば、物置に『アレ』があったな・・・よし、『アレ』で来年度の新入部員は少なくとも入ってくれるだろうな・・・ま、『アレ』を新歓ライブで『ある事』をするので何かと教師の許可とか必要になるからな。それは追々伝えよう。まずは『アレ』を使うので物置に行き、『そのアレの物』を持ち出したのだ。


「ん?どうしたんだ?そんなもの」


律の発言で澪、紬も首を傾げ俺が持っている『ソレ』に興味を持っているようだ。

「これでね。講堂の『ーーー』を使って、『ーーー』する事で来年度の新入部員が獲得出来ますように、って願いを込めてね。私達、軽音楽部の卒業生として軽音楽部を存続させたいから」



俺の提案で律達は『おおっ!!それいいね!』と俺の提案は採用され、その『ある事』をする為に各自準備をするのだ。だが、澪は


「でも、他の学年の邪魔に・・・」


そうその『ある事』をする為には、ある『原因』により、学校に『ある現象』が起こるのだ。


「大丈夫だよ。次の授業は憂から聞いてね、一年生と二年生は講堂で防犯教室を開いているらしいんだよ。今は五時間目の授業が始まっているから今がその防犯教室の授業なんだよ。それに六時間目も引き続いてから防犯教室やるから誰の邪魔にはならない筈だよ」


学校と講堂は離れているから『ある事』による『ある原因』は他の学年及び教師には迷惑にならないのだ。


「へ〜。すごいね唯ちゃん、そこまで考えていたなんて♪」


「いや〜。でへへへ〜」

紬による褒め言葉でものすごく照れる俺。恥ずかしくて頭を掻き顔がにやけてしまった。

「よし、その『ーーー』で新入部員を獲得するぞ!」


『おおっ!』

律はここぞの時にはリーダー的な発言をするのは、少しばかりいいどこどりしてるなとジト目で見てしまう俺。ま、いいや。俺達は『ある事』を『ソレ』に向かい、準備をしてみんなが準備をしたのを確認して『ある事』をするのだったーー。


(※この話は後々、誰かの視点で来年度の新歓ライブの時、語るのでお楽しみに)




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