小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第81話

side 秋山 澪

来年度の軽音楽部の為に、勧誘ビデオを作成して完成させた数日後の事だ。

私達三年生は、受験が終わった事で学校に来なくてもいいという話だったけど、連絡網で卒業アルバムの見本が出来たという事でみんなはそのアルバムの見本の見たさに学校に集まるらしい。
律やムギ、唯に『今日、学校に行く?』というメールを送り、律達も学校に行くという報告を私の携帯が知らせたので、私は自分の部屋で制服へと着替える事に。

すると・・・
ガチャ
「お?澪?」

急に私の部屋に侵入するパパ。
って、まだ着替えているんだけど!

「ま、まだ着替えているからっ!で、出てっ!」

「す、すまん。澪」

バタンと扉を閉めてパパは部屋を出て行ったけど、ううっ恥ずかしい!
私の部屋に入る時はノックするように、と言っていたんだけど何で忘れるかな・・・

とりあえず、制服へと身に包み込みリビングへと直行。朝食を食べるからであり、私はいつものように静かに座る。
するとパパが、

「澪はいつの間にか大人になったなー。はっはっはっ」

「うっ!やめろよ!」

パパは笑いながら私をからかうので、私は顔を真っ赤にして大声出してしまった・・・パパの所為だぞ!

「やめなさい。澪が恥ずかしがっているじゃない」

ママがパパを叱ってくれたので、パパは『ごめんよ。澪』と私に謝罪するので私は仕方なく許す事に。


「じゃ、食べましょう。いただきます」

『いただきます』

こうして、私は家族と共にささやかな朝食を済ましていた。

ーーーーーーーーー

そして、昼休み。
私達は音楽室にて集まり、ムギが淹れてくれたお茶を嗜んでいた。


「あの、今日って学校無いんじゃ・・・」

梓はおずおずと聞いてくるので、今回集まったのは卒業アルバムの見本を見たい為と話し、梓は『なるほど』と納得したようだ。すると・・・

ガチャ
「みんな、卒業アルバム持って来たわ」

『え!?』

卒業アルバムを数冊抱えていた和がやって来て律達は『見せて見せて』とはしゃいでいた。私も気になるので、律達に近寄る。


「さぁ、いくよ!みんなっ!」

『おうっ!』

唯が代表してアルバムの見本を開き、そこには・・・

「わっ!私のでこが輝いている!」

「うふふ。りっちゃんらしいわ〜」

「こらっ!ムギ!」

律とムギは戯(たわむ)れていたけど、気にせずに私が写っている写真を見てみると・・・少しばかり緊張している私が写し出されていた。

「うっ!何でこんな写真を・・・」


『和〜ぁ』

私と律は和に駆け寄り写真の事で文句を言うけど、和は『私が決めたんじゃないんだけど・・・』と困り果てていた。

「でも、さわ子先生にチェックしてもらいたかったけど・・・いなかったの」

「へ?どうしてですか?」

私達三年二組の生徒はさわ子先生が風邪で休みだという事は知っていたけど、憂ちゃん達の他学年の生徒達は事情は知らないようだな。
それを聞いた律は、少しニヤッとしてすぐにそっぽを向いた。まさか・・・

「ああ。さわちゃん、いい人だったけどな・・・」


『え!?』

憂ちゃんと梓は驚きの声を上げて、ムギも落ち込んだ演技をして口を開く。

「私の口からも言えないな・・・」

「え?そ、そんな・・・」

梓は涙目になってムギを見るけど憂ちゃんは唯の表情や和の表情でドッキリだと見破ったようだ。すごいな・・・憂ちゃん。

『うっそでーす!』

「え!?も、もう知らないですっ!」

梓は顔を真っ赤にしてそっぽを向く。いじられるのは、少しばかり恥ずかしいよな梓。


「そうそう、この卒業アルバムの見本をさわ子先生に見せてくれないかしら。明日、これを返さないといけないのよ」


何で私達が渡さないといけないかというと、和は生徒会でやり残した事があるらしいので忙しいらしい。

私達は靴箱へと向かい憂ちゃん、和、梓が見送る事に。

「あ、あの。み、澪先輩・・・放課後」
〜♪昼休みが終わった事を学内放送で伝えた音で梓は何かを私に伝えたかったらしいんだけど、私は『早く次の授業の準備したらどうだ?』と提案。梓は『あ、そ、そうですよね』としょんぼりとして憂ちゃんと共に移動する。一体、何だっただろうな?そして、軽音楽部のみんなで顧問であるさわ子先生の自宅を和が地図で渡し、律の先導のもと、さわ子先生の自宅へ訪ねる事に。


「えっと、この辺かな?」

住宅地の中で見た目普通のマンションが見えた。このマンションの中の部屋がさわ子先生の家らしい。
でも、急にお邪魔したらさわ子先生に迷惑がかかるんじゃ・・・と思い、律達に説得するんだけど・・・

「え?でも、お見舞いの為にジュースとか買っちゃったし・・・」

ムギはいつの間にか買ってきた買い物袋を私に見せるけど、私はまだ説得したいので口を開く。

「せ、先生にもプライベートってものがあると思うんだ・・・かっ、彼氏とかっ」

『へぇ〜。じゃっ、行ってみよう!』

律、ムギ、唯はそそくさとさわ子先生が住んでいるというマンションへ突入。ってムギや唯までー!?
仕方なく私もマンションへ突入し、律達と合流。律は『お?結局、澪も来たのか?寂しかったでちゅか〜?ぷぷ』とニヤニヤして私の頭を撫でながら私をいじっていたので、私は『う、うるさいっ!』と言って律の頭に拳骨をいれる。


「ぐぉぉっ・・・」

律は頭をさすりながら悶絶。ふんっ自業自得だ!
とにかく、私達はさわ子先生の住んでいるマンションの番号をメモで確認して律は『ここだな』とインターホンを鳴らそうとしていたけど・・・そこは違う部屋でさわ子先生は隣の部屋だった事を私は気づいた。

「なぁ、さわ子先生の部屋そこじゃないぞ」

「へ?」
〜♪ピンポーン。

なんと、律は違う住人の部屋のインターホンを鳴らしてしまった。律は『どうしよう!?』と慌てているので素直に謝ろうと私は提案して、住人を待つ事に。

「あれ?来ないね」

ムギの言う通り、住人は数分経っても来なかった。良かった、ここの住人は留守のようだったな。

すると・・・
ガチャ
『!?』

隣の部屋からさわ子先生が来たから慌てて私達は逃げ出したけど、唯だけがその場にいたので私達は驚きを隠せない。

「あ、山中先生。ちょっといいですか?」

「唯ちゃん?何でここに?」

唯は何やら話していて、遠くにいる私達には聞こえなかった。ど、どうしよう。何でか分からないけど隠れちゃった・・・

唯はさわ子先生の部屋に入っていく事を確認した私は、『私達も行こうよ』と提案して私達もさわ子先生の部屋に突入。って、インターホンは!?

「いいんだよ。唯が入ったから私達もそれに乗じて。さ、突入だー!」

「ラジャー♪りっちゃん♪」

「ムギまで!?」

とりあえず、私達は強引にさわ子先生の部屋に突入。唯とさわ子先生はリビングらしき場所で卒業アルバムを広げていてさわ子先生はチェックしていた。

「あら?あなた達も来ていたの?わざわざありがとうね」

さわ子先生は私達に気づいて、ムギは『じゃ、お茶淹れるわね〜』と台所らしき場所までとてとてと駆け寄り、お茶を淹れていた。ていうか、自由だな・・・ムギは。

「うん。大体こんな感じかしらね。もう、結構よ。風邪がうつっちゃうから早く帰りなさい」




唯は『そろそろ行こうか、みんな』と私達もそれに賛成して、さわ子先生の部屋を出るんだけど・・・

「おおっ!?さわちゃんの昔の衣装みっけ!ていうか、派手だなー。さすがさわちゃん!」


律はさわ子先生のクローゼットを勝手に漁っていたので、『勝手に見るなよ!』とさわ子先生の代わりに叱る。ムギもその衣装を見て目を輝かせていた。

何だかんだでさわ子先生の部屋に留まり、さわ子先生の為に料理や洗濯をやりたいとムギが言い出したので、とりあえず料理当番と洗濯当番をじゃんけんで決める事に。

「ええ!?じゃんけんで決めるの!?」

さわ子先生は私達の行動に驚き、不安がっていた。まぁ、律やムギ、唯は料理は出来るらしいから誰が台所に立っても、誰かがフォローするので、問題が無いとさわ子先生に説得して何とか納得させた。


ーーーーーーーー

夕方まで掃除や洗濯を私とムギが担当して、料理は唯と律が担当していた。私は台所が良かったんだけどな・・・


ベランダに洗濯物を干していたので、私とムギは協力して洗濯物を手にとってどんどんカゴに入れていく。


「わっ!黒の下着!?」

私はとんでもないものを発見してしまった。ママの下着も見たことあるけど、何だか透けていたような下着が私の手にあった・・・これはさわ子先生の物だよな・・・
す、すごい大人だな・・・さわ子先生。

すると・・・
「おい、澪!これ味見してみろよ!すげぇ美味いぜ!唯が作ったやつ!」

律が小皿を持って来てその上には、じゃがいもが乗っていた。私は小皿を受け取り、じゃがいもを食べてみると・・・

「・・・!?美味しいじゃないか!本当にコレを唯が!?」

ただのじゃがいもだった筈だけど、中はホクホクのまろやかな味が中まで染み込んでいた。普通の肉じゃがよりもしっかりと味を整えていて、家庭に出したらすぐに食べきってしまう程の美味しさだった。本当にすごいな・・・唯。


「あれ?あの人達って・・・」

ムギは外にいた人達を見て、私達も外を見る。あの人達は確か・・・
『デスデビル』!?

そうか、紀実さん達もさわ子先生の様子を見る為にお見舞いして来ているんだな・・・

「律ちゃーん。あれ?みんなどうしたの?」


唯が律が来ない事に不思議を感じたのか、私達と合流して、『デスデビル』がお見舞いするだろうから帰ろうと提案して、律達は賛成してくれて、部屋を出ようとすると

ガチャ
「あれ?あなた達も?」


『デスデビル』が私達が扉を開ける前に、現れて私達は硬直。

「今から帰る所ですよ。河口さん」

唯は紀実さんに今帰るという報告をして、紀実さんは『もうちょっといないの?』と聞いたので律は・・・

「いいえ、ここは狭いですから大人数ではちょっと・・・」

「律ちゃん、狭くて悪かったわね」

さわ子先生はジト目で律を睨みつけていたけど律は気にせず『部室に行こう』と私達に提案して、私達はマンションを出て行ったんだーー。

ーーーーーーーー

そして、学校の校門に私達は着いた。
すると・・・


〜〜♪♪♪♪
「あ、憂や梓ちゃんのギターだね」

外からギターの音だけで弾いている人物が分かったという唯。ジャズ研だって練習しているらしいのに、わずかな違いに気づいてしまうらしいな唯は。いや、唯にとってはわずかでは無いかもしれないけどな。


「じゃ、部室に行きましょうか〜」


『おお!!』

ムギのおっとりした声で私達は気合いの声を入れて部室である音楽室へと直行して、扉を開けようとしたら・・・


〜♪♪♪

『あ、そこ、こうだよ。〜♪♪♪はい、やってみて憂』

『あ、そっか。こうだね。〜♪♪♪出来たん』


私達はせっかくの練習を邪魔しないようにと、帰ろうと提案したら・・・


ガチャ
「あれ?先輩方?」

「お姉ちゃんに、みなさんも。どうかしましたか?」


梓と憂ちゃんが突然扉を開けて律は『逃げろー』と言うので、私も従う。だってあんなに練習を一生懸命頑張っていたもんな。


「梓ちゃん、憂!新歓ライブ頑張ってね!」



「私達は、梓や憂ちゃんの事を応援しているからな!」


唯、律は梓達に励ましのエールを送り、私やムギもそれに乗じて


「大丈夫だから!自分を信じて!」


「憂ちゃん、梓ちゃん。ずっとずっと頑張っていたからきっとやれる筈だよ!」


私達は梓達に応援のエールを送り、来年度の新歓ライブが大成功しますように、と願いを込めて私達のいつもの一日が終わったんだーーー





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