小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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前書き

さて、ここからが海外旅行編なのですが、ここでお知らせです。
この海外旅行編は、映画館で上映された劇場版のけいおん!とは内容が異なる事をここに報告します。
この『俺は平沢唯に憑依してしまう。』のオリジナルの内容となっていますので、ご了承くださいませ。
では、ごゆるりとご堪能くださいませ。




第82話

side 平沢 唯

やっと第一志望の進学の合格が決まって数日たったある日の昼休みになり、紬が軽音楽部のみんなに話があると真剣な眼差しで俺達はそんな紬の願いを聞いて憂や梓にメールを送り音楽室へと集合した。


「どうしたの?ムギちゃん」


「みんなが集まってから話したいの」

紬の表情は真剣そのもの。律達も紬の真剣さに何も聞いて来なかった。

すると
ガチャ
「すみません、遅れました?」

「あ、あの、話しがあるって?」


梓と憂はおっかなびっくりの表情で俺達を見る。紬以外は事情は知らないので、俺達は紬に『何の話だ?』と事情を聞く事に。


「あのね、みんなで海外旅行に行かない?」


『え!!?』

紬による予想外の発言で俺達は驚きの声を上げる。しかし、紬よ。あまりにも急過ぎるんじゃないのか?

「でね、卒業記念にみんなと思い出を作りたいから私、みんなと海外旅行に行きたいけど・・・ダメ?」

紬はこてん、と首を傾げ俺達を見渡す。
いや、ダメという事は無いのだが・・・

「え!?あ、あの、私や憂もご一緒しても良いんですか?ムギ先輩」

梓は俺達が卒業する事が決まったので、卒業旅行するのだろうと思っているのだろうか、おずおずと手を上げて紬に詰め寄る。

「うん。軽音楽部と一緒に海外に行く事が夢なの。だから、お願い!みんな海外に行きましよう!」


紬は頭を深々と下げて、律や澪は慌てて紬をあやし、頭を上げるように促す。

「ああ!行こうぜ!ムギ!みんなもいいだろ?なぁ、澪?」

「うん!私、海外楽しみだ!行こう!ムギ!な?憂ちゃん、梓、唯」

「行きます!みんなと海外か〜・・・楽しみだね!梓ちゃん!」

「うん!唯先輩も賛成ですよね?」

誰が反対するもんか。海外なんて行った事無いから、興味が無いという訳が無い。


「うん、でも、場所はどこなの?ムギちゃん」

紬は『それが・・・』と自分の髪をいじり、もじもじしているが・・・何かまずい事があるのか?

「あのね、本当はみんなと一緒に相談して場所を決めたかったんだけど・・・別荘がフィンランドしか空いていないの・・・だから・・・フィンランド以外の外国に行く事が出来ないの。ごめんなさい!」


紬はまたも頭を深々と下げた。何だ、そんな事で悩んでいたのか・・・いや、紬の場合は『そんな事』じゃ済まないだろう。しかし、ホテル代くらいは俺達でも払えるからどこでもいいだろうと聞くが、海外のホテル代は最近、高値らしい。安値のホテルでもいいと思うのだが、少しでもお金を使わないで楽しんで旅行に行こうと紬の提案を俺達は承諾。

俺達の事を一生懸命考えてくれたんだ。想ってくれていたんだ。俺は優しい笑顔になり口を開き、紬の説得を試みる。

「頭を上げてよムギちゃん。私は嬉しいよ。ムギちゃんは私達の為にこんなに悩んでいたなんて。私はみんなが楽しめるならフィンランドでもどこでもいいんだよ。だから、ね?」

「ゆ、唯ちゃん・・・」

「そうだぜ!ムギ!私達に海外を紹介してくれるだけで幸せだ!」

「り、りっちゃん・・・」


「くすっ、フィンランドか。楽しみだな、オーロラとか見れるかもな」

「み、澪ちゃん・・・」


「そうですよ。海外なんて行く機会はそうそう無いですから」


「あ、梓ちゃん・・・」


「私も皆さんと海外に行く事が夢でしたから。えへへ〜」

「う、憂ちゃん・・・みんな、みんな本当にありがとう!」


紬は涙目になりながらも俺達に感謝の言葉をいつまでも俺達の心に届くように必死に送っていた。本当は俺達が感謝したいんだがな。俺達の経済面でも心配したんだな、ホテル代とか高いし、紬に全てを任せる事なんて何だか気が引けるしな。


「そ、それでね?みんなパスポートとか持っているかな〜?って思ったりしてて」

紬は長期休暇の時に海外に行くのでパスポートは更新したりしているらしいが、俺達は海外に無縁なのでパスポートは持っていない。紬が一緒に俺達のパスポート発行に協力するから休日にパスポートセンターという場所に各自パスポート発行の為に必要な物を用意して集合するらしい。

「みんな、絶対に楽しもうね!」

『おおっ!!』

紬の喝により、気合いが入りまくる俺達。
さて、パスポート発行の為に必要な物を調べますかね。

ーーーーーーーー

パスポート発行の為に必要な物を調べて、それらを用意した休日。
いや、本当にめんどくさかったな。色々と必要な物がたくさんあったから少し手間取った。
一般旅券発行申請書やら住民票やらパスポート用に貼る写真やら身元確認書類等々憂と共に確認しあい、割と遠くにあるパスポートセンターへと歩を進める。

すると、パスポートセンターへと行く途中に山中先生が証明写真を撮る機械から出てきたのを目撃。

「あれ?山中先生?」

山中先生も俺達の存在に気づいて、俺達は山中先生のもとへ駆け寄る。

「先生、なんで証明写真なんかを・・・」

山中先生が言うには、スポーツクラブの会員になるらしいのでその会員登録に必要な写真を撮っていたらしい。


「で?あなた達はどこに行くの?」

山中先生は教師なので我が生徒達の心配してくれているんだな、としみじみに思い俺は海外に行くからパスポートを発行するのでパスポートセンターに行く途中と答えたのだが、山中先生はというと・・・


「海外!?いいなー・・・私、行った事無いわよ・・・」


かなり羨ましそうに俺達を見つめているので、憂はとてもとても優しい子なので『先生もご一緒しませんか?』と提案してくれた。ああっ、憂が天使に見えるっ!

「やめとくわ。せっかくの誘いなんだけど、初の海外が教え子と一緒はね〜・・・」

なんとまさかの憂の提案を却下した山中先生。なるほど、プライドか。プライドが邪魔して海外の誘いを断ったのだな。


「じゃ、ハネムーンで行けばいいのでは?」


「ハネムーン・・・いいわね♪それ♪」

俺の提案で山中先生は頬を朱に染めてうっとりとする。まぁ、相手がいればの話だがな。とりあえず、山中先生の腹を見て『頑張ってくださいね。そこも』と言いながら山中先生と別れるが山中先生は『余計なお世話よ!唯ちゃん!』と遠くからツッコミを入れてきたので、振り向かずに手をふらふらと振り、憂はちゃんとお辞儀をして別れる。うむ、本当に出来た子だな。

で、歩く事数分後、パスポートセンターの入り口前へと着いた俺達。律や澪、紬、梓も集合していて早速入ろうと促し、入り口に入りパスポート発行をする窓口を天井付近にある場所案内を頼りに歩を進めることに。

「ムギ、わざわざ来てもらってありがとうな」

律は紬が同行している事に感謝して紬は『私が言うべきだよ、りっちゃん。私のワガママを聞いてくれてありがとうね。みんなも』と律を始め俺達を見渡し一礼する。


そんなこんなで窓口に行き、何故か出席番号順で並び、まずは澪からチェックさせたのだが・・・

「あの、この写真は使えません。頭部を空けないといけないんですよ。ですので、撮り直しを・・・」

「え!?」

澪の写真は髪型をアップにして、写真の頭部の部分が途切れていたので、そこに何が隠されているか分からないらしいので、撮り直しを命じられたのだ。



「なぁ、澪。何でそんな髪型にしたんだ?」


律の疑問はごもっともである。何故そんな髪型にしてまでパスポートに載せたいのか分からないのだ。


「だ、だって、大人っぽく魅せたかったから・・・」


「あ、確かに外国人にとって日本人は子供っぽく見えるらしいですよね」

澪は子供扱いにされるのが嫌なのか、髪型を変えたと言うのだ。そして、憂が言う通り我々日本人は外国人から見たら子供扱いらしい。

「あ。あそこに証明写真を撮る機械がありますよ。アレで撮り直しましようよ澪先輩!」

梓は機械を指差し、澪は安堵の表情で機械へと歩を進める。


「パスポートって案外難しいね〜お姉ちゃん」


「そだね〜憂」

俺達は、のほほんと会話をしながら澪の写真を撮るまで機械の外で待つ事に。


「そうよ〜。私も少し苦労しちゃって〜」


紬も俺達と同様にのほほんとした声で会話をするのだが・・・何故か俺がいる空間がふわふわしているのは気のせいだろうか。


すると・・・
カシャッ
「ちょっと笑っちゃったじゃないか!」

澪が突然機械から顔を出し俺達を注意しているのだが、どの辺で笑ったのだろうか?いまいちよく分からなかった俺であった。


「もう一回撮り直しじゃないか・・・」


「す、すみません。澪さん」

澪は少し不機嫌そうな顔をしていたので憂が代表して謝った。まあまあ憂がこう言っているから許そうではないか。


「・・・じゃ」

律は機械に手を入れて自分の手と澪を撮る作戦だったらしいなのだが

「律!」

「何で分かるんだよ!」

見事に澪は律が悪ふざけをしたのを言い当てた。何で分かるのだろうな。長年の付き合いからきているからだろうか。

そんなグダグダした感じで書類等提出した俺達はだいたい一週間後にパスポートが発行するという報告を聞き、パスポートセンターを後にする。

ーーさて、初の海外がフィンランドという事が決定されたから楽しみだな。



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