小説『俺は平沢唯に憑依してしまう。【完結済】』
作者:かがみいん()

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第91話

side 平沢 憂

世界エアーギター大会を見た後、飛行機に乗って機内食を食べて、別荘に帰って旅の疲れをとるんだけど・・・

「ほげぇ〜・・・」

「しっかりしろよ・・・律」

「まだだ・・・まだやれるよ・・・」

お姉ちゃんや律さんはだらっとしちゃっているの。確かに私も少し疲れちゃって、数分休んじゃったけどお姉ちゃん達は1時間ずっと横になっているの。

「しっかりしてよ、お姉ちゃん。律さんも頑張ってください」

「ふんすっ!」

「・・・ほげ〜〜・・・」

お姉ちゃんはすぐに立ち上がったけど、律さんがまだだらっとしちゃっている・・・。う〜ん、そこまで疲れているなら、もう少し休ませてあげようかと思っていたら・・・

「はやく起きろっ」

がんっ
「いっ、てーー!!」

澪さんの拳骨で律さんは頭にたんこぶを作って起き上がるの。えへへっ、いつものみんなだ。なんだか安心するよね。

「さて、とりあえず・・・寝るか〜」

「りーつー!」

「あ、あはは、じょ、冗談だよ。まったく冗談が通じないな〜。澪ちゃんは!」

「いつもの行いが悪いからだっ」

がんっ
「いってーー!!二度も殴ったな!親父にも殴られたことないのに!」

「そんなの知らないぞ・・・」

いつもの律さん、いつもの澪さんを見て何も変わらないな、と安心しちゃうな。だって、こんなに楽しい人達とバンドが組めて本当に楽しいもん!

「・・・で・・・コソコソ・・・」

「・・・♪はーい♪」

お姉ちゃんとムギさんは内緒話をしているけど、何の話かな?お姉ちゃんは紙をムギさんに渡したけど、あれっていったいなんだろう?

ーーーーーーーーーーー
〜『回想 side 平沢 唯』〜

帰りの飛行機の中、そろそろ歌詞を出さないといけないので、ふんばって書き綴った訳なのだが・・・

  −−天使にふれたよ(※今回もこの作品のオリジナルの歌詞として書きます。ベースは原曲のままだと思ってくれれば幸いです)

 なぁ、思い出のヒトカケラに
 名前をつけるならこうしよう
 『絆』という僕らの宝物
ーーー以下略

どういう訳か、スラスラと書けてしまったのだ。うーむ、自分の才能が恐ろしい・・・。
とりあえず、紙と鉛筆だけは肌身離さず持っていたので、歌詞を書けたのだ。別荘に帰ったらすぐに紬に提出しておこうか。

ー『回想 終了』ーー

ーーーーーーーーー
side 琴吹 紬
唯ちゃんが早速、歌詞を書いてくれたから曲調とか頭の中でイメージするんだけど、なかなかいい歌詞でメロディのイメージがどんどんと浮かんでいくの。
でも、今は目の前に梓ちゃんや憂ちゃんがいるから楽譜を書けずにいるの。う〜ん、なんとか澪ちゃんやりっちゃんにもイメージくらいは伝えたいな。

「そろそろ真面目に練習しよう。特に律」

「え?!私だけ?!」

いつもの会話を楽しみつつ、この海外旅行の最終目的である『海外での演奏』を行う準備をしているの。
実は、パパの知り合いでこのフィンランドの野外ライブを行うけど、参加者が足りないから演奏する?
という演奏の誘いを受けたので、私はすぐにみんなに報告してそれぞれの了承を得て、それぞれ自分がやれることをやっているの♪

「うーん、やっぱり英語の歌詞って読みづらいなぁ〜」

「がんばって!唯ちゃん!」

会場が海外な為、歌詞も英語で歌おうという事にしていたの。私や澪ちゃんもできるだけ英語の発音や歌詞の英語のスペル等を見直してあげることに専念して、唯ちゃんにあんまり負担をかけないようにしているの。

「まぁ、歌は『ふわふわタイム』だし、簡単だと思うけどね」

「その調子でがんばってくださいよ。唯先輩」

こんな感じで暗くなるまで、時折お菓子を食べたりお茶を淹れてあげたりして演奏を続けていたのーーー。

ーーーーーーーーーーーー

side 田井中 律

夕食も食べて、風呂にも入って各自部屋に戻ることにした私達軽音楽部。
けど、ムギが妙にそわそわして気になっている私は、落ち着きのないムギに何か事情があるのかを聞いてみると・・・

「あのね、あのね。唯ちゃんが歌詞を書いてくれました〜♪じゃーーん♪」

高らかに歌詞を書いてある紙を私達に見せるけど・・・な、歌詞だって!?そんなもんいつ書いたんだ!!

「あと、曲も何とか作ってみました〜」

「「な!!?」」

「ほえ〜、仕事が早いね〜。ムギちゃんや」

私と澪が驚いて口が開く中、唯はのほほんとしている!な、なんなんだ!このぼのぼのコンビは!!

「でも、すごくいい歌詞だ。こんないい歌詞は『U&I』以来だな」

「いや〜、でへへへ」

澪に褒められて嬉しいのか唯は顔をニヤニヤさせ、照れながら頭をかいていた。唯・・・お前って一体何者なんだ・・・。
でも、私は一つだけ気になることがある。いや、二つかな・・・とにかく私は口を開き。

「でもさ、練習はどうするんだ?あと、ボーカルは唯だろ?」

そう!私が気になることはソコなんだよ!!私達は野外ライブの為に『ふわふわタイム』の練習しているだけで、新曲は一度も練習していなんだよ!どーすんだよ!唯!

「そこなんだけどね〜・・・ボーカルの件はさておいて・・・」

「ね、唯ちゃん。みんなで歌わない?私、梓ちゃんや憂ちゃんの為に歌いたいの」

なんとっ?!ムギは新曲を歌いたいと言ってきやがった!むむぅ、梓や憂ちゃんの為だからという理由を聞いて私もその案に賛成したい!ここはやはり、部長らしく。

「みんな聞けーっ!この『天使にふれたよ』はみんなで歌うぞー!これは部長命令だっ!」

「ちょ、こんな時に限って部長命令って・・・はぁ、律らしいというかなんと言うか・・・」

「賛成!いいよね?唯ちゃん!」

「う、うんっ。いいよ。一緒に歌おうね」

ふふふ。見たか、澪。これが部長の力だ。ニヤニヤして澪を見、その視線を察知したのか澪は少しジト目で睨んでくる。だが、何かを忘れているような・・・

「で、練習は?どうすんだ?律」

「あ・・・助けて〜。唯えも〜ん」

澪めっ!ようやくみんなをまとめられたのに!水を差すようなこと言いやがって!早速、唯に助けを求めたくて堪らないので、唯に抱きつきながら助けを求めることにしたんだ。

「ぅおっ!おお・・・練習はね・・・」

「「「・・・」」」

部屋は静まり返って唯の返答を待ち、実際は数秒の間だったけど私達が感じたのは数十秒ものの時間が経ったような気がしなくもなくもない!あれ?今どっちだ?気がするのか?気がしないのか?

「しないよ」

「ずこーっ!」

ケロッとした表情で唯は答えてしまうけど、そんな即答で答えられても・・・
でも、練習しないでどうすんだよ。はっ!!ま、まさか・・・

「まさかとは思うけど・・・ぶっつけ本番、ってわけか?唯」

「律ちゃん、正解!」

そんな練習もしないで簡単にいけるものなのか?絶対無理だ・・・でも、練習している時間も場所もないしな・・・。

「ぶっつけ本番か・・・ムギいけるか・・・?」

「だ、大丈夫よっ!澪ちゃん!」

ほれみろ唯。みんな不安がっているじゃないか。かく言う私もその一人なんだ。私達の技術とか知れたものじゃないだろ。

「大丈夫。私達はやれる。このおよそ3年間で上手くなってるから。自分を信じて、そしてみんなを信じて」

「ゆ、唯・・・おう!私達はやればできる!みんな!頑張るぞ!」

『おお!!』

唯の奴に全部持って行かれたくないので部長らしく最後の一言くらいは言わせておきたい。ふふ、唯は私をジト目で見てくるが、私は知らんふり。ふふ、これが部長だ〜。

「それじゃ、早速・・・寝るか」

「・・・まぁ、こんな時間だしな・・・って、ムギ。何をしようとしているのかな?」

「へ?えーと、まくら投げ?この前の修学旅行の時楽しかったから〜」

「・・・じゃ、おやす・・・zzz」

「寝るの早いな!唯!」

こうして海外旅行三日目が終了した・・・。

「しゃれこうべ」

「くすっ!思い出したじゃないか!律!」

「うふふふ♪」

「・・・うるせぇ、コノヤロー・・・」











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