小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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……

沖田さんの案内で屯所に着いた俺は、とりあえず蔵と塀の間のスペースに車を隠しておくことにした。

SUVだから隠しきれてないが……まぁ大丈夫だろう。どうせすぐにバレる。
でも何だか日本家屋の隣にこの車があると不自然過ぎるな。
でかい。


んで肝心の沖田さんは、車に乗ってから終始興奮しっぱなし。
まぁ見たこともないものたし仕方ないよな。
それにしてもこの屯所に着くまで誰とも鉢合わせなかったのは、不幸中の幸いだな。

河原から近かったとはいえ、まだ陽も落ちて大して経っていなかったし、下手したら見られてひと騒ぎ起きてたかも……。


我ながらハイリスクなことをしたものだ。


「さぁ勇作さん行きましょう!!」


やけに機嫌がいい沖田さんに腕をひっ捕まれると、凄い力で引きずられて連れていかれた。
あんな細い腕のどこにこんな力が……。


俺は自慢ではないが178センチとまぁまぁな身長、体重も75キロ。対して沖田さんは165ちょいくらいだろうか。しかも華奢だ。


凄いなぁ……流石は未来の新撰組の刺客。つか本にあった通り美男子ときた……羨ましいな。


俺が憂鬱になっているのを知るはずもなく、沖田さんはニコニコしたまま廊下をズンズンと進んで行く。
俺に靴を脱ぐ隙も与えずに……。
流石に土足は不味いよな。


「さぁ!!着きました!!行きましょう!!」

「ちょっと待って下さい!!靴を脱がせて下さい……」


さて入ろうかとしている沖田さんに待ったをかけ、俺は履いていた靴をいそいそと脱いで縁側に置いた。


「勇作さんは律儀ですね」


律儀も何も、家に入ったら靴脱ぐだろ……。


「土方さん!!沖田です!!入りますね!!」


そう声を掛けるや否や、中からの返事を待たずしてスパァンと襖を勢いよく開いた。
いきなりの事に俺も驚いてはいたが、中にいた人はかなり驚いたらしく持っていた筆を冊子の上にボトリと落としていた。

そして状況を理解すると顔色がみるみるうちに真っ赤になり、眉間に元々あった皺を更に深くしていった。

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