小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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「ごぉるらぁぁぁぁあ!!総司ィィィッ!!てめェ声かけて返事するまで入ってくるなっていつも言ってるだろうがぁぁぁあ!!」


余りの大声に、襖がビリビリと震えた。
そう沖田さんに怒鳴り付けたのは正に鬼。俺は恐怖を感じて思わず後退り、そして廊下から庭へと足を踏み外して落ちた。

ゆっくりと起き上がると、2人ともキョトンとした表情で俺を見つめていた。
あぁ、恥ずかしい。


「ったく……まぁいい。総司、おめェ俺になんか用か?そこの変な奴のことも含め、説明してもらおうか」


再び厳しい顔付きになった彼が、どうやらあの鬼の副長……土方歳三で間違いなさそうだな。
いやはやこの人も本で読んだ通りとは……凄いな、あの本書いた人。


「そうそう!!土方さんがどうでもいいこと言うから、すっかり忘れてました」

「どうでもよくねェよ!!」


ヘラヘラと宣う沖田さんにすかさず土方さんがツッコむ。
ハラハラするけどなんか見てて楽しいかも……。


「ここにいる鴫原勇作さんは、未来から来たそうなんです!!」


俺を指差して沖田さんはニコニコしたまま言ったが、部屋のなかにはイヤーな空気が流れた……というよりかは場の空気が固まったと言った方が早いのか?


「……はぁ?」


しばらく固まっていた土方さんもようやく口を開いたが、言ったのはその二文字だけ。
まぁいきなり未来から来たって言われても、バカかって思われるよな……。


「だぁかぁらぁ……未来から……」

「ちょっ!!待て!!未来だと!?」

「はい!!」


語尾に『♪』が付きそうな勢いで言ってくれた。
大丈夫なのか?


「なんでそう言える?格好も髪の色もおかしいだろ……異人か長州の奴じゃねェか?」


そう言って土方さんは俺のことをギロリと睨む。
殺気しか感じない視線……思わず目を背けてしまった。


「それは『くるま』っていう機械を、勇作さんから見せてもらったからです!!」

「は!?……なんだ?その『くるま』ってのは」

「見てもらった方が早いです!!来てください!!」


言うが早いか、沖田さんはまたしても土方さんの返事を聞かずして土方さんの手をひっつかむと、さっさと部屋を出ていった。
遠ざかる土方さんの怒鳴り声を聞きながらも、俺は部屋に残るわけにもいかず、2人の後を追った。

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