小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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とりあえず沖田さんの視線をスルーして、俺は携帯の説明をすることにした。


「これは携帯電話と言って、これがあればどこにいても遠くにいる人と話すことができます。それとメール……じゃない文をこれで書いて送ることができます。それとさっきのは写真を撮った音です。ほとがらと言った方がわかりますかね?」


そう言って俺は携帯の画面を2人に見せる。


「す、凄いですよ土方さん!!色つきのほとがら!!しかもまるで鏡を見てるみたいです!!」

「……」


画面を見て興奮する沖田さんとは対照的に、土方さんは言葉を失ってしまった。
これで少しは信用してもらえるかな?これでダメだと他はもうないんだけど……。


一息ついた所で、土方さんが咳払いをして口を開いた。


「まぁあんたのその『けいたいでんわ』とやらもわかった。百歩譲って未来から来たと信じてやろう。だが総司、どうしてコイツを屯所に連れてきた?」

「面白そうだから」

「ふざけんなっ!!たかがそんな理由でお前が人を犬猫みたいに拾ってくるかっ!!」


拾うって……その表現はちょっと俺傷付きます……。


「やだなぁ……冗談ですよ。半分だけ。だって勇作さん未来から来たんですよ?知って る人もいないし、お金もない。なら土方さん、私が彼をここに連れてきた理由はおわかりですよね?」


清々しいほど爽やかな笑顔でそうのたもうた。
あ、半分だけは面白半分で俺を連れてきたのね?

土方さんは沖田さんが言わんとする事を理解したらしく、拳を握り締めてプルプルと震え始めた。


「総ォ司ィィィィ!!まさかとは思うが、コイツ屯所に置こうなんて思ってんじゃあねェだろうな……?」


こめかみに青筋を浮かべ、口角をヒクつかせている土方さん。
激怒する一歩手前って感じだな。


そんな土方さんに屈することなく、沖田さんは再び口を開いた。


「わかってるなら早いですね。彼をここに住まわ「ダメだ!!」


最後まで言わせずに土方さんが沖田さんの声を遮った。
やっぱダメだよなぁ……あはは……これからどうしよう……。

俺がこれからの事を考え、鬱になっていると沖田さんが何やら黒い笑みを浮かべた。


「いいんですかぁ?土方さん……これ、バラしちゃっても……」


そう言うと、胸元から何かを取り出した。
その取り出した物を一目見るや否や、土方さんは顔色が真っ青になり汗が吹き出し始めた。


「そそそそ総司!!お前それをどこで!?」


帳簿のようなものを沖田さんから取り戻そうと土方さんは沖田さんに飛び掛かるが、ひらりとかわされてしまい、畳とキスをした。


「この間土方さん留守にしてるときに偶然見つけちゃってぇ~。皆さん驚くだろうなぁ……鬼の副長がまさか句を読むだなんて」


悪魔のような笑顔を浮かべる沖田さんに、土方さんはうっ!!と声を詰まらせた。
……え?句?

思い当たる節があり、俺は思わずそれを口にしてしまった。


「まさかそれ、豊玉発句集……?」

「!?」


土方さんが更に顔を青くして俺を見た。
あれ ?これ言わなかった方がよかった感じ?

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