小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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「なななななな!!」


うん、土方さん少し落ち着いた方が……。焦りすぎて言葉になってません。言おうとしていることは察しがつきますが。


「土方さんには申し訳無いですけど、その発句集……未来じゃ結構有名ですよ」


狼狽える土方さんがあまりにも不憫過ぎる……ちょっと申し訳ない感じで言ってみたが、俺のその言葉を聞くと、土方さんはムンクの叫びの様な顔をしてその場に崩れ落ちた。
そんな彼を、沖田さんはケラケラと笑っている。

本物の悪魔ですか?


「なぁんだ。勇作さんも知ってたんですね。なら話が早い、土方さん?バラさない代わりに……」


「わぁったよ!!屯所に住ませりゃぁいいんたろ!?その代わり……バラすなよ?」


頭をボリボリ掻きながら不貞腐れたように言った。
沖田さんは笑顔で俺にVサイン。
これ、素直に喜んでいいのかな?かなりえげつない手口だけど……。


「すみません……じゃあ御厄介になります」

「わーい!!よかったですねっ!!勇作さん♪」


自分の思った通りになって嬉しいのかはしゃいでいるが、土方さんは至極面白くないと言った表情だ。



「けっ!!それより……勇作と言ったか?お前刀は使えるか?」


土方さんは早くも気持ちを切り替えたらしく、俺に新たな質問をしてきた。
刀……使ったことないけど、剣道なら少し……。むしろ空手やら柔道のが得意だなぁ。


「剣道なら少し……でも俺、ぶっちゃけ柔道とか空手のが得意です」

「ぶっちゃけ?じゅうどう?からて?」


訝しげな顔をされた。
あ、現代語だからわかるわけないか……ぶっちゃけってどういう意味だっけ?


「まぁ正直に言うと、って意味です。柔道と空手は格闘技みたいなものです」


とりあえずその場凌ぎで言ったけど、これ合ってるのかなぁ?


「柔術か?刀をあんまり使ったことがないたぁ……うぅむ……」


そう言って土方さんは黙り混んでしまった。おそらく俺の今後の配置を考えているのかな?
流石に隊士みたいに刀振り回せないし……誠太いたらなぁ……あいつ剣道すっげぇ強いのに。

そんなことを考えても仕方ない。誠太はもういないのだから。


「あぁ\"!!わからねェ!!総司!!とりあえず幹部連れてこい!!コイツを紹介しとく」


はぁい、と言って部屋を出て行ったと思いきや、再び襖が開き沖田さんが顔を覗かせた。
あ、土方さんの 眉間に皺が寄った。


「何だよ……早く行けよ」


明らかに不機嫌そうな土方さんに、沖田さんはニコニコしながら言った。


「近藤さんと山南さんも呼びます?」

「当たり前ェだろうがぁ!!」

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