小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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続々と集まってくる壬生浪士組の幹部達。後は近藤さんと山南さんか?あ、井上さんもいたか。
そう言えばまだ芹沢鴨って生きてるばずだよな?来るのかなぁ……。


呑気にそんな事を考えていると、厳つい面をした人と、優しげな人が2人。
眼鏡をかけた方が山南さんだろう。井上さんも本で読んだ通りの風貌だ。
近藤さん、見た目は凄く近寄りがたい……。


「土方さん、連れてきましたよ~。二瓶君だけちょっと遅れます」


二瓶という苗字にちょっと反応してしまった。けどそんなわけ絶対ない。
沖田さんも戻って来たところで、土方さんも丸くなった円の中に入り、口を開いた。


「!!」

「未来の女は可愛いのか!?」

「スゲェ!!未来から!?」

「おや……まぁ……」


様々な声があがっている。でも思っていたほど悪い印象を与えたわけでも無さそうでよかった……。
って!!おいちょっと待て!!どさくさに紛れて誰か変なこと聞かなかったか!?


「だぁぁぁあっ!!うるせェェェっ!!勇作、けいたいとやらを見せてやれ」


またあのやり取りしなきゃいけないのか?面倒だけどしかたないよな……。
携帯を取り出してさっき撮った土方さんと沖田さんのツーショットをみんなに見せた。

おぉーっと歓声があがる。
とりあえずは一通り説明し、発言権を再び土方さんに戻す。

「まぁ……あれだ、とりあえずしばらくうちで寝泊まりするから仲良くしてやれ」


ぶっきらぼうに言った。
頼み方に問題あったしなぁ……。まさか沖田さんがあんなに黒い人だとは。


「勇作さん、なんか私に対して失礼なこと考えていませんでした?」

「!?」


スッと首元に当てられる刀、そしてどす黒い笑みを浮かべた沖田さん。
言葉を発することなく俺はただ首を千切れるかのように高速で左右に振って否定した。

それに満足なのか、沖田さんは刀をしまった。


「そうかそうか!!ならばよろしく頼むぞ勇作君!!」


優しいし笑みを浮かべ、俺にそう言ってくれた近藤さん。ホントに優しい……あんなんで信じてくれるなんて!!
って信じてもらえなきゃのたれ死ぬか、この中の誰か切り殺されてたかも。


「はい!!皆さんどうぞよろしくお願いします!!」


面倒なことは考えないでおこう。
こうやって受け入れて貰えたことに感謝しなきゃな……それより俺、現代に帰れるのかな?

ふと冷静になってみると、どうやって幕末に来たのかも謎だ。戻れる手立てはあるのだろうか……。
はぁ、と溜め息をついていると肩をポンポンと叩かれた。

顔をあげたそこには藤堂さんがいる。

「なに溜め息なんかついてるんだよ。ま、これからよろしく頼むぜ!!俺、藤堂平助」


名前を言った所で藤堂さんを押し退けて、仲良し3人組の残り2人が現れた。


「なぁに先に抜け駆けしてんだよ平助!!俺は永倉新八!!」

「俺は原田左之助!!勇作!!後で俺様の偉大なる傷を見せてやるよ!!」


そう言ってふんぞり返る原田さんを、藤堂さんが突き飛ばした。


「何が偉大なる傷だよ!!左之さんのはただの切腹跡だろ!!毎回毎回人に会うたび自慢するなよな!!」

「いいだろう!!なっ!?お前も聞きたいよな!?」


狼狽える俺を気にすることもなく迫り来る2人、だが俺に触れる前に沖田さんに首元を掴まれてあえなく強制退場させられた。


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