小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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…第弐話 適性検査と監察方のお話…


香る桜の匂い……暖かい風……あぁ春だなぁ。
なんて思っていたのは昨日まで。驚いたことに、俺鴫原勇作は幕末にタイムスリップ。
今日から壬生浪士組に御厄介になることになりました。


さて、昨日は誠太との8年越しの再会を果たしましたが、本人は8年も現代で経っているということに、とても驚いていました。
加えて俺が自分より巨大化していることに頬を膨らませてプンプン怒っています。彼はいつの間にこんな可愛らしいことをするようになったのでしょうか?

あ、言っておきますが俺はゲイではありません。
これ、重要ね?

7年ほどの空白期間ができたのは、誠太にもやはりわからないそうです。
とりあえず明け方まで色々と誠太がいない間の現代のことについて話し込んでしまい、半端なく眠たいです。


ですが朝食で隊士の皆さんに紹介された後、土方さんに一刻後に道場に来いと言われてしまいました。
何をするんでしょうか?
バックレると恐ろしいことになりそうなので、只今誠太と一緒に道場に向かっている所です。


「なぁ誠太、これから俺何すんの?」


前をトテトテ歩いている誠太に聞いてみた。ホント、見ない間にショタコンに好かれる様な人間になったみたいだ。
背があまりにも小さいからとてもじゃないけど同い年の人間とは思えない。
あ、今は同い年じゃないか。
何か歳の離れた弟を持つお兄さんになった気分。


「うん?わかんない……でも多分勇作をどこの隊に配属するか決めるための試験でもやるんじゃない?」

「それって適性検査みたいなのか?」

「多分ね。俺に聞かれてもわかんないし、道場に着いたら土方さんに聞いてみなよ」


てっきり土方さんの小姓と聞いていたから知ってると思ったのに。


「それにしてもお前が隊の組長だなんて……ビックリしたって……何番隊だっけ?」

「四番隊だよ」


四番隊って確か松原って人が組長だったよな?どこ行ったの?その人。


「じゃあ何だ?誠太がこの時代に来たことで、少なからず影響が出てるってことか?」

「まぁ……そういうことになるのかな。勇作もこっちに来ちゃったし、益々歴史が変わっちゃうかもね?浪士組も中々居心地がいいし……でも後5年位したら……」


誠太の言わんとすることは分かる気がする。新撰組とこの後名前が変わるが、僅かその5年後には鳥羽伏見の戦いやらで幕政が崩壊して新政府が樹立されるんだもんな……。
まだ1日しかみんなとは接してないけど、そんなに皆悪い人ではない。


「俺1年しかまだここで生活してないけど、皆家族みたいなもんなんだ……それなのに……」


誠太はそう言って目を潤ませてうつ向いた。
1年とはいえ苦楽を供にすれば、誰だって情が沸くもんだよな。


「未来を知ってるって……こんなにも残酷なことだなんてな。いっそ何も知らずにタイムスリップ出来てたら、どんなに気が楽か……」


願わくは皆がより長く生き永らえること。
とりあえずはこれからのことだ。

いつまでも辛気臭いこと考えてたら嫌になる。

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