小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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「まだ時間はあるし、じっくりと考えてみようぜ」

「そうだね。勇作もいつの間にか大人な考えを持つようになったんだね」

「失礼なヤツだな……俺はもうお前と違って20歳越えてるの!!今23歳だし。身も心もまだ子供のお前とは違うっての」


俺はまたしても頬を膨らませて怒っている誠太を見て、クスリと笑った。
そんな俺を置いて元に戻った誠太は、先にさっさと進んでいってしまった。


「おい!!待てよ!!ってここが道場か?」


意外にも走り出して直ぐに屯所に併設された建物に誠太は入っていった。
どうやら道場はここでいいらしい。


「失礼します……」


恐る恐る俺が道場に入ると、奥に座っていた土方さんが閉じていた目をカッと開いた。
怖ぇよ。


「よし、試験受ける張本人も来たことだし始めるか。おい一!!」


土方さんがそう言うといつの間にか俺の隣に現れた斉藤さんが、無表情で竹刀を渡してきた。


俺はいきなり竹刀を渡されてちょっと戸惑った。あんまり剣道とかは出来ないんだけどなぁ……。

どうでもいいかもしれないが、俺は今ちゃんと胴着を着ている。誰のかって?
島田さんって人の。その人永倉さんいわく俺と同じ体格なんだって。
だから日常で着る服も暫くは借りて生活する。

まだ肝心な島田さんに会ったことないからどんな人かもわからない。お礼言わなきゃ。


「さぁてと……鴫原勇作」

「はい!!」


突然フルネームで呼ばれてちょっと背筋がピンッと伸びた。
そんな俺を土方さんの隣で座っている沖田さんが、ぷっと笑った。
笑わないでください。真剣なんだから……。


「お前にはこれからここにいる総司と戦ってもらう。お前はこいつから一本取ればいい。卑怯な手を使わなければ何でも使っていい。以上だ」

「質問いいですか?」

「なんだ?」


ちょっと不機嫌に答えた土方さん。不機嫌そうに見えたたけか?わかりづらいけど。


「何でもいいってことは、柔術とかでもいいんですか?」

「もちろんだ」


よし、なら俺にも勝機はあるかな!!
刀とかああいうリーチが長いのってどーも扱いにくいからな。


「じゃあすいません、俺竹刀使わないので代わりに短めの棒を2本頂けます?」


土方さん含め、近藤さんら道場にいる幹部らが、はぁ?って顔をした。
別に変なこと言ってないよな?

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