小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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「竹刀を全く使わないってのか?お前は」

「えぇまぁ……あんまり使い慣れてないので」


土方さんはほぅっと言って何かを考え始めた。


「……これでよいか?」


またしても斉藤さん登場。手には15cm程の長さの棒が2本、そうそうこれくらいのがよかったんだ。


「ありがとうございます、斉藤さん」

「……別に構わない……」


そう言って幹部達がかたまっている場所へと戻っていった。
ほんっとクール過ぎてなに考えてるのか読めないな、あの人。

とりあえず斉藤さんからもらった棒を持ち、素振りをする。
身体を身軽に動かすために、凝り固まってる身体をほぐさないとな。


「いいか?始めるぞ?」

「総司も鴫原君も頑張れよ!!」


土方さんがそう声を掛けて立ち位置に立つと、近藤さんが声援を送ってくれた。
よし、一丁やるか……

ふうっと息を吐き、集中力を高める。


「いいですねぇ……勇作さんとの勝負、楽しめそうですね」

「浪士組一の剣の腕を見せていただきますね?」


こんな状況でも沖田さんは笑顔。最早勝負をやる前から楽しんでいる。
「始め!!」


土方さんの掛け声と供に試合が始まった。
シンッと静まり返った道場内……暫く沖田さんとのにらみ合いが続く。

俺は苦無(クナイ)を持つようにして2本の棒を構える。本当のことを言えば特殊警棒やトンファーみたいなのの方が使いやすいけど、贅沢は言ってらんないよね。


未だ動きを見せない沖田さんだったが、一息程間隔を置いて攻め込んできた。


「やぁぁぁあっ!!」


掛け声と供に降り下ろされる竹刀。
だが俺はその竹刀を右手で持つ棒で受け止めると、左手で持つ棒を近距離にいる沖田さんの腹めがけて横殴りで打ち込む。


「甘いですね!!」


俺の攻撃をヒラリと躱して距離を取ると、沖田さんは余裕綽々といった様子で笑っていた。


「抜かせ……これからが勝負ですよ……」


それを皮切りに激しい攻防戦が始まった。


「すげぇ……総司の攻撃を受け止めた躱したりするのだけでも凄いのに、何だよあの身の軽さは……あんな長身なのにすっげぇ俊敏に動いて攻めてる……」


見たこともない戦いに、藤堂は感嘆の声をあげる。永倉・原田両名も目を丸くして2人の超人的な戦いをみている。


「へぇ〜……見ない間に強くなったんだなぁ……勇作。流石柔道に空手、あまつはキックボクシングまでやったって言ってただけはあるな」

「は?それどういうことだよ?」


永倉の隣でポツリと呟いた誠太の言葉に、永倉は驚いた。
聞いたこともないものだったが、それらが勇作のあの動きをさせるための基となった柔術であると言うことはわかったらしい。


「まぁアイツ俺が剣道一筋だった頃も色々柔術やってたんですよ。昨日色々と話し込んでたんで聞いたんですよ。俺がいない間に結構また凄いの極めたんだなぁ……昔は余裕で勝てたけど今の勇作には俺勝つ自信ないや」

「そ、そんなにか!?」


勇作に敵わないと言った誠太ではあったが、剣の腕前は沖田総司や斉藤一、藤堂平助に次ぐものだった。そのため今若干16歳で四番隊組長の座に君臨している。
その誠太が敵わないと言っている相手が、今沖田と戦っている勇作なのだから、永倉が驚くのも無理ない。

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