外野でそんな話がなされていたなどとは戦っている2人は知るはずもなかった。
沖田さんの竹刀と俺の持つ2本の棒がぶつかり合い、バシバシと大きな音を立てた。
「中々しぶといですねぇ……」
「それは……こっちの台詞ですっ!!」
まだ少し余裕を見せる沖田さんの隙をついて懐に打ち込みに入るが、再び防がれた。
……へへっ、かかった……。
不適に笑った俺にハッとして離れようとしたが、その前に懐に入り屈んで準備した俺が沖田さんの腹に蹴りを御見舞いした。
「ぐっ!!」
苦しそうな声をあげて後ろに吹っ飛んだが、流石は沖田さん。こんなんじゃ伸びるわけないよな。
「今の蹴りは中々効きましたよ……私もそろそろ本気で行きましょうか……」
膝をついて少し休んでいた様だが、フフフっと笑いながらゆっくりと立ち上がった。
何だろう……この凄い気……これ殺気?
「ボケっとしてないでください」
「んっ!?」
いつの間に目の前にいた沖田さん。
クソッ……気を抜きすぎたか……
何とか横腹、胴を狙った竹刀の軌道を竹刀を跳ね上げて直撃を防いだが、脇腹の代わりとなった左肩にその竹刀は勢いよく叩き込まれた。
脇腹を狙っていた時とは多少威力を跳ね上げたことで軽減させることができたとはいえ、基となった打ち込みの威力があまりにも高かったため当たった左肩に鈍い痛みが走り、棒を掴んでいられずに落としてしまった。
痛ってぇ……やっぱ沖田さん相手に気を抜いちゃダメだな……下手したら死ぬ。
「あーあ……片手だけになっちゃいましたよー」
「それはあなたが気を抜いてるからですよ」
ヘラヘラとは笑っているが、殺気は消えてはいない。むしろさっきより増した気がする。
「何か沖田さん楽しんでません?」
「やだなぁ……当たり前じゃあないですか。こんなに強い人と試合出来るんですもの……こんな面白いことありませんよ。フフフフフフ……」
怖い……怖すぎるよ沖田さん。
チラッと幹部を見ると、顔を真っ青にしてガタガタ震えている。
あの斉藤さんでさえ冷や汗が滝のように流れている。
こりゃ早いことどうにかしないと試合終わっても人生が終わりそうだ。
俺は痛む左肩のことを取り敢えず考えないようにして、右手のみで戦うことにした。
後は他の格闘技も活用しないと歩が悪いな……。
「さぁ殺り合いましょう……勇作さん」
「……なんとなく今沖田さんが言ったやり合うの字と意味が違う気がします……」
「何か言いました?」
「……なんでもないです」
沖田さん……ホントに竹刀でも刀でも持つと性格変わるんですね……。