小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

ちょっと小柄だが、中々のイケメン。若干童顔だけど……てかホント新撰組やたらとイケメン多いな……遺伝子操作でもしてんのか?狙ってるとしか思えない。


「なんや表情コロッコロ変わる面白いやっちゃなぁ……んにしても、ずっと見とったけどえっらい丈でっかいなぁ……少しわいにくれへん?」


そう言ってニヘラッと笑うと両手を出してきた。
身長あげられるかっつーの!!
それよりも昨日から感じた視線はあんたかっ!!気になってしょうがなかったし!!
ってかこの黒装束の人、山崎烝か!?関西弁だし……。


「身長をわけてあげることなんてできませんよ?監察方の山崎さん」

「ケチやなぁ……お、流石未来から来たと言うだけあってわいのこと知っとるんやな。なら後で土方さんの部屋でわざわざ自己紹介する手間も省けたわ」


ブーブー文句を垂れる山崎さん。
ん?後で土方さんの所で会う予定だったの?


「え?山崎さんも土方さんに呼ばれてるんですか?何で?」

「それはひ・み・つや!!どーせ後で知るんやし、別にええやん」


口の前に人差し指を置いて、シィーッのポーズをとる山崎さん。語尾には☆が心なしか付いたら気がするんだけど。

なんやこいつめっちゃおもろいわぁ……ヤベヤベ、伝染っちゃった。

……にゃーお……


そんなやり取りをしていると、どこからか猫の鳴き声が聞こえてきた。
鳴き声の主の猫を探すと……いた。屯所をグルリと囲む塀の上に白地に黒いブチ模様の猫がこちらを見て鳴いていた。

何かずっとこっちを見ていないか?
ちょっと猫に疑心を抱いていると、山崎さんが凄く真剣な面持ちでその猫へと近付いて行った。


一体何をするんだろう……ゴクリっと唾を飲み込んで観察していると、山崎さんは何やら口元をモソモソ動かした後口を開いた。



「んなぁぁあぉ」


俺はその場でズッコケた。まさか猫の鳴き声の真似をするなんて……でも猫と話してる訳ではないよな?
現に猫何もアクション起こしてないsんにゃーぁぁお……


えっ!?ウソ!?反応したよ!?
マジで!?すげぇよ山崎さん!!


「山崎さん猫の言葉話せるんですか!?」


俺が好奇の眼差しで見つめると、山崎さんはいつの間にか塀の上にいた猫を手に抱いていた。


「は?今のはただの猫の真似しとっただけやん。自分アホちゃう?」


そう言って「はんっ!!」と鼻で笑い、猫を撫でながら俺を蔑むような目で見てくる。


「……」

「ちょっ!!ちょちょっ!!待ってぇな!!今のは軽~いお茶目な冗談やないの……本気にせんといてぇ……」


俺が怒りに震え、無言でゆっくりとワナワナと右手に作った拳を上げると、山崎さんは凄く焦ったように言い訳をし、殴らんといて……とまるで仔犬の様に目をウルウルさせながら許しを乞うてきた。

小柄で猫を抱きしめて目に涙を浮かべている山崎さん、対する俺は178cmでまぁ少しは筋肉質。しかも無表情で握り締めた拳を振り上げて、今まさに山崎さんにその拳を振り下ろそうとしている。

いつの間にか隊士が近くに居たらしく、こっちを見てコソコソと俺の悪口を言っているのが聞こえてきた。
……何かどう見ても俺がいじめっ子みたいじゃん……。

-29-
Copyright ©真田尚孝 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える