小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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「山崎さん…今度からその隊士達とあまり接触しないほうがいいと思いますよ?……ましてや風呂なんて絶対やめた方がいいですよ」

「?何でなん?飴玉くれんのに……せっかく出来た友達なんやで?」


ダメだ……全然危機感持ってない。
つか飴玉にこだわりすぎだよ!!
飴玉くれるから接触するだなんて……餌付けされてるし。

うっ……またしてもウルウルさせて俺を見る。
そっか……監察方だと友達が出来づらいんだよな。
そっかそっか……
それよりも山崎さん、その人達山崎さんと違う意味でのお友達になりたいんだと思います。話聞いてると下心丸出しじゃないですか。


「山崎さん、友達なら俺がいるじゃないですか。飴玉も俺があげますから……それとも俺じゃあ不満ですか?」


俺が友達だって言ったことに、潤んだ瞳に輝きが戻った。


「ホンマか!?友達になってくれるんか!?飴玉もくれるんか!?」


途端に元気になった。超キラキラした笑顔、余程嬉しいらしい……そう嬉しがられるとこっちもなんだか嬉しくなってきた。
俺もまだ誠太以外で壬生浪士組の人で友達いなかったし、丁度いい。山崎さん面白いし。

ってかホントに飴玉好きだな……あ、そーいや車ん中にコンビニで買った大袋の飴が何袋か買いだめしてあったな。
大学に飴中毒の奴がいて、そいつに頼まれて買ったままだったんだ。渡しそびれてて良かった。


「もちろん。これからよろしくお願いしますね?山崎さん」


ニコリと笑ってそう言うと、山崎さんはウンウンと首が千切れるかと思うほどの勢いで首を縦に振った。
ちょっとやりすぎです……。

「へへっ……友達や友達♪」


何か今になって思うけど、山崎さんって元あったイメージと全然違うな。
俺的には無口な敏腕監察だとばかり思ってたけど。
でもまぁ普段こうでも、仕事中は多分しっかりするはずだよな、うん。


「そや!!せっかく友達になったんやし、山崎さんって言うの止めんか?なんや他人律儀に聞こえるし……烝でええよ?あと敬語は無しや」


なぁなぁ、と俺の胴着の袖を引っ張る山崎さん。
確かにそう言われればそうだよな。
じゃあ山崎さ……烝の言葉に甘えさせてもらお。


「わかった、じゃあよろしくな?烝」

「へへっ……よろしゅうな〜勇作〜」


ご機嫌な烝は、スキップしながら俺の周りをクルクル回っている。
なんか弟飛び越して息子の域だわ、これ。


「そや勇作!!そろそろ土方さんとこ行かへん?総司の奴とのいざこざもようやく収まったみたいやしさ」


確かにいつの間にか静かになってるな……。烝の言う通り土方さんの部屋に行った方がいいな。
さっきがさっきだし、少しでも遅くなると俺まで八つ当たりされそうな気がする。

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