小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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「じゃ、行きますかね……」

「行こ行こ!!」


そう言って何故か抱き付かれる。
な・ん・だ?この状況は……土方さんの所に行かなきゃいけないのになんで抱きついてんの?烝は……。

「烝……1つ聞いていい?」

「なんや?」

「土方さんの部屋に行くんだよな?」

「そや」

「じゃあ何で俺にくっついてんの?」


そう言うと、あかんのんか?と聞いてくる……なんなのホントにこの状況。
こんなの誰かに見られたら……


「あ\"ーっ!!」


……ほらみろ誰か来た。
俺が溜め息をついて声の主の方を見ると、廊下にこちらを見て真っ青になっている原田さん。

一番面倒臭そうな人に見られたな……。


「なっ!?お前らなんで男同士で抱き合ってんだ!?ま、まさか男色だったのか!?」


アワアワとしながら俺と烝を交互に見る原田さん。
壮大に勘違いしてるな……早急に誤解を解かないと悲惨なことになるな。

「原田さん何を勘違いされてるのかわかりませんが、俺達はそんな関係じゃ……「うぁぁぁぁぁあっ!!」」



俺が説明する前に、原田さんは発狂した様に叫びながらこの場を走り去って行った。
話聞けよ……原田さん。

内心原田さんにイライラしながらも、取り敢えず俺に引っ付いてる烝をどうにかしないと。


「……烝?そろそろ土方さんの部屋に行きたいから離れてくれるか?」

「そやね〜。なぁ勇作?おんぶ〜」


……何を言ってるのこの子……。


「なぁなぁ……おんぶー」


俺から離れておんぶをねだる烝。
……烝ってこんな子供っぽいの?ヤバい……イメージ崩壊。
土方さんにホントに聞きたい。この人が本当に監察方なのかを。

っと言うよりこれはおんぶをしないと進まないのかね?未だに引き下がろうとしない烝を見て、俺は小さく溜め息をついた。

俺は諦めて烝に背を向けてしゃがむと、烝は嬉しそうに俺の背中に飛び乗った。


はぁ……後で原田さんに説明しなきゃな。
他の人に話してなければいいんだが。


烝をおんぶしたまま、俺は土方さんの部屋にむかうことにした。
途中で平隊士が驚いた表情で俺達を見てきたり、男色であろう野郎共が嫉妬の目を向けてきたが、俺はなるべく気にしないように歩いた。

否、気にしないでおかないとこの好奇の視線には耐えられなかった。

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