小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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……

長かった……ここにたどり着くまでが長かった。ようやくあの視線もなくなった。
土方さんの部屋の前に着いた俺は妙な達成感を感じていた。


さて、入る前に烝を降s…「副長ぉー、山崎です。鴫原勇作を連れてきました~」

「おう、入れ」


この野郎。このまま入室させる気か?コイツは……。
つか連れてきましたというよりかは、お前が連れて来られましただろ!!


「烝、降りて?」

「え〜!?なんでぇ?ええやん。ささっ、入ろか〜」


と、俺におぶさったまま障子戸に手をかけようとしたが、俺は半歩後ろに下がってそれを阻止した。

ちょっ!!この子はっ!!

引き剥がそうとするも、両足で腕をガッチリ固定されていて手を動かせない。
何がしたいのだこやつは!!


「はーなーれーろー!!」

「嫌や!!」

「早く離れろっ!!」

「絶対嫌やぁぁぁあ!!」

スッパァァアン!!

「ごちゃごちゃ言ってねェでさっさと入って来……何してるんだ?お前ら」


いつまで経っても入ってこない俺達に、障子戸を勢いよく開いて土方さんが怒って部屋から出てくるも、俺達2人の状態を見て固まっている。

そりゃそうか。俺に烝が巻き付いてるような状態だもんな。

「あ、ひ…土方さん!!すいませんけど烝をひっぺがしてもらえません?これから話聞かなきゃいけないのにこの状態は流石に……」


俺は面白いものを見るような目で俺と烝を見始めた土方さんに懇願した。
背中の烝は未だ頑なに俺から離れようとはしない。


「烝だと?名前で呼ぶとは……ほう……あの山崎がこれほどまでに懐くとはなぁ……。山崎、鴫原に結果を話すだけだ、少し離れてろ」


クククッと意味深に笑って言うと、烝は少し不機嫌そうに俺から離れた。
あぁ……なんかドッと疲れたわ……。


ようやく部屋に入れた俺は、土方さんと近藤さんの前に座った。
何故か烝は胡座をかいた俺の脚の上にちょこんと座っているが、まぁ気にしないでおこう。


「ほぉー……あの山崎君をここまで懐かせるとは鴫原君もやるなぁ」


近藤さんも土方さんと同じこと言ってる。烝って俺にだけこんななのか?
俺の胸に寄りかかる烝は先程までの不機嫌さはどこへやら。鼻唄を歌ってなんかおり、いつの間にかご機嫌な状態。


「あの……烝って誰にでもこうじゃないんですか?」

「とんでもない!!直属の上司でもあるトシや儂にもそんなに甘えたことはないぞ。ようやく山崎君も素直に甘えられる人が出来たのだなぁ……」


ウンウンと涙を滝のように流す近藤さん。畳がグショグショです……。
烝が素直に甘えられるようになった?どういうことだろう……。

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