小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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「鴫原勇作、お前には諸士取調役兼監察方に配置する。だが普段は十番隊…原田の隊で巡察をしてもらう。いつもいつも諜報活動をするわけじゃないから、何か特別に任務を頼む時は直線俺の所に呼ぶ。鴫原、励めよ?」

「は、はい!!微力ながら頑張ります!!で、でもどうして俺が監察方なんですか?」


俺が少しビクビクしながら尋ねると、不満があると勘違いしたのか睨まれた。


「あぁ?俺と近藤さんの決定に不満でもあるのか?てめぇはよぉ」

不満ではないのでそんな凄まないで下さいよ……。本当に恐ろしい人だ。


「違います!!ただ俺が監察方に向いていないんじゃないかと思って……身体はでかいから目立つし……」

「はぁ……あのなぁ、確かに監察方は目立たないのが一番でお前みたいな巨体は向いていない」


うぅっ……ほらやっぱり。
俺がションボリと顔を下に向けた所で、でもな…とそのあとも土方さんは言葉を繋げた。


「それ以上にお前のあの俊敏さと接近戦での異常なほどの戦闘力の高さがミソなんだよ。だから丈がデカかろうが関係ないんだ。
現に鴫原、今は出払ってるがお前と同じ巨体の島田もお前と同じ監察方で活躍してる。アイツもお前と最初は言ってること一緒だったが、今は立派に任務をこなしている。それにこしたことはない。これを聞いてもまだ監察方には向いていないと言えるか?」


俺が無言で首を振ると、満足気に頷いた土方さん。近藤さんも頑張れよと声をかけてくださった。
よし、一丁やってやるか!!

「へへっ……ほなこれからも一緒に仕事しよな?」


嬉しそうに俺を見上げる烝。そんな烝を見て、俺は自然と笑みを浮かべた。


「そうだな……ま、わからないことだらけだし色々烝に教えてもらうさ。頼りにさせてもらうよ?弟君?」

「うん、頼りにしてなっ!!って誰が弟やねん!!」


そこは関西人。ちゃんと突っ込むね。


「だって烝って俺の友達ってよりかは弟ってのの方がしっくりくるし。まぁ大差はないんだしいいじゃん」


俺がそう言うと、それもせやな…と納得したようだ。
フフフ……扱い易い奴よのぅ。

そうだ、飴あげるってさっき言っててあげるの忘れてた。


「そーいやまだ烝に飴玉あげてなかったな。いる?飴玉……」


そう言うが早いか、烝の目がキュピーンと光った。
獲物を狙う獣の目に近いなこれ。


「いるっ!!飴玉いるっ!!どこにあんのん!?」


めっちゃテンション高っ!!烝の元気の源は飴玉にあり、ってか?
早く早くとせがむ烝は、何だか本当に俺の弟みたいだ。ホントに愛くるしい奴だのぅ。


「さっきいた所の車の中にあ「なら早よう行こっ!!局長!!副長!!これにて失礼しますわぁぁぁぁぁあ」ぎゃわぁぁぁぁあっ!?」


俺に最後まで話させず、土方さんにそう言うや否や、俺の手をひっつかんで部屋を出ると有り得ないスピードで飴のありかである車の場所へと駆け出した。
ただただ俺は悲鳴をあげるしかできなかった……

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