小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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…第参話 怪しい男と屯所のお話…


壬生浪士組に来て早1ヶ月が経ち、今は桜の花も緑の葉へと移り変わる5月に。

少しはここでの生活には慣れました。
皆さんそれぞれ呼び捨てでいいとのことで、有り難く仲良くフレンドリーに接することができています。


そうそう、烝との一件で俺達2人の関係を勘違いした左之さんでしたが、改めて挨拶に行った時にちゃんとお話ししました。
でも取り乱して聞かなかったので、不本意ながら身体でわからせてあげました。

やはり左之さんには言葉よりも実力行使のほうがいいみたいです。
更に原田さんを含む仲良し3人である平助とぱっつぁんにも話してしまったらしく、更に厄介なことになりました。

即2人を呼んでもらったが、左之さんと同じで話にならない。
俺が雷を落として話すと漸く聞いてくれました。まったくもうホントにこの3人は……。
それから俺は左之さん、平助、ぱっつぁんの3人組を3バカと呼ぶことにしました。

その点について激しい抗議を受けましたが、文句があるのかと睨み付けてやったら首を縦に振ってくれました。


そして今、左之さんら十番隊の皆で市中見廻りに出掛けています。
左之さんとは違い、十番隊の隊士達は物分かりがよくてとても勤勉です。
隊長の左之さんにも、彼等の姿を見習ってもらいたいものです。ホントに……。


「おっ!!今の娘すっげぇ可愛かったぞ!!見たか!?勇作っ!!」


……ほらまた始まった。
見廻りしなきゃいけないのに、左之さんはいつも若い女性の尻を追いかけ回してる。
同じ男だから気持ちは分からないでもないけど、今は仕事中。隊士達が困ってますよ?


「左之さん……仕事中なんだから女の人ばっか見てないでよ……」

「ん?なんだぁ?勇作は興味ないのか?」


何を言う。このアホんだらは。


「興味ないわけないだろうが。ただ左之さんみたいに欲望に従順じゃないだけだよ。左之さんがそんなだと、下につく隊士達が可哀想……今まで大変だったね〜」


俺がそう言うと、話を振った隊士達はふるふると焦ったように首を振った。


「そ、そんなことないです!!」

「そうです!!原田隊長が女の人ばかり見ていて迷惑だなんて、これっぽっちも思ってません!!」

「原田隊長の女性好きは今に始まったことじゃないですし……」


ほとんど最後のほうは本音だな。
ニヤリと笑いながら左之さんを見ると、ガクッと肩を落とした。


「まぁこれを機に、少しは欲を抑えろよ?そんなんじゃいつか隊士が言うこと聞かなくなるぞ?」


そう言うと、アワアワし始める左之さん。
うーん、苛め甲斐があるなぁ……。
でもまぁこればっかりは、上に立つものは絶対に守らないといけないことだしな。

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