小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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まぁ今でこそ正気を取り戻したから依然の様には戻ったが、それでもまだ2人の笑顔はどこか影がある。
一人息子が失踪したのだから仕方のないことだが。


「おっと……もうこんな時間だ。そろそろ帰るわ……また来るよ」


腕時計を見ると15時過ぎ……16時半から喫茶店のアルバイトが入っているのだ。
まだ持っていた花束をそえると、もう一度手を合わせて誠太の墓に背を向けて駐車場に停めた車へと戻った。


「少し急がなきゃな……」


キーをひねり、エンジンをかけてギアをDに入れ、普段よりもアクセルを強く踏み墓地をあとにした。


ゆったりと流れる街の景色。
春のポカポカした陽気のせいか、俺は車を運転しているのにも関わらずボンヤリとしていた。
少し先の道路上に猫が飛び出してきたのにも気付かずに。

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