そしてニッコリ笑顔から、これでもかって程の黒い笑みへと変える。
烝は俺の顔を見てカチンコチンにかたまった。
「精々あの世で俺に詫びるんだな……」
フンッと鼻で笑うと俺はきびすを返し、そこから優雅に歩いて立ち去った。
後ろから烝の必死なまでの謝罪の言葉が飛んでくる。
「ゆ、勇作ぅぅぅうっ!!後生やぁぁあ!!わいを置いて行かないでぇぇぇぇ!!」
全然振り向かない俺に、烝はまだ助けを求めている。
「もっとええ子にするからぁぁぁあ!!勇作の言うこと何でもちゃんと聞いたるからぁぁぁ!!せやからお願いやぁぁぁぁ!!待ってぇぇぇぇなぁぁぁぁ!!」
「頼むからぁぁぁあ!!見捨てんといてぇぇぇぇ!!」
「……フフフ……やっと追い付いた……」
一君がとうとう烝に追い付いたらしく、烝の息を飲む音がハッキリと聞こえた。
「うっ……!!く……来んなやぁ!!こっちに来んなやぁ!!わいに近付かんといてぇぇぇぇ!!……!?あかん!!腰抜けて立てへんっ!!やめっ!!来ないでぇ!!頼むから来ないでぇぇあぁぁぁぁぁあっ!!」
「……フフフ……捕まえた……もう……逃がさん……」
「い……嫌ぁぁぁぁぁぁあっ!!」
「……フフフフフフフフフフフフフフフフフフ……」
「ぎゃぁぁぁぁあんっ!!!!」
烝の断末魔と共に、一君の不気味な笑い声が昼下がりの静かな屯所の中を駆け抜けた。
……
ザーッ
『ゆ、勇作ぅぅぅうっ!!後生やぁぁあ!!わいを置いて行かないでぇぇぇぇ!!』
烝が立ち去る俺へと画面右から手を伸ばしているのが映る。
『もっとええ子にするからぁぁぁあ!!勇作の言うこと何でもちゃんと聞いたるからぁぁぁ!!せやからお願いやぁぁぁぁ!!待ってぇぇぇぇなぁぁぁぁ!!』
『頼むからぁぁぁあ!!見捨てんといてぇぇぇぇ!!』
『……フフフ……やっと追い付いた……』
追い付いた一君へとカメラアングルが変わり、烝が息を飲む音がハッキリと入り込んでいた。
妖しく光る目をした一君が、烝へと手を伸ばしてくる。
恐怖に戦いているのか、烝が持つ携帯がガタガタと小刻みに震え始めた。
『うっ……!!く……来んなやぁ!!こっちに来んなやぁ!!わいに近付かんといてぇぇ!!……!?あかん!!腰抜けて立てへんっ!!やめっ!!来ないでぇ!!頼むから来ないでぇぇあぁぁぁぁぁあっ!!』
『……フフフ……捕まえた……もう……逃がさん……』
烝が捕まったらしく、映像が上へと上がった瞬間床を映した。
どうやら床に落ちたらしい。
だが転がった後うまい具合に立ったらしく、一君にガッチリと抱えられた烝が映される。
首が千切れるのではないかと思うほど頭を振り回し、何とか一君の手から逃れようともがいている烝。
そしてがっと頭も固定されて一君の方へを首を回される。
『い……嫌ぁぁぁぁぁぁあっ!!』
『……フフフフフフフフフフフフフフフフフフ……』
『ぎゃぁぁぁぁあんっ!!!!』
……
そこで時間切れになったらしくムービーは終わった。
只今食後の広間。
先程烝が命懸けで撮影したムービーを、3バカトリオと総司の5人で見ている。
左之さんに平助は真っ青な顔をして震えており、ぱっつぁんは苦笑い、総司に至っては至極楽しそうにムービーを見ていた。
「こんな面白いことになってたのに、何で私を呼んでくれなかったんですか?勇作さんっ!!」
頬をぷくっと膨らませてぶーぶー言っている総司?いや、これのどこが楽しそうなの?
それにあの状況であんたを呼びに行くような余裕ないっつの。
「は、一君がこここんな変貌すすすするななななんて……俺、一君が怖くなったよ……」
平助噛みすぎ。
「あの場にいたらこんなもんじゃないって。俺なんか怖くて走ってる最中何回も足が縺れて転びそうになったし……」
今思い出しても寒気がする……。
今日の夢にでてこなければいいんだけど……。