小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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(ゆ、夢見てるとかじゃないよな?)


試しに頬っぺたを思いきりつねった。


「痛ででででっ!!」


この痛さは本物だ……自分でやったが、信じられないからといって我ながら馬鹿馬鹿しいことを試したもんだ。

土手を通る人の目線が痛い……。
と、言うよりかは俺の今の行動ではなく、何だかこの目線は妙なものを見るような視線な気がする。


実際にバッと人がいる方に振り替えると、立ち止まって俺のことを見ていた人だかりは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
中には小さく悲鳴をあげた人も……。

何でやねん。

何故悲鳴まであげて逃げたのかはわからないが、とりあえず誰かと話さないことにはここが何処なのかが全くわからない。


だが行く人行く人、声を掛けただけで逃げ出して行く。
ちょっと失礼じゃないか?

それよりも明らかに俺の髪の毛を見て逃げてないか?
そんな変なヤンキーみたいな頭髪ではないはずなのに。


暗めの茶髪、短い髪型……あの人達が目を剥いて逃げるほど変ではなく、むしろそこら辺の若いスポーツやってる感じの人と似たようなもんだが?

益々訳がわからない。


「ちょっとそこの人」


俺がまた更に混乱していると、後方から男の人の声が聞こえてきた。
誰かを呼び止めたのだろうか。とりあえず俺には関係無いだろう……。


「ちょっと聞いてるんですか?私を無視するとはいい度胸してますね」


俺が最初の声を無視すると、先ほどの声の主がそう言って俺の肩を掴んで自分の方へと俺をグルリと回した。

-7-
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