小説『誠の時代に』
作者:真田尚孝()

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「はぁ……あなたバカですか?刀なんだから切れて当たり前でしょう?それで止血してください。あ、でも質問には答えてもらいますよ」


うう、痛い目にあった……なんで本物の刀なんか持ち歩いてるんだよ。江戸時代じゃあるまいし。
まぁとりあえず質問に答えておこう。


「あ、どうも。俺?俺は鴫原勇作って言います。それよりここどこですか?何かドラマとかの撮影ですか?」


「どらま?何ですか?それ。それとここは京の都です」


へ?京?


「うん?京都?」

「京都ではなく『京』です。勇作さん、あなたはここで一体何をなさってるんですか?」


えー……なんて京都にいるんだよ。しかも古い言い方……待てよ?まさかとは思うけど……。


「えっとすいません……何さん?」

「沖田です」

「えっと沖田さん、つかぬ事を聞きますが今何年ですか?」


俺がそう聞くと、沖田と名乗った彼は訝しげな表情になった。
この反応ってもしや……。


「何を言ってるんですか。今は文久三年です。まぁ西洋歴とやらでは1863年ですが……何でですか?」


ぶ、文久ってモロ江戸時代……これってタイムスリップってやつ?
信じられん……。


「まさかまだ江戸に将軍いたりします?」

「いるもなにも今は徳川泰平の世です。まぁ今開国だのでゴタゴタしてますが。それよりあなたどこから来たんですか?そんな奇妙な成をして」


服装が変?あぁそうか、江戸時代ならこの格好なら奇妙がられるわけだ。さっきの反応納得だわ。
てかどうしよう……タイムスリップだなんて空想上の話だとばかり……。


「とりあえず勇作さん、私と一緒に屯所まで来てもらいましょうか」

「え?屯所?」


呆然としていた俺は、沖田さんの屯所と言う言葉に反応した。


「えぇ、我ら壬生浪士組の屯所にです」

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