『オマケ という名の後付』
「そう言えば部長。俺のこといつ『兵士(ポーン)』にしたんですか?」
とある休日、夜明は前々から気になっていたことをリアスに訊ねる。というのも、夜明にはリアスに『兵士(ポーン)』にされた記憶がなかった。
「あぁ、それね。あれは貴方が天野夕麻(レイナーレ)に襲われて、太陽が助けに入った後のことよ」
リアスはそう前置いて語り始めた。
「ちょっとちょっと太陽。貴方、こんな所に私を連れてきてどうする心算よ」
「リア、とりあえずこいつを見ろ」
「あら、この子って私達と同じ駒王学園の子? この子がどうかしたの?」
「お前の『兵士(ポーン)』にしろ」
「……太陽。以前から気狂いだとは思っていたけど、貴方本当に頭がおかしくなったの? この子、死んでもないのよ?」
「人間のまま『兵士(ポーン)』にしろ」
「……無理に決まってるでしょそんなこと! 成功するかどうかも分からないし、何より前例が無いわ」
「ここで前例を作れば良い。なぁに、心配するな。何かごちゃごちゃ言ってくるやつがいたら私がぶっ潰してやる」
「だとしても嫌よ。言い方は悪くなるけど、何処の馬の骨ともつかない人間を眷属にするなんて」
「そうか……なら選べリア。こいつをお前の眷属にするか、それとも拘束制御術式一号を解除した私が暴れまわるのを指を銜えて見てるかのどっちかを」
「何よそれ! 私に選択肢は無いようなものじゃない!!」
「まぁ、ここは私を信じてこいつを『兵士(ポーン)』にしろリア。こいつは凄い掘り出し物だぞ、間違いない」
「……これでこの子が役立たずだったら本気で怒るわよ、太陽」
「とまぁ、そんな事があって現在に至るのよ。あの時は本気で太陽のこと怒っていたけど、今となっては感謝ね」
「あの時、お前は私に気絶させられたままだったからな。作業は実にスムーズだったぞ」
ハッハッハ、と朗らかに笑う二人。
「もう何というか、何にも言えねぇ……」
「あ、あはは……」
両手で顔を覆って項垂れる夜明をお、引き攣った笑みを浮かべたアーシアが慰めるのだった。