小説『ハイスクールD×D 不屈の翼と英雄龍』
作者:サザンクロス()

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               『聖剣の噂』




「こら〜、二人とも止めなさい」

ローマ近郊、カトリック系の孤児院。異様にのんびりとした優しげな声が取っ組み合いをしていた二人の少年を諌める。

「いったいどうしたの?」

明らかに女性の体系なのに神父の服を着た二十台突入寸前の美女は膝を折って少年二人と視線の高さを合わせた。

「マークの奴が先に」

「違わい、ネビスが先に」

再び掴みあう二人を美女が引き離す。ため息を吐きながら美女はめっと軽く二人の額を叩いた。

「駄目ですよ、友達に暴力を振るうなんて。それでは二人とも天国には行けませんよ」

キュピーンと目を輝かせ、女性は堂々と言い放った。

「暴力を振るって良いのは隣人を脅かす者と悪意を抱いて近づいてくる化け物だけですよ」

元気良く手を上げる二人に美女は優しく微笑む。不意にじゃれ付いてくる少年達を相手にしている美女の顔が曇った。視線の先には女性と同じ格好をした本物の神父が立っている。

「二人とも、部屋に帰ってなさい」

少年二人は美女の言う事を素直に聞いて建物へと入っていった。深々とため息を吐きながら美女はこちらに向かって歩いてくる神父を見やる。

「またですか? 私は十三課(イスカリオテ)を追放された身だと何度言えば分かるんですか?」

「すまんな。しかし、君の力は追放されたからといって無視できるほど小さいものではないのだよ。シスタークレア……いや、十代目アレクサンドロ・アンデルセン」

再び大きく息を吐き出しながら美女、クレア・サンドロは神父を自宅に招き話を窺った。














「うぅん……」

艶かしい吐息が夜明の耳を撫でる。彼、月光夜明が寝床の中で目を覚ますとそこには主であるリアス・グレモリーの一糸纏わぬ姿が……。

「くぁzwsぇdcrfvtgbyhぬjみきこlp!!!」

およそ人語とは呼べない叫びを上げ夜明は寝床であるベットを飛び出そうとするが、ガッチリとホールドしてくるリアスの両腕がそれを許さない。騒いだのがいけなかったのか、リアスは夜明の身体に回した両腕の力を強めた。

(何か柔らかくてけしからんものが俺の胸にィィぃぃsrdtgぜsxrdytぎういお!!!!!)

裸の美少女に抱きつかれているという現実に夜明の脳みそはオーバーヒートしていた。暴れだそうとする雄の本能を殺し続けること数分、ようやっとリアスは瞼を上げてその碧眼で真っ赤になっている夜明の顔を拝む。

「あら、起きてたの夜明?」

「エェ、オ陰サマデ」

アンドロイドもびっくりな口調だ。何故に夜明がこんな状態になっているのか分かってやってるのだろ。リアスは小悪魔チックな笑みを浮かべて夜明の頬にキスを落とした。

「ふふふ、こんな程度で真っ赤になるなんて駄目ね。本番の時どうする心算なの?」

(裸で男と同衾するのがこんな程度!? 悪魔ってのは性に対してとことんオープンなのか!?)

貞操観念が並みの女性よりも強い夜明には信じがたい世界である。そんな夜明の心中を知ってかし知らずか、唇をゆっくり舐めた。捕食者が獲物を見つけた時みたいに。

「今の内に練習しておく? 私は構わないわよ」

色々な意味で自分の身が危ない。コンマ数秒の速さで理解した夜明、しかし逃げ場がない。哀れ、彼の貞操はリアス・グレモリーの手によって花と散ってしまうのだろうか!? 万事休す、絶体絶命! そこに一人の女神が舞い降りる!!

「夜明さん、もうすぐ早朝トレーニングの時間で……」

礼儀正しくノックしてから扉を開いたアーシアは室内の現状に物の見事にフリーズした。固まる夜明の目の前で見る見るうちに膨れていくアーシア。涙目の不機嫌である。

「お早う、アーシア」

特に悪びれるでもなく、リアスは余裕たっぷりの笑みを浮かべてアーシアに手を振る。怒り心頭といった様子のアーシアはいきなり自分の服に手をかけた。

「私も裸になって一緒に寝ます! 仲間外れなんて嫌です!!」

どうやら、夜明の前に舞い降りてきたのは女神などではなく、小悪魔に対抗心を燃やす天使だったらしい。














「部長、後生ですからベットの中に潜り込んでこないでください。心臓とか色々もたないです」

「全くだ……モグモグ……大体……モキュモキュ……貴様如き愚物が……ハグハグ……奏者と同衾するなんて……アムアム……身の程知らずにも程があるぞ……ゴックン! 奏者、おかわり!!」

「そして何でお前は朝の食事風景にナチュラルに混じってんだ、ブレイズハート」

三人仲良くテーブルにつく夜明、リアス、アーシア……+英雄龍ことブレイズハート。本当なら夜明の神器(セイグリッド・ギア)である『英雄龍の翼(アンリミテッド・ブレイド)』の中に封印されているのだが、以前に夜明が『英雄龍の翼(アンリミテッド・ブレイド)』の能力の一つ、『英雄龍の羽(アンリミテッド・ブレイド・フェザー)』に覚醒したお陰で自由に神器(セイグリッド・ギア)の中から出てこれるようになったらしい。

「もっとも、奏者を中心とした半径十メートルの空間という限定はあるがな」

「それだけでも十分だろうが。朝起きたとき、お前が至近距離でガン見してた時は冗談抜きでビビっただろ……」

しかも性質の悪いことにこの我様ドラゴン、『英雄龍の翼(アンリミテッド・ブレイド)』の外に出てる間、四六時中夜明とくっ付きたがる。マンションにいる時は当たり前、風呂場に乱入、ベットに突撃ラブハートしてくる始末。そして大抵はリアスと頬の引っ張り合いという超幼稚な喧嘩を繰り広げるのだ。

「せめてもの救いは学校でまで出てこないってとこだな」

「うぅ、本当だったら二十四時間三百六十五日奏者と一緒にいたいのに……」

「そんな! 学校でまで出てこられたら困ります!」

「アーシアなんてまだ良いじゃないクラスも学年も一緒なんだから。私なんて学園が違う上に家ではこれが夜明にくっ付いてるのよ。というか英雄龍! 貴方も神器(セイグリッド・ギア)の中から出てくるんじゃないわよ! それにその子は私のよ!!」

「はっ、何を抜かすか愚物が。奏者は余のものであり、余は奏者のもの。魂まで共にあるのだ。命の恩人というだけの貴様とは格が違うのだ格が!」

二人の口論は果てしなくヒートアップ。そして案の定、取っ組み合い、もとい引っ張り合いの喧嘩をし始めた。目の前でギャーギャー騒ぐ二人を止める様子のない夜明。最初の頃は止めようとしていたのだが、少なくとも一日に四、五回同じような喧嘩をするのでもう諦めていた。大きなため息を吐きつつ、夜明は味噌汁を啜るのだった。

「味噌汁が妙に塩辛いのは気のせいか?」

「ど、どうなんでしょう……」














「と、まぁそんな光景が我が家では毎日のように繰り広げられているんですよ」

「あらあら、夜明くんも大変ね」

昼休み、人知れずオカルト研究部部室へとやって来た夜明はたまたまいた朱乃に愚痴を零していた。ちなみにブレイズハートは神器(セイグリッド・ギア)の中でお寝んねしている。

「正直言って、胃に穴が開く日もそう遠くないような気がしてきます……」

夜明は両手で顔を覆って項垂れた。その姿、妙に哀愁が漂っている。

「何というかこう……癒しが欲しいです」

「ふぅん……なら夜明くん、私が癒してあげましょうか?」

え、マジですか? と問い返そうとする夜明が見たのは扇情的な表情を浮かべてシャツのボタンを一個ずつ外していく朱乃……。夜明は慌てて朱乃を手を止めさせた。

「すすすストップ朱乃さん! 俺が求めてる癒しっていうのはそういう感じの癒しじゃないですから!」

「そうなの? 残念」

本当に残念そうだ。この人も俺の胃に穴を開けようとする刺客だったのか! と戦慄を覚えていると名を呼ばれる。夜明を呼びながら朱乃はニコニコしながら自分の隣りを叩いていた。座れということらしい。

「……」

「そんなに警戒されるなんて、私、悲しいわ……」

さっきのこともあり、露骨に夜明が警戒を顔に浮かべると朱乃はよよとわざとらしさ満点で嘘泣きをする。普通の男なら引っかかる事もないだろうが、この男は基本的に底抜けのお人よし、それも仲間に対してはゲロが出るほど甘い。

「あぁ、別に警戒なんてしてないですから!」

慌てふためきながら夜明は朱乃の隣りに座った。途端にニコニコし始める朱乃。普通ならここで騙されたと確信するだろうが、この男は嘘泣きを疑いもしない。何故なら月光夜明だからだ。朱乃は優しく、だが有無を言わせぬ力で夜明の頭を掴み、自分の膝の上に乗せた。早い話、膝枕だ。

「あの、朱乃さん。何故に膝枕?」

「あら、私の膝枕は嫌かしら?」

「嫌ではないですけど」

「夜明くん、この前言ってたじゃない。年上の女の人に膝枕と耳掃除して欲しいって」

ここに来て自分のささやかな夢が叶うとは夢にも思わなかった夜明だった。言われるがまま創造した耳かきを朱乃に渡す。

「痛かったら痛いって言ってくださいね」

「了解です……あー、こりゃ良いや……」

暫しの間、朱乃の膝の上で至福の時間を過ごす。朱乃も結構楽しんでるらしく、鼻歌なんか歌ってたりする。まぁ、そこまでは良かったんだが、朱乃は耳掃除を終わらせても夜明を放さなかった。ニコニコしながら延々と夜明の頭を撫でている。

「あの、朱乃、さん」

戸惑い気味に呼びかけてみるが反応は無い。相変わらずのニコニコフェイスだ。

「うふふ、夜明くん、可愛いわぁ……」

頭を撫でていた手がシャツのボタンへと移動していく。夜明が本格的に身の危険を感じたその時、

「探したわよよあ……」

扉を開いて部室に入ってきたリアス。朱乃に膝枕されている夜明を見て彫刻よろしく固まった。気まずい沈黙が流れること数秒、リアスは紅のオーラを放ちながらゆっくりと一歩を踏み出す。

「朱乃、これはどういうことかしら?」

「見ての通り膝枕よ、リアス。どこかの誰かさんのせいで疲れてる夜明くんをこうやって癒してあげてるの」

リアスに見せ付けるように朱乃は夜明を撫でる。盛大に顔を引き攣らせる夜明。リアスは俯いているので表情は窺えないが壊れたテープのように何かを繰り返し呟いている。

「私だって膝枕してあげたいのに私だって膝枕してあげたいのに私だって膝枕してあげたいのに私だって膝枕してあげたいのに私だって膝枕してあげたいのに私だって膝枕してあげたいのに私だって膝枕してあげたいのに……」

大股に二人が座ってるソファーに歩み寄り、リアスは夜明を抱き寄せる。朱乃も負けじと夜明を抱き締めてリアスに対抗する。

「離しなさい朱乃! 今度は私が夜明に膝枕するの!!」

「家で一緒にいられるんだから今は私に譲ってくれてもいいじゃない!」

「家だとあのお邪魔虫ドラゴンが割り込んでくるの! だから今するの!!」

「そんなの知らないわよ!!」

美女二人に挟まれる夜明。左右から感じる女子の柔らかい身体の感触は天国だろうが、上手いこと二人の胸に鼻と口を塞がれてるため、現在進行形で地獄を見ていた。

「ちょ、二人と……落ち着……いて……! 息が、息がぁぁ!!」

その後、夜明の天国と地獄の同時体験は五時限目をバッくれて昼寝しに来た太陽が二人を止めるまで続いたとか……。














「サンキュー太陽。何か綺麗なお花畑にある川の向こう側で親父とお袋が笑顔で手を振ってた……」

「危なかったなおい」

太陽と一緒に五時間目の授業をサボる事にした夜明。ちなみにリアスと朱乃は太陽の手によって沈められ、今は二人仲良くお寝んねしている。苦笑いを浮かべていた太陽だが、すぐに真剣な表情を作って夜明と視線を合わせた。

「夜明、最近祐斗の様子がおかしいのに気付いてるか?」

「え? あぁ、何かずっと考え込んだりしてるみたいだな。心ここに在らずって感じで。女子達には物思いに耽る王子って評判良いらしいぜ」

おどけた調子で言ってみるが、相変わらず太陽の表情は真剣だ。おふざけ抜きの話だと感じた夜明は居住まいを正して改めて太陽と向き合う。

「木場に何かあったのか?」

「いや、祐斗自身には何も無い。ただ、ある噂を聞いたらしくてな」

噂? 表情に出した夜明に太陽ははっきりと告げた。

「カトリック教会本部ヴァチカン及びプロテスタント側、正教会側に管理保管されていた聖剣エクスカリバーが奪われたらしい。そしてその奪った連中がこの街に潜伏、何かしらの術式を行おうとしているそうだ」

マジか? と問う夜明に確定ではないかが、と太陽は背凭れに身体を預けながら肩を竦める。

「だが、全くの嘘という訳でもないだろうな。こんな噂、冗談で流して良い話じゃない」

「エクスカリバーか……それと木場に何か関係があるのか?」

「大有りだ、詳しいことはいずれリアが話してくれるだろ。この噂が本当ならヴァチカンの方から何かしらのコンタクトがあるだろ……夜明、私はお前のことを信頼してる、それも結構なレベルでな」

いきなりそんな事を言われて夜明は目を白黒させる。夜明の肩に手を置き、太陽はようやく相好を崩した。

「祐斗のことは頼んだぞ」

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