小説『ハイスクールD×D 不屈の翼と英雄龍』
作者:サザンクロス()

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           『聖魔剣と英雄龍』




眩い光が収まった時、校庭の中央にはただ一本、青白いオーラを放つ一本の聖剣だった。

「エクスカリバーが一本になった光で下の術式も完成した。後、二十分もしない内にこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかない」

バルパーの口にしたことにリアス達は焦りを顔に浮べる。後、二十分しか時間が無いのなら、サーゼクスを待ってるなんて悠長な事は言ってられない。

「フリード!」

「へいへい」

コカビエルに名を呼ばれ、フリードが前に進み出てくる。

「陣のエクスカリバーを使え。最後の余興だ。四本のエクスカリバーが統合した聖剣の力、見せてみろ」

「はいはいっと! 全くウチのボスは人使いが荒くて大変だぁ」

と、口で言いつつもフリードの表情は嬉々としていた。四本のエクスカリバーが合わさった聖剣で戦える事が余程嬉しいのだろう。相変わらず狂った笑みを作りながらフリードは校庭のエクスカリバーを手に取った。

「やっぱり使えるのか」

既にバルパーの手によって調整されていたのだろう。長年使い慣れた得物を扱うようにエクスカリバーの感触を確かめるフリードを見ても、特に夜明は驚きを感じなかった。

「グレモリーの騎士(ナイト)。共同戦線が生きてるのなら共にあのエクスカリバーを破壊しないか?」

「いいのかい?」

木場の問いにゼノヴィアは首肯して見せる。

「私は聖剣の核である『かけら』を回収できればそれでいい。あれは最早……聖剣とは呼べない」

それがフリードのような輩が使っているのなら尚更だ。ゼノヴィアの心情を汲み取ったのか、木場は黙って魔剣を構えながら二人のやり取りを笑って見ていたバルパーを睨む。

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ」

正確に言えば、一度バルパーに殺されてその後に悪魔として転生した、だ。バルパーは面白そうに眉を持ち上げる。

「ほぉ、あの計画に生き残りがいたとはな。それがこんな極東の国で会うとは……乙女座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられないな」

何言ってんだこいつ? 敵である木場やリアス達は勿論、味方であるはずのフリードやコカビエルもバルパーを奇異なものを見る目で見ていた。そんな物は意に介さない、とバルパーは饒舌に語り始める。

「私はな、聖剣が大好きなのだよ。それこそ夢に見てしまうほどにな。小さな頃は読むたびにエクスカリバーの伝説に心を躍らせたものだ」

だからこそ、絶望した。自分に聖剣の適正がないことに。そこまでを聞いて、夜明は納得したように頷く。

「成る程。だからこそ、聖剣を扱える者に憧れ、果ては人為的に生み出せないかを研究し始めた訳だ」

「ご明察だ、英雄龍。そして彼らの尊い犠牲もあり、研究は完成したよ」

彼ら、が誰を指すかは言わずとも分かる。木場は瞳の奥で憎悪を滾らせてバルパーを射殺さんばかりに睨んでいる。ふ〜ん、とどうでも良さそうに頭を掻いていた夜明の目がすっと細くなった。

「……それだけか?」

「……くくく、研ぎ澄まされた刃のように鋭い勘だな、英雄龍。背筋に薄ら寒いものを感じずにはいられないな」

二人の問答に周囲の者は疑問符を浮べる。すぐに夜明は元の表情へと戻った。

「研究の完成。差し詰め、聖剣を扱う上で必要なものを調べてそれを増やしたんだろ?」

当たらざるとも遠からず、である。バルパーは聖剣使いの素養がある者の持っている因子を数値化して調べたのだ。調べる内に至った結論が『因子を抽出し、集めて別の者に与えられないか』、だ。

「成る程、読めたぞ。聖剣使いが祝福を受けるとき、身体に入れられるのは……」

「聖剣使いの因子か。と言うか、その方法で聖剣使いが生み出されてるってことはバルパーの研究を誰か引き継いでるのか……腐ってやがんなぁ、今の天界も」

「ミカエルめ、私をあれだけ断罪しておいて結果がこれか。まぁ、あの天使のことだ。殺すまではしてないだろうがな」

その分、私よりも人道的だ、とバルパー。

「殺した同志たちから聖剣適正の因子を抜いたのか?」

木場の問いに答えながらバルパーは光り輝く球体を取り出す。聖なるオーラを放つそれが抽出され、圧縮された聖剣適正の因子だということは一目瞭然だった。

「三つほどフリードに使ったよ。これは最後の一個さ」

「……バルパー・ガリレイ。己の欲望のためにどれだけの尊い命を弄んだ?」

「さぁてな。今更数え切れるものでもなし、数えるつもりもないがな……そうだ! 贖罪というわけではないが、この因子の結晶をくれてやろう。どうせ、環境さえ整えば量産できるからな。まずはこの町をコカビエルと共に破壊しよう。次に伝説に残る聖剣の収集、聖剣使いの量産。ミカエルとヴァチカンに戦争をしかける……やることが多くて目が回りそうだ」

バルパーは狂気に彩られた目を妖しく光らせ、手に持っていた因子の結晶を木場に投げ渡した。木場は赤子でも抱くように因子の結晶を優しく受け止め、哀しさ、愛しさ、懐かしさを綯い交ぜにしたような表情を浮べる。

「皆……」

涙を流しながら木場は結晶を撫でていた。その時、結晶が儚い光を放ち始めた。光はゆっくりと、だが校庭を包み込むほどに拡大していく。光に包まれた範囲の中にポツポツと何かが浮かび上がってきた。それは宙を漂っていたが、やがて人の形を成した。木場を囲むように現れた少年少女の正体は、

「この戦場に漂う様々な力が因子に囚われていた彼らの魂を解き放ったのですね」

朱乃の言葉に夜明は納得顔で頷く。今の校庭は魔剣、聖剣、悪魔、堕天使、ドラゴン何でもござれの状態だ。『その時、不思議な事が起こった!』が発動してもおかしくない。木場は自身を囲む彼らを見て、悲しみと懐かしさを足した表情を浮べていた。

「皆! 僕は、僕は! ずっと思っていたんだ。僕だけが生きてていいのかって。皆だって生きたかったはずだ。皆にだって夢があった! 皆だって生きたかった! 僕だけが、平和に」

嗚咽交じりに語る木場に一人の少年が微笑みながら何かを訴えている。遠すぎて声は聞こえなかったが、読唇術で何を言っているのかは理解できた。

『自分達のことはもういい、君だけでも生きてくれ』

少年の言葉に木場は止め処なく涙を流す。木場を囲む少年少女がリズミカルに口を開き始めた。同時に聞こえてくる、優しく温かな歌。

「聖歌……」

アーシアが呟く。彼らと一緒に木場も流れる涙をそのままに聖歌を口ずさんでいる。それを聞いている内と、無意識の内に夜明も涙を流していた。聖歌と共に流れ込んでくる彼らの想いが彼に涙を流させている。辛い人体実験の中、希望と夢を保つために歌い続けたもの、過酷な生活の中での唯一の糧。

〜♪ 〜♪

歌が終わる。すると彼らの魂が神々しい輝きを放ちだした。木場を中心に輝きを増していく。

『僕らは一人では駄目だった』

『聖剣を扱える因子が足りなかった』

『皆が集まれば大丈夫』

『聖剣を受け入れるんだ』

『怖くなんか無い』

『例え神がいなくとも』

『神に見捨てられたのだとしても』

『僕達の心は』

「……一つだよ」

少年少女達の魂が天へと昇っていき、大きな光となって木場を包み込んだ。それはとても優しく、木場を祝福するように見える。

『……奏者よ』

ブレイズハートが語りかけてくる。あぁ、と応じながら夜明は次の言葉を待った。

『あの『騎士(ナイト)』は至った。所有者の願い、想いが世界の『流れ』に逆らうほどの劇的な転じ方をした時、神器(セイグリッド・ギア)は至る』

その名は、『禁手(バランス・ブレイカー)』。闇夜を斬り裂き降り注ぐ輝き、木場を包むその光はとても優しかった。














「木場ぁぁぁ!!! 立て、剣を取れ! フリードを倒して、エクスカリバーを乗り越えて、過去を振り切れぇぇぇ!!!」

気付けば夜明は叫んでいた。周りの仲間を驚かせ、何より自分自身が一番驚愕しながらも声を響かせる。

「お前はグレモリーの『騎士(ナイト)』! 俺達の仲間だ!! 行け! 勝て!! 彼らの魂と共にあるお前に負けはありえねぇ!!」

「行きなさい祐斗! 己で決着をつけて、堂々と凱旋しなさい!! リアス・グレモリーの『騎士(ナイト)』に敗北は許されないわよ!!」

「祐斗くん! 信じてますわよ!!」

「……祐斗先輩!」

「ファイトです!!」

仲間達の声が『騎士(ナイト)』の背を押す。

『男の子だろ? 忌々しい過去にくらい打ち勝ってみせろ』

ここにいない太陽の声を聞いた気がする。いや、彼はこの場にいない仲間の声を聞いた。はい! と応えながら木場は手を突き出す。

「僕は剣になる」

フリードを見据えながら木場は誓いを立てる。

「部長の、仲間達の剣に! 僕はなる! 応えてくれ魔剣創造(ソード・バース)!!」

木場の神器(セイグリッド・ギア)と少年少女の魂が融合していく。魔と聖。本来なら相反する力が融けあい、剣の形を成した。

「禁手(バランス・ブレイカー)、『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。聖と魔の剣、その身で受け止めてみるといい」

木場は『騎士(ナイト)』の特性を存分に発揮し、フリードの視界から逃れた。視界外から飛んできた木場の一撃をフリードは辛うじて受け止める。しかし、エクスカリバーの刀身を覆っているオーラが木場の聖魔剣の力で打ち消されていく。

「っ!? 本家本元、最強の聖剣を超えるってのか!?」

「それが本当のエクスカリバーだったらどうなってたか分からない。だが、君に使われている時点でそれは鈍同然! 僕と同志たちの想いは断ち切れない!」

「舐めんなよ駄剣がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

叫びながらフリードは木場を押し返した。自身は後ろに跳び、統合されたエクスカリバーの力を存分に発揮する。刀身を伸ばし、切っ先を枝分かれさせ、上下左右全方向から木場に突きの弾幕を浴びせる。だが、エクスカリバーの切っ先は木場を掠りもしなかった。

「何で、何で当たらねぇんだよぉぉぉ!!!??? 最強の聖剣様なんだろ!? 最強伝説語り継がれてきたでしょうがぁぁぁぁ!!!!」

「こんな殺気剥きだしの攻撃になんて当たる人はいないよ」

「そうかい! だったらこいつも追加してみましょうかねぇぇぇ!!!」

聖剣の刀身が消えた。『透化の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』の力だ。しかし、幾ら見えなくなったからといって殺気まで無くなる訳ではないので、木場は容易にフリードの攻撃をいなした。

「グレモリーの『騎士(ナイト)』。そのままにしておけよ」

横殴りの形でゼノヴィアが乱入してきた。左手に『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』を持ち、右手は宙へと突き出されている。

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

ゼノヴィアが何かの言霊を唱え始めると、空間が歪みを生み出した。ゼノヴィアは無造作に歪みの中へ手を突っ込み、何かを一気に引き抜いた。

「この刃に宿りしセイントの御名において解放する……デュランダル!!」

現れたのはオーラを放つ聖剣。名をデュランダル。『絶世の名剣』と謳われた、切れ味だけなら最強とさえ言われている。

「デュランダル? 貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか? 私の研究ではデュランダルを扱うまでには至らなかった……あぁ、原石か」

目まぐるしく表情を変化させていたバルパーが納得顔で頷く。何のことは無い。彼女、ゼノヴィアは産まれついてのデュランダル使い。『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』は後付に過ぎない。

「こいつは想像を絶するほどの暴君でな。放っておけば勝手に何もかもを切り裂いていくので、普段はい空間に閉じ込めておいている。使い手である私ですら御しきれない暴れ馬さ。さて、フリード・セルゼン。お前の好きそうなエクスカリバーとデュランダルの聖剣頂上決戦だ。簡単にやられてくれるなよ?」

『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』とデュランダルの二刀流。これ以上ないくらいに兇悪な組み合わせだ。

「そんな取ってつけたような後付設定を今更出してんじゃねぇよクサレビッチがぁぁぁぁ!!!!」

フリードは叫びながら枝分かれさせた透明の刀身をゼノヴィアへと伸ばした。ゼノヴィアは無造作にデュランダルを振り抜く。それだけで枝分かれしたエクスカリバーは砕け散り、校庭の地面が抉り取られた。

「マジなのマジかよマジですかぁぁぁぁ!!!!???? 最強の聖剣エクスカリバーちゃんが木っ端微塵って!? 冗談にしたって笑えないっての!! そもそも欠片を利用したのが間違いだったのかねぇ!!?? そこん所どう思うかね!?」

「地獄での鬼にでも聞いてみたらどうだい?」

喚き立てるフリードに冷たく言い放ちながら木場は聖魔剣を振り下ろす。フリードはエクスカリバーで防ごうとするが、

ザシュッ!! 

突如としてエクスカリバーはフリードの手から消えた。防ぐものを失ったフリードはもろに木場の一撃を受け、鮮血を噴出しながら倒れる。顔に何が起こったか分からない、と貼り付けながら。それは木場とゼノヴィア、戦いを見守っていたリアス達も同じだ。ただ一人、夜明のみがやはり、という表情を浮べている。倒れたフリードの背後では、

「ふむ、人に対しての悪影響は無いか……実験成功と言ったところか」

エクスカリバーを手にしたバルパーがぶつぶつと呟いていた。もう片方の手にはフリードから抜き出しただろう因子の結晶が三つ。

「バルパーのおっさん、どういうこったよ? おふざけにしちゃ性質が悪過ぎるんじゃねぇかい?」

フリードの問いを無視し、バルパーは今度、木場が持つ聖魔剣へと視線を注がせた。

「本来ならありえぬ、反発する二つの要素が交じり合った異端の剣。どうやって生まれた? ……もし、仮に聖と魔を司る存在のバランスが大きく崩れているとしたら……成る程成る程。そういうことかコカビエル」

「ほぉ、気付いたかバルパー。思っていたよりも優秀なようだな、お前は」

「何、どういうことなの!?」

顔を見合わせて笑いあう二人にリアスがイライラした様子で問う。バルパーは嫌な笑みを顔に貼り付けたままエクスカリバーの切っ先で夜明を指し示した。

「聞くならそこに立っている英雄龍に聞いたらどうだ? 少なくとも、私が何をしたのかは気付いているようだぞ」

バルパー、コカビエルを除く全員の目が夜明に向けられた。夜明はパリパリと頭を掻きながら倒れているフリード、それからバルパーを指差す。

「少し考えれば想像がつく。バルパー、お前はそこの若白髪を使って聖剣因子の安全性を実戦で実験したんだろ? 自分が使っても大丈夫かどうか確認するために」

「どういうこと、夜明?」

「考えてもみて下さいよ部長。人体実験なんてもんをするようなクソ野朗が、自分以外の誰かを聖剣使いにして満足すると思います?」

否だ。『聖剣計画』の目的、バルパーの願いは変わらずただ一つ。たった一つのシンプルなものだ。

「自分自身を聖剣使いにすること。『聖剣計画』はそれを実現するための第一歩。コカビエルに協力したのも、聖剣を集めるついでにフリードで実験するため……違うか?」

夜明の推測にバルパーはブラボー、と大きく拍手する。

「いやいや、大した洞察眼を持っているようだな英雄龍。恐れ入る……そうだ。私は! 自分が! 聖剣使いになりたかったのだよ!! 全ては私が聖剣使いになるための犠牲!!」

「下種野朗が……」

狂気を燃え滾らせるバルパー。それとは対照的に絶対零度の怒りを放つ夜明。

「しかし、私は実に運が良い。五本目のエクスカリバーに加え、デュランダルも手にする事が出来るのだから」

不意にバルパーの姿が消え、ゼノヴィアの胸部からエクスカリバーの刀身が生えた。『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』の力を発揮させたバルパーの一撃だ。その動きは完全にフリードを超えている。血を吐き出し、倒れるゼノヴィアの手から『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』とデュランダルをもぎ取り、バルパーはその場から離れた。

「何でフリードよりもバルパーの方がエクスカリバーを上手く使えるの!?」

「多分、自分の身体に害にならない程度に聖剣因子を身体に流し込んでたんでしょうね」

オマケにさっきフリードから抜き取った因子の結晶三つも取り込んでいる。それでエクスカリバーを上手く使えないほうがおかしい。夜明は傷口から血を溢れさせるゼノヴィアの首根っこを掴み、アーシアの方へと放り投げた。

「アーシア、そいつの回復よろしく」

「は、はい!」

アーシアが『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』でゼノヴィアの治療を始めたのを視界の端で確認し、夜明は木場の隣りへと並んだ。

「んで、どうするよ『騎士(ナイト)』さん。相手は不完全とはいえ『最強の幻想(ラスト・ファンタズム)』を謳われた聖剣。オマケに『絶世の名剣(デュランダル)』のオマケ付きときてる!」

「……僕だけじゃ勝てないかもね。それでもやらないと。バルパー・ガリレイは邪悪すg」

そこまで言った木場の腹部に夜明は肘鉄を打ち込む。腹を押さえて呻く木場を見下ろし、夜明はだろうな、と言い放つ。

「確かに『聖魔剣』だけじゃ厳しいだろうな」

だが、

「そこに『英雄龍』が加われば、話は別だ」

「っ!?」

驚きに目を見開く木場に夜明は飄々とした笑みを浮かべて見せた。

「……これは僕個人の復讐だよ?」

「んなこと言えるほど事態は小さくないだろうが。それに、そういうのを差し引いても興味あったしな、最強の聖剣に」

言いながら夜明は右腕に力を込めた。創造するのは銀翼蒼星ではなく、傍らの仲間が握っているものと同じ剣、聖魔剣だ。聖魔剣を肩に担ぎ、夜明は木場を見る。

「コカビエルも含めてさっさと終わらせようぜ、相棒(ゆうと)」

「……そうだね。部長にも謝らないといけないし、早々に終わらせようか、相棒(よあけ)」

二人はにっと笑い合うと、バルパーに向かって同時に歩を進め始めた。

「ほぉ、『聖魔剣』と『英雄龍』が相手か。初陣の相手として不足は無い」

「今のあなたには致命的な弱点が二つある」

バルパーの言葉を無視して祐斗が二点を指摘する。一つはゼノヴィアから奪った『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』が持っている聖剣と統合しきれていないこと。もう一つはデュランダルを完全に扱えないことだ。

「ま、それが無くてもお宅が俺達に勝てるとは思えないけどな」

立ち止まった二人、互いの聖魔剣を交差させるようにバルパーへと突きつけた。断罪の決意を込め、叫ぶ。

「「バルパー・ガリレイ。お前の罪を数えろ!!」」

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ハイスクールD×D 13 イッセーSOS (富士見ファンタジア文庫)
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