小説『ハイスクールD×D 不屈の翼と英雄龍』
作者:サザンクロス()

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             『白との邂逅』





「それじゃ受け取ってちょうだい、私の力」

アトラス・I(イリス)・エジソン(以後、エジソン)の手が燐光に包まれる。エジソンが輝く手で夜明の身体に触れると、手を通して光が夜明の方へと流れ込んでいく。数秒としない内に光は完全に夜明に流れた。

「これがお前の力か?」

「そ。それが私の力『新しき時代(ネクスト・ジェネレーション)』。その能力は」

エジソンの眼前で夜明は『英雄龍の翼(アンリミテッド・ブレイド・フェザー)』を発動させる。光に全身を包まれ、夜明の姿が消えた。数秒後、薄れていく光の中から現れた夜明は真紅の鎧を纏っていた。鎧の随所から攻撃的な棘が突き出していて、背後には七枚の光る花弁を持つ花が三枚、円を描くように浮かんでいる。

「神器(セイグリッド・ギア)を融合させ、新しい神器(セイグリッド・ギア)を生み出すこと」

「英雄龍の翼(アンリミテッド・ブレイド・フェザー)、『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』ってとこか?」

感覚を確かめるように両手を握ったり開いたりしながら夜明は両手に銀翼蒼星を創造した。背中の三翼を広げ、戦闘体勢が整った事を示す。嬉々とした表情を浮べながらコカビエルは椅子から立ち上がり、夜明の銀翼蒼星に対抗するように光の槍を両手に生み出した。

「それでは始めようか」

「あぁ、行くぜ」

言うや、夜明は三翼を羽ばたかせてコカビエルに向かって飛翔した。光槍と銀翼蒼星がぶつかり合って火花を散らす。迅雷のように銀翼蒼星を振るうが、悉く光槍でいなされていた。

「はっはっは! 鋭いが殺意が足りないぞ英雄龍! 殺すつもりでかかってこい!!」

「んじゃ、遠慮なく」

宙に残光を描いていた銀翼蒼星の切っ先が速さを増し、確実に急所を貫こうとしてくる。コカビエルは鬼気迫る表情を浮べながら夜明の突きを弾いた。

「更に速くなるか! いいぞ、いいぞ英雄龍!!」

コカビエルは両手の光槍に加え、背中にある十枚の黒翼を刃のようにさせて夜明を切り刻もうとする。夜明は光槍を銀翼蒼星で、翼を周囲に武具を生み出すことで迎え撃った。互いの攻撃で剣戟音と火花が派手に飛び散る。

「そらぁ!!」

コカビエルの黒翼に武具が切り裂かれた。刃と化した羽先が夜明の頬を掠める。夜明は三翼を大きく動かして後ろに下がるが、コカビエルが追いすがってきて光槍の穂先を向けていた。コカビエルは光槍で夜明の身体を貫かんと大きく腕を引く。対して夜明は銀翼蒼星を放棄し、代わりに両手に『猛き極光(べオウルフ)』の光を創り出した。

ガォォン!!

光の槍と光の拳がぶつかり合って莫大な光が放たれる。夜であるにも拘らず周囲一体は真昼のように明るくなった。

「どうした英雄龍、俺はまだ本気を欠片も出してないぞ? お前の力はその程度か? そしてその鎧は飾りか!?」

コカビエルの挑発に夜明は銀翼蒼星を創り出そうとしていた両手を止める。一瞬黙り込み、それから片手を上げる。

「そんなに言うなら見せてやるよ、『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』の力を」

そして彼は信じられない事を言った。

「コカビエル。あの光の槍を最大出力でぶっ放してみな。俺はこいつだけでそれを凌ぎ切って見せる」

そう言って彼が生み出したのは何の変哲も無い弓と矢だった。夜明の言葉にコカビエルは勿論、仲間達も驚きの表情を浮べる。異口同音に無理だ! と叫ぶが、夜明は仲間達を無視してコカビエルを見据えた。最初こそ呆けた表情を浮べていたが、すぐにコカビエルは笑みを作る。

「その言葉、後悔するなよ英雄龍!!」

コカビエルが両手を掲げる。さっき、体育館に向かって放たれたものとは比較にならないような大きさの光槍がコカビエルの頭上に現れた。物怖じする素振りも見せず、夜明は矢を番えて弦を引き絞った。

「塵も残さずに消えろ、英雄龍!!」

放たれた極太の光槍。夜明は迫る光の槍に矢を射る。堕天使の光槍と普通の矢。威力も密度も全てが桁違いだ。拮抗することなく矢は光槍に消し飛ばされる。誰もがそう思っていた。矢と光の槍が正面からぶつかり合う。刹那、

バシュン!! と音を立てて光槍が消し飛んだ。余りの呆気なさにその場にいるほとんどが己の目を疑った。矢は威力を減衰する様子も無くそのまま直進し、コカビエルの頬を掠める。途端、コカビエルは目を見開いて大量の血を吐き出した。

「がはぁ!! どういうことだ、何故あんな棒切れ一本に俺の光が打ち消された!?」

「こいつが『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』の力だ」

『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』の基になる神器(セイグリッド・ギア)、『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』は投擲武器や使い手から離れた武器に対して無敵という概念を持つ。その『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を鎧として纏った夜明が放つ全ての攻撃は飛び道具に対して無敵の力を発揮するのだ。

「ちなみに掠っただけでお前がそんだけのダメージを受けたのは『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』の力な」

「心臓に槍が命中した」という結果を作ってから放たれる殺傷力抜群の神器(セイグリッド・ギア)、それが『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)』だ。

「それを鎧として纏った彼が放つ攻撃が当たれば、例えどんなに浅い傷であったとしても、その傷は心臓へと及ぶんだよね」

エジソンは楽しげに独白する。つまるところ、今の夜明は飛び道具に対して無敵の力を発揮し、当たりさえすれば確実に相手へ大きなダメージを与える事が出来るのだ。

「ま、今の俺じゃ三分しか『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』の能力を発動できないけどな」

夜明の背後に浮かんでいた花が一枚、儚い音を上げて散っていく。背後にある花が全て散った時、『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』は強制的に解除されるのだ。

(つまり、後二分の間逃げ切ればあの力はなくなるのか!?)

「あぁ、後二分間逃げ切れば、なんて考えた貴方に嬉しいお報せ」

激痛が走っている胸を押さえるコカビエルに夜明は悪戯っぽく微笑んで見せた。

「『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』が無くなる前に俺を倒さないと、あんた負けるぜ」

絶対な。夜明の口調に嘘や虚勢などなく、ただ絶対の自信が含まれていた。言いようの無い恐怖を感じたコカビエルは無数の光を生み出す。周囲に浮かぶ光は最早槍としての形すら保っていなかった。どれだけコカビエルが動揺しているかが窺える。

「俺はコカビエル! 古の戦場を駆け抜けた堕天使!! こんなところで負けるものかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

絶叫と共に降り注ぐ無数の光。光の豪雨が夜明を襲う。光は校庭に無数のクレーターを作り上げるが、そのどれもが夜明に傷一つ与えられない。必死の形相のコカビエルを嘲笑うように動かず、無言で両腕を組んでいる。

「このまま貴様を圧殺してやろうっ!!!」

夜明が動かないのをいいことに、コカビエルは『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』が解除されるまで光を撃ち続けることにしたようだ。威力、量が跳ね上がった光が夜明目掛け射出される。しかし、『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』を纏う夜明は相変わらず無傷だった。光の直撃で舞い上げられた砂煙で夜明の姿が見えなくなる。

「ぜぇ……ぜぇ……」

二分間、光の豪雨を放ち続けていたコカビエルは肩を大きく上下させて朦々と立ち上る砂塵の中央を見ていた。一分ほど経っても変化は見られない。

「……は、はははははは!! 死んだか英雄龍!? あれだけの大言を吐いておいてこの様か!! 大した道化だよお前は!!」

口を大きく広げて哄笑するコカビエル。うるさいなぁ、とコカビエルに不機嫌な視線を送りつつ、エジソンはリアス達を振り返った。

「君達、今から瞬きしない方が良いよ。特に聖魔剣使い君とデュランダル使いちゃんは」

どういうことだ? 疑問を乗せた視線に答えず、エジソンは視線を戻す。

「君達は運が良い。失われたはずの『最強の幻想(ラスト・ファンタズム)』。その輝きを生きてる内に見る事が出来るんだからね」

砂塵が内側から爆発するように吹き飛んだ。砂塵の中から現れた夜明。その身に『熾天を刺し貫く円環の花槍(ローアイ・ボルグ)』は纏っていない。代わりに一本の長剣を両手で握っていた。刀身から放たれる輝きは黄金。

「貴様、それは……」

リアス達は勿論のこと、聖書に名を連ねる堕天使、コカビエルですら伝承でしか聞いたことのない伝説の聖剣。今は七に砕かれた。それでも放たれるオーラは凄まじい。だが、今彼が持っているものに比べれば蝋燭の火にすら劣って見えた。

「まさか、そんなことが……」

「あ、あぁ……」

祐斗、ゼノヴィアが涙を流しながらその輝きに見入る。現英雄龍、月光夜明が文字通り、全身全霊をかけて編み上げた『最強の幻想(ラスト・ファンタズム)』。人々の願いによって生まれた『栄光』という祈りの結晶。その名は、

「約束された(エクス)……勝利の剣(カリバー)ぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!」






光が咆哮を上げる。限界まで集束、加速された光は究極の斬撃と化して敵を焼き尽くさんと暴風を巻き起こしながらコカビエルに迫る。コカビエルを含めた、その場にいる全員が惚けたように光に見入っていたその時、

『Divide!!』

音声と共に光が一気に勢いを減衰した。それでもコカビエルを消し飛ばすには十分の威力を持っている。

『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide!!!』

音声が響くたびに威力を失っていく光の斬撃。放たれた時とは比べ物にならないほどに威力を減少された斬撃はコカビエルを呑み込む前に何者かによって阻まれた。何者かはコカビエルの前に飛び出すと、光の斬撃を両手で受け止め、凌ぎ切った。

「……驚いたな。あれだけ半減させたのにこれだけの威力を持っているなんて」

『原典には程遠い。が、今代の英雄龍は近い内に原典を超えるだろうな』

「それは楽しみだな、アルビオン」

突如として現れた謎の乱入者。一点の曇りの無い白い全身鎧(プレートアーマー)を纏い、背中からは八枚の光る翼が覗いている。黄金の剣を肩に担ぎ上げ、夜明は好奇の目を向けてくる乱入者に視線を返しながら呟いた。

「白い龍(バニシング・ドラゴン)……」

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