小説『ハイスクールD×D 不屈の翼と英雄龍』
作者:サザンクロス()

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           『家族という名の災難』




授業参観、当日だ。夜明、リアス、アーシアの三人は心なし、何時もより早目に家を出た。若干、リアスの元気がないが、それは授業参観にやってくるであろうサーゼクスと父方が原因だろう。

「……気乗りしないわね」

リアスがため息混じりに呟く。確かにサーゼクスのような家族が授業を見に来ていると考えると、些か緊張するだろう。その上父親まで来るのだから。アーシアと一緒にリアスへ同情の苦笑を浮かべている内にいつの間にか学校へと着いていた。玄関口でリアスと別れ、二人は教室へと向かう。

「ちぃ〜っす」

「お早うございます」

教室に入ってきた二人にクラスメイト達が挨拶する。

「私、こういうの初めてなんで、凄く楽しみです」

初めての経験という事もあり、アーシアは心底楽しそうだ。そんなもんかねぇ、と夜明が頬杖を突いていると、二人へと近づいてくる人影があった。

「夜明、先日はすまなかった」

ゼノヴィアだった。歩み寄ってくるなり、夜明にペコリと頭を下げた。先日、の部分でゼノヴィアが何を言いたいか理解した夜明は少し顔を赤くしながら手を振る。

「ああ〜、いいっていいって。もう気にしてないし。ただなゼヴィ、あぁいうことは止めてくれ。俺の身体が物理的にも精神的にも持たない」

「うん。私もあの時は君の気持ちを考えずに結果を急ぎすぎた。やはり君の言うとおり、物事には段階というものが必要だ」

そこでだ、とゼノヴィアはピッ、と人差し指を持ち上げて見せた。

「私もきちんと段階を踏む事にしたそこでだ、夜明」

両手で夜明の手を握り、ゼノヴィアはとんでもない事を言う。

「私と恋人になってくれ」

一瞬の沈黙の後、

「「「「「「「「「「どぇぇぇぇぇ!!!!!?????」」」」」」」」」」

生徒たちの驚きの叫びで教室が震撼した。当の本人はといえば、返事も出来ずにゼノヴィアに手を握られたまま凍りついている。

「やはり、戦闘でも初手が肝心だからな。まずは恋人になるところから始めよう」

して、返答は? ゼノヴィアに返事を求められても、夜明は固まったままだった。ただ、顔が凄い勢いで赤くなっていってる辺り、意識はきちんとあるらしい。

「だだだだだ、駄目です! 夜明さんとゼノヴィアさんが恋人だなんて……とにかく駄目ですぅぅ!!」

最大級に焦っているアーシアが涙目になって二人の間に割って入る。

「うん、この際だ。アーシア、君も夜明の恋人にしてもらったらどうだ?」

何でもないことのようにこんなことを言える辺り、彼女の剛毅さが窺える。

「よ、夜明さんの恋人……?」

暫し固まった後、

「えへへ……」

顔を棗のようにさせてアーシアは別世界へとトリップしてしまった。アーシアに性知識を吹き込んでいるエロ眼鏡女子、桐生が目の前で手を振ってみるが何の反応も示さない。

「アーシア〜……駄目だこりゃ。んで、月光。あんたはゼノヴィアにどう答えるの?」

桐生の眼鏡のフレームがピカンと光る。それが合図だったかのようにクラスメイト全員の視線が夜明に集中する。あぅあぅ、と訳の分からない言葉を呟いていた夜明が取った行動は……、

「こ、高校生で恋人とか早いと思うんだなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

全力の敵前逃亡だった。あいつ、初心すぎるでしょ、と呆れる桐生。こういう反応が返ってくるのはある程度想像がついていたのか、ゼノヴィアは驚いた素振りも見せずに教室から飛び出していく夜明の背中に声を飛ばす。

「うぅむ、やはり逃げたか。だが夜明、私はそこまで気の短いほうじゃないぞ」

早く返事をくれなきゃ……喰ってしまうぞ。その時のゼノヴィアの目は、得物に飛び掛る前の肉食獣のそれだった、と後にクラスメイトは語る。














親族が来るという訳でもないので、特にこれといったこともなく夜明の授業は何事も無く終わった。英語の教師が生徒たちに紙粘土で粘土細工を作らせるという意味不明な授業が行なわれたが、まぁ置いておこう。休み時間、飲み物を買いに行った夜明とアーシアはリアス、朱乃にばったりと出くわした。

「部長。サーゼクス様は授業に来なすったんですか?」

「えぇ、父と一緒に」

どんな授業だったのか気になる。そう思わざるを得ない表情をリアスは浮べていた。夜明が紙粘土のことを話していると、ひょっこり祐斗が現れた。

「あら、祐斗くんもお茶?」

朱乃の問いに首を振り、祐斗は廊下の先を指差す。

「いえ、何やら魔女っ子撮影会をしてると聞いたもので。それで少し見に行こうかと」

魔女っ子? 祐斗の返事に夜明は勿論、リアスさえ首を傾げていた。





カシャカシャ!

リアス一行が廊下を歩いていると、祐斗のいう件の一団が見えてきた。フラッシュをたき、カメラを持った男共が何かを撮影している。何を撮っているかは、今いる位置からは見えなかった。少し見てきます、と夜明は一人人垣を掻き分け、何かが視認できる所まで移動する。そして彼が見たのは、

「……何ぞこれ?」

見た目、相当な美少女が何かのアニメキャラの格好をしていた。アニメというのを余り見ない夜明にはさっぱりだったが、周囲の男達が熱心に写真を撮ってるということはそれなりに人気のアニメキャラなのだろう。ノリノリでスティックを回しながらポーズをとってる辺り、彼女も今の状況を楽しんでるに違いない。

「部長達にどう説明すりゃいいんだ……」

夜明の心配は杞憂に終わる。人垣を通り抜けてリアスが隣にやってきたのだ。

「なっ!」

「え、何で驚いてるんですか部長?」

まさかの知り合い? 訊ねようとしたら、騒ぎを聞きつけてやってきたのか、生徒会の匙が遠くから走ってきた。

「オラオラ! 学び舎の廊下で何やってるんだあんた達!」

彼に続き、生徒会女子メンバーも。

「ほら、解散解散! 今日は公開授業でただでさえ忙しいんだから、無闇に騒ぎを起こさないでくれ!」

カメラ男達を蜘蛛の子のように蹴散らしていく。数分としない内に男達はこの場を去っていった。残るは夜明達と匙の生徒会メンバー、そしてコスプレ少女だけ。

「あんたもそんな格好しないでくれよ。仮にもここは学校なんだぜ? それに相応しい服装ってのがあるだろ」

「えぇ〜、だってこれが私の正装だもん☆」

語尾に☆が見えたのは夜明だけでは無い筈だ。夜明は目の前のコスプレ少女に軽く殺意が涌いた。匙も心境は同じらしく、ギリギリと歯を鳴らしている。リアスを確認すると、匙はさっと頭を下げた。

「リアス先輩、ちょうど良かった。実は今、魔王様と先輩のお父さんを案内してたところなんですよ」

匙が後ろを振り返ると、会長ソーナ・シトリーが紅髪の男性二人を連れて歩いてきた。

「何事ですか匙? 問題は簡潔に解決しなさいといつも言って……」

そこまで言葉を続けたところでソーナはコスプレ少女に気付き、見事に固まった。

「ソーナちゃん、見つけた☆」

ソーナを見るなり、コスプレ少女は彼女に抱きついていく。何やら意味不明な展開に夜明は勿論、匙も対応に困って首を傾げていた。ふとあることに気付き、夜明は匙をちょいちょいと手招きする。

「(何だよ月光?)」

「(いやな。会長さんとあのコスプレ娘、よくよく見ると結構似てないか?)」

言われてみれば確かに……。二人して首を捻っていると、ソーナが連れてきた男性の一人、サーゼクスがコスプレ少女に声をかけた。

「セラフォルー、君もこっちに来ていたのか?」

セラフォルー。その名に凄い聞き覚えがあり、夜明は反射的にリアスを見ていた。

「あなたの予想通りよ、夜明。この方は現四大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタン様よ」

「やっぱりかぁ……」

ある程度覚悟してたとはいえ、やはり真実を知った時の衝撃は凄まじいものだ。軽い眩暈を感じ、夜明は顔に手を押し当てため息を吐く。

「セラフォルーさま、お久しぶりです」

「おひさ〜、リアスちゃん☆ 元気してた?」

こいつ本当に魔王? と疑いたくなるような可愛らしい口調。リアスも反応に困り、顔を少しばかり引き攣らせている。

「お、おかげさまで。やはり、今日はソーナの授業参観に?」

「そ☆ ソーナちゃんったら酷いのよ。今日のこと黙ってたの。お姉ちゃん、ショックの余り、天界に攻め込んじゃいそうになっちゃった☆」

「んな理由で天界に攻め込むなアホ」

ピコッ、と誰かがピコピコハンマーでコスプレ少女、もといセラフォルーの頭を叩く。頭を押さえ、ぷんスコしながらセラフォルーが振り返ると、そこには眠たげな笑みを浮かべる太陽が立っていた。

「よ、セラ」

「太陽! 久しぶり〜☆」

そのままイェ〜とハイタッチ。

「サーゼクスの旦那。太陽の奴、レヴィアタン様のことをセラって呼んでますけど、あれって」

「あぁ、太陽とセラフォルーはかなり仲が良いよ。二人とも主人公が変身するタイプの作品が好きだからね」

太陽はヒーロー物、セラフォルーは魔法少女物、という風に多少のベクトルの違いはあるが。

「太陽もやらない? 楽しいわよ☆」

「う〜ん、コスプレねぇ〜。やっぱり私は魔法少女よりもヒーローだな」

変身! とヒーローっぽいポーズを取る太陽。それに合わせ、セラフォルーも可愛らしくポーズ。何とも仲の良い事だ。その後、太陽がセラフォルーに夜明とアーシアのことを紹介した。主の役目を取られてしまい、リアスは若干涙目だ。

「あら、グレモリーのおじさま?」

「ふむ、中々に奇抜な格好ですな、セラフォルー殿。魔王としてはどうかと思いますが……」

「ご存じないんですのおじさま? これがこの国での正装なんですよ☆」

勿論、大嘘だ。しかし、日本に詳しくないリアスの父、グレモリー卿は信じてしまう。

「ははは。父上、信じてはいけませんよ」

軽すぎる会話だ。こんなのが悪魔のトップなのか、と夜明は軽い頭痛を覚える。もしかして、こんなのが後二人もいるのか、と思うのも無理ないことだろう。

「うぅ、もう堪えられません!」

と、ここで顔を真っ赤に染めていたソーナが走り出した。規律等に人一倍厳しい彼女にとって、身内が魔法少女の格好をしている、それも自分が生徒会長を勤めている学び舎で。堪え難いの域を超えて拷問だろう。

「待って、お姉ちゃんを置いてどこ行くのソーナちゃん!」

「ついてこないで下さい!」

追おうとするも、ソーナの拒絶の言葉にセラフォルーは滂沱の涙を流す。

「いやぁぁぁぁん! お姉ちゃんを見捨てないでソーナたぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」

「『たん』づけは止めて下さいとあれ程……!」

「……仲の良い姉妹だな」

ボソリと呟く夜明の隣、匙はどうしたら良いか分からずオロオロしていた。追いかけたほうが良い、と夜明に背中を押されて匙は二人が消えていった廊下を走っていく。しかし、魔王とその妹が鬼ごっこ。ふとした拍子に学校が消し飛ばないのを祈るばかりだ。

「はは、今日もセラん家は平和だな」

「平和すぎて俺は泣きそうだぜ……そういや太陽。お前、授業中いなかったらしいけど何してたんだ?」

ばっくれた、と太陽は当たり前のことのように返す。呆れた表情を浮べる夜明の横ではサーゼクスに幼少時の渾名を『たん』付けで呼ばれ、顔を赤くしているリアスの顔をグレモリー卿が撮影していた。

「ふふふ、魔王様と、その御家の方には面白い共通点があるんですよ」

朱乃が心底楽しそうに微笑んでいる。

「共通点、っすか?」

「えぇ。魔王様は皆、例外なく面白い方ばかりなんです。そして、その家族の方は真面目な者ばかり」

差し詰め、フリーダムな兄弟を反面教師にしたのだろう。魔王の家族の苦労を考え、夜明は思わず泣きそうになる。熱くなる目頭を押さえる夜明にグレモリー卿が歩み寄ってきた。

「月光夜明くん、一つ聞きたい事があるんだが」

「何ですか?」

「君のご両親はどこにいるんだね? 娘を預かってもらってる以上、一言挨拶をしておきたいんだが」

グレモリー卿は夜明の親の姿を視線で探している。

「あぁ、そう言えば私が家を訪ねた時も姿が見えなかったね。どこか、外国にでも働きに行っているのかい?」

更にサーゼクスも加わってきた。あぁ〜、と困ったように夜明は頭をポリポリ掻く。それから苦笑いを浮べて二人に肩を竦めて見せた。

「すいません。俺の両親、もう死んでるんです」

頭を下げ、夜明は謝罪する。サーゼクスとグレモリー卿の顔が一気に曇った。知らなかったとは言え、自分達は聞いてはいけないことを訊ねてしまった。謝ろうとする二人を夜明は手で制す。

「あ、いえ別にいいですよ、全然気にしてませんし。二人が死んだのだって、もう十年以上前のことですし」

それに、と夜明は穏かな微笑を浮かべる。

「それに、今は部長やアーシアみたいな素敵な家族がいますしね」

夜明の言葉にリアスとアーシアは顔を赤くさせる。しかし、その表情はどこか嬉しそうだ。サーゼクスとグレモリー卿は一瞬、驚いた表情を浮べたが、すぐににっこりと笑顔を作った。そしてすぐに額を突き合わせて何やら小声で話し始める。

「(あそこまではっきりと家族、と断言する辺り、やはり彼は)」

「(短慮はいけません、父上。夜明くんはアーシア嬢のことも家族と言っていました。しかし、リアスに良い感情を持っているのも確かでしょう。ここは焦らず、ゆっくりと外堀を固めていって……)」

何やら不穏な事を熱心に話し込んでいた。何の話だ? とそんなこととは露知らず首を傾げる夜明の肩を叩きながら太陽は豪快に笑う。

「はっはっは! 時々、お前は狙ってやってんじゃねぇかっていう台詞を言うな、夜明! はっはっは!」

訳が分からず、夜明はきょとんとするだけだった。














「おぉ、朱乃嬢がちゃんと映っているな」

「父上、他の眷属の者達の映像もキチンと撮れていますよ!」

テレビに映し出されるリアス・グレモリーとその眷属達。月光家の夕食後、リビングは今日の授業参観観賞会場となった。開催者は言わずもがな、サーゼクスとグレモリー卿だ。

「ふぅん。使い魔に俺達(眷属)のこと、撮影させてたのか」

よぅばれんかったな、と夜明は妙な所に感心する。彼の両隣ではリアスとアーシアが顔を真っ赤にさせて「早く終われ早く終われ!」と壊れたレコーダーのように繰り返し呟いていた。

「これは、かつて無いほどの地獄ね……」

項まで赤く染め、リアスは羞恥の余り全身を震わせている。悪魔なのに地獄? なんて突っ込みは出来なかった。そんな妹の様子にはお構いなしでサーゼクスはハイテンションで夜明に呼びかける。

「見てくれ夜明くん! うちのリーアたんが先生に指されて答えているんだ!」

「おいあんた、酔ってるのか?」

思わず敬語を忘れてしまうほどのぶっ飛びぶりだった。この場に太陽がいたら、本気で笑い死にしていただろう。

(レヴィアタン様が来たときの会長さんも、今の部長と同じ心境だったんだろうなぁ)

そんなことを暢気に考えていると、リアスが顔を手で覆い隠していた。

「もう耐えられないわ! お兄さまのスカポンタン!」

走ってリビングから飛び出していくリアス。その原因となったサーゼクスはどこからともなく現れたグレイフィアにしばかれている。リアスのことが心配になった夜明はアーシアにちょっと行ってくる、と言い残してリビングを出て行った。





夜明の寝室、というか実際は三人の寝室と化してしまった部屋の前にリアスはいた。膝を抱え、不機嫌そうに頬を膨らませて廊下に座り込んでいる。

「あぁ〜……とりあえず、俺の部屋入ります?」

無言で頷くリアス。部屋の戸を開けるとリアスは中に飛び込み、ベットにダイブして頭から布団を被ってしまう。頭を掻きながら夜明は後ろ手に扉を閉める。

「あはは、随分と愉快なご家族なんですね」

「……」

返事は無い。軽くため息を吐き、夜明はベットに背を預けるように腰を下ろした。

「こんなこと言ったらあれですけど、俺、部長のこと羨ましいです」

あんな素敵な家族がいて、と夜明は一人独白を始める。

「ほら、俺って両親いないじゃないですか? だから、こういう授業参観の日とか、俺の家だけ誰も来ないんですよ。じじいはじじいで好き勝手世界を飛び回ってましたし」

だから……羨ましいです、と夜明は繰り返す。中学生時代、確かに友達はいた。しかし、帰るべき場所で自分を出迎えてくれる家族は一人としていなかった。

(それが今となっては部長やアーシアと一緒に暮らしている。世の中、どうなるか分かんないもんだなぁ……)

遠い目をしていると、柔らかな温かさ夜明を包んだ。見れば、ベットの上からリアスが夜明の首に優しく両腕を回している。

「部長……」

「貴方の家族なら、ここにいるでしょ?」

リアスの言葉に夜明は言葉を詰まらせる。やがて、嬉しそうに笑いながらはい、と答えた。僅かに両腕の力を強め、リアスは夜明の耳元で囁く。

「夜明……貴方、幸せ?」

予想だにしなかった質問に夜明は返答に窮した。。構わず、リアスは続ける。

「私は幸せよ、貴方と出会えて。私の一生で最大の幸福が何かって聞かれたら、私は迷わず貴方と出会ったことだって言うわ……例え、貴方と共に歩む道の先に二天龍が立ちはだかっていようと」

「俺も、幸せです。今の生活には部長や皆がいますからね」

はにかみながら夜明はリアスに笑って見せた。リアスは喜色を浮かべながら夜明の頬を撫でる。不意にリアスの手が止まり、ゆっくりと夜明の顎を掴んだ。有無を言わさぬ力で顔を自分の方に向ける。夜明の視界に飛び込んできたリアスの顔がゆっくりと大きくなっていった。

(はて、こんな感じの絵面、どこかで見たことがあるような……)

確かあれは、プールの用具室でゼノヴィアに迫られた時と同じ……。って、キスぅ!? と驚愕した夜明は慌てて避けようとするが、既にリアスの唇は彼の唇に触れていた。そのままリアスは夜明の口内に舌を滑り込ませようとするが、それよりも早く夜明は謎の力に首を引っ張られる。

「……ちょっとアーシア、夜明との愛し合いを邪魔しないでちょうだい。折角、前からしたかったディープキスが出来そうだったのに」

残念さと不機嫌を半々にした表情でリアスは夜明の首根っこを引っ張ったアーシアを睨む。涙目になりながらアーシアはリアスに抗議の視線を向けていた。

「うぅ……部長さんばかりずるいです!」

「何事も速さが大切。朱乃やゼノヴィアから学んだ事よ」

何を学んだんだ? 小一時間問い詰めたい夜明だった。睨み合うリアスとアーシア。そこに何時の間に現れたのか、銀髪メイドが介入してくる。

「お二人ともそこまで。夜明さまの前で喧嘩するのは如何なものかと思いますよ?」

「そうだね。喧嘩は良くないね」

うんうん、と頷きながらサーゼクスまで部屋の中に入ってくる。リアスと話があるらしく、こっとに来たらしい。

「それでお兄さま、話とは?」

「うむ……リアス、もう一人の『僧侶(ビショップ)』について話し合おう」

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