小説『ハイスクールD×D 不屈の翼と英雄龍』
作者:サザンクロス()

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           『英雄龍VS白龍皇』




「今のはコカビエルの時に見たものと同じなのか?」

イスカンダルが降らせたと思われる雷に打たれた夜明を見て、ヴァーリはコカビエル戦の時の夜明を思い出していた。だとすれば、夜明はまた一つ何かしらの強大な力を得た事になる。ヴァーリは嬉々として顔を兜で覆った。

「さぁ、戦おうか月光夜明。カテレア、邪魔はするなよ。邪魔になると判断した場合、俺は君を容赦なく殺す」

「相変わらずの戦闘狂っぶりですね、ヴァーリ。言われずとも邪魔はしません。私は」

ヴァーリの発言にため息を吐きながらカテレアはアザゼルを睨む。アザゼルは一本の短剣を取り出す。ヴァンデュークとの衝撃の再会から回復したのか、表情は好戦的な笑顔を浮かべていた。

「はっ、俺の相手はお前か。俺は構わないぜ。『深紅の死神(スカーレット・デスサイズ)』との戦いで拾った命をむざむざ捨てるお前の考えは理解しかねるが」

「舐めるな!!」

オーフィスの蛇を呑んでオーラを激増させたカテレアは極大のオーラを放っている。クレアが諌めようとするが、それを無視しアザゼルは口角を吊り上げたまま、ある言葉を呟いた。

「禁手化(バランス・ブレイク)」

閃光が走り、その場にいる者達の目を晦ませる。光が止むと、そこには黄金の全身鎧(プレートアーマー)を纏ったアザゼルが立っていた。鎧は生物的なフォルムをしている。例えるなら、ドラゴン。クレアは目を剥いて驚いていた。

「その姿、そのオーラ。アザゼル、あなたは『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファーブニルの力を人工的に神器(セイグリッド・ギア)化したのですか!? そしてこのは禁手化(バランス・ッブレイカー)は白龍皇と赤龍帝、英雄龍のそれに似ている……!」

「『白い龍(バニシング・ドラゴン)』と他のドラゴン系神器(セイグリッド・ギア)を研究して作り上げた、俺の傑作人工神器(セイグリッド・ギア)、『堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)』。それの擬似的禁手(バランス・ブレイカー)状態、『堕天龍の鎧(ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー)』だ」

どこか少年のような表情を浮べてアザゼルは誇らしそうに胸を張り、背中から十二枚の黒翼を展開させ、巨大な光の槍を作り出す。放たれるドラゴンのオーラは尋常ではなく、同じドラゴン系神器(セイグリッド・ギア)、匙の『黒い龍脈(アブソーション・ライン)』の比ではなかった。

(『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』って何のことだ?)

(五大龍王の一角よ。アザゼルがヴリトラのことを『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』と呼んでいたであろう? 他にも『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマット、『西洋龍童(ミスチバス・ドラゴン)』)玉龍(ウーロン)、『終末の大龍(スリーピング・ドラゴン)』ミドガルズオルムがいる。といっても、ヴリトラは大昔に封印されたし、ファーブニルも人工神器(セイグリッド・ギア)にされたところを見ると、封印されたようだな。本来、龍王は六体いるのだがなぁ)

〔あ、ちなみに今のアザゼルのあれは正確な禁手(バランス・ブレイカー)じゃないよ。神器(セイグリッド・ギア)を暴走(バースト)させて強制的に覚醒させているんだろうね。あんなことをしたら戦闘の後、あの神器(セイグリッド・ギア)が壊れると思うんだけどなぁ……〕

五大龍王の説明をするブレイズハートに続き、エジソンがアザゼルの『堕天龍の鎧(ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー)』について考察を述べていた。元開発者であるだけあって、かなり興味がある様子だ。アザゼルは光槍の穂先をカテレアへと向ける。

「そんじゃま始めるか。いっちょ、ハルマゲドンの再現と行こうぜレヴィアタン」

「上等です!!」

瞬時に舞い上がった黄金の龍と終末の怪物が上空でぶつかり合い始める。光槍と極大の魔力が派手な音を立てて衝突する。

「アザゼルも戦い始めたことだし、俺たちも始めないか、月光夜明?」

アザゼルとカテレアの戦いに当てられたのか、ヴァーリは高揚を隠そうともせずに夜明に問う。戦いたくて戦いたくて仕方が無い、といった様子だ。そうだな、と応じながら夜明は背中から三翼を広げ、右手に銀翼を創り出した。

「彼方にこそ栄え在り(ト・フィロティモ)!!!!!」

叫びながら夜明は虚空を薙ぐように銀翼を振り抜く。すると、夜明の周囲に何十もの武具が顕現し始めた。次々に出現する武具の数にヴァーリは感心したようにため息を吐く。

「まずは様子見といったところかな? しかし月光夜明。神器(セイグリッド・ギア)ならともかく、ただの武器では俺はたお……」

せない、とヴァーリは言葉を続けることが出来なかった。夜明が生み出した武具。数百を超えて尚、止まる気配すら見せずにヴァーリを包囲するように増え続けている。その数は優に千を超えていた。

「かの征服王、イスカンダルは己が軍勢の全ての勇者に同じ武具防具を与え、結束をより強固なものとしていいたと言われている……」

リアスが誰に言うでもなく一人呟く。征服王、イスカンダルの力、『彼方にこそ栄え在り(ト・フィロティモ)』。有する能力は武具の大量生産。全ての武具が神器(セイグリッド・ギア)や聖剣のように優れているわけではない。だが、確かな実体を持っている。これら全てが襲い掛かってきたら……。

『っ!! ヴァーリ、気を抜くな! あの武具の中には龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)を纏っているものが何個かあるぞ!!』

『白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイング・スケイルメイル)』の各部にある宝玉が輝く。アルビオンからの報告を聞き、ヴァーリはすぐに思考を巡らし始めた。だが、打開策を思いつく前に夜明が動いていた。

「行け!!!!!」

夜明が銀翼を振り下ろすのに呼応し、全ての武具がヴァーリへと殺到する。ヴァーリはすぐさま渾身の魔力弾を放ち、四方八方から壁のように迫ってくる武器群の一部分に穴を穿ち、そこから光速ともいえるスピードで飛び出した。武器群は方向転換し、唸り狂う蜂のようにヴァーリを追い立てる。

「何て速さだよ!!」

ヴァーリは宙に光の線を描きながら飛び回り、追いかけてくる武器群に魔力弾を放つ。何十本かを破壊したが、武器の総数から考えると微々たるものだった。ちぃ!! と毒づき、ヴァーリは武器群に向けて片手を伸ばす。

『Divide!!』

音声と共に武器群の数が激減する。白龍皇の力が半減させたのだ。ヴァーリは更に武器群の数を減らそうとするが、それよりも早く武器群が周囲へと散らばる。瞬時にヴァーリを球状に囲み、全方位から襲いかかった。

「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」

瞬間、鼓膜を叩き破らんばかりの爆音が轟く。空中に生まれた炎の大輪を夜明は無言で見上げていた。

「……派手な攻撃だったな。だが、その程度では俺には届かないよ」

煙がゆっくりと晴れると、そこには無傷のヴァーリが浮かんでいた。鎧に所々爆発による焼け焦げた跡が見られるが、本体にダメージは一切無さそうだ。夜明は困ったように頭を掻く。

「おいおい、全く効いてねぇじゃん。どうなってるんだよイスカンダル?」

{あの白龍皇の小僧がぶっ飛びすぎてるだけだわぃ。それにお前自身も余の『彼方にこそ栄え在り(ト・フィロティモ)』の力を完全に発揮できてる訳ではないしのぅ}

ですよね〜、と何時の間にかアンリミテッド・ブレイド内に戻っていたイスカンダルに答えながら夜明はヴァーリを見やる。兜で表情こそ窺えていないが、鎧から放たれているそれは期待に似たものだった。

「どうした、月光夜明? まさかこれで終わりな訳ないよな? もっと俺を楽しませてくれ!!」

はっ、と鼻で笑いながら夜明は首を捻り鳴らす。

「まぁ、今のだけでお前を倒せるなんて毛ほども思ってなかったさ……いいぜ、見せてやる。今の俺の全力を」

刹那、黄金の輝きが夜明を包み込んだ。栄光という名の輝きが夜明の身体に収束し、鎧を成していく。光が晴れ、そこに立っていた夜明の姿は全身を黄金の鎧で包んでいた。アザゼルの『堕天龍の鎧(ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー)』のようなドラゴン的なフォルムではない。精巧な意匠が施されたもので、鎧の随所からは鋭角的な紅の棘が生えている。

「英雄龍の羽(アンリミテッド・ブレイド・フェザー)、『勝利に死翔せし穿ちの剣(ゲイル・カリバー)』って感じか?」

『新しき時代(ネクスト・ジェネレーション)』によって生み出された、『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』と『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)』を組み合わせた神器(セイグリッド・ギア)。感覚を確かめるように身体を動かす夜明。確認を終え、右手を真横に突き出す。

「アスカロン!!」

主に名を呼ばれた龍殺しの聖剣は光となって夜明の右手に現れ、瞬時にその形をなした。アスカロンを頭上に持ち上げ、斜めに振り下ろす。それだけの動作で夜明の右側の地面が大きく削り飛んだ。兜の中で目を爛々と輝かせるヴァーリにアルビオンが警告する。

『ヴァーリ、絶対に奴の攻撃に当たるな。当たる=死ぬと考えておけ』

「それほどのものか?」

『組み合わせが凶悪すぎる。エクスカリバーの威力にゲイ・ボルグの心臓を貫く因果の逆転現象。その上、龍殺しの聖剣アスカロン……ヴァーリ、とにかく逃げ回れ。今の奴にはあの鎧を持続させるだけの力はないはずだ。奴の時間切れを待ち、反撃の時を待つんだ』

アルビオンのアドバイスは的を射ている。しかし、頭でアルビオンの正しさを理解していても、現白龍皇は首を縦に振らなかった。

「逃げ回れ? 時間切れを待つ? 笑えないな、アルビオン。俺に、ヴァーリ・ルシファーに無様を晒せというのか?」

『違う! 俺が言いたいのは』

それ以上は何を言っても無駄だ、とヴァーリはアルビオンの言葉を遮る。

「彼は全力を賭して俺に挑もうとしているんだぞ」

で、あるならば、こちらも全力を以って迎え撃つのが白龍皇としての、男としての礼儀!! ヴァーリは背中の光翼を広げ、迎撃の構えを見せる。夜明は三翼を広げ、ヴァーリ目掛け突貫した。

(早い!)

だが、自分に比べればかなり劣る。ヴァーリは振り抜かれたアスカロンをかわし、擦れ違い様に夜明の背へ肘鉄を叩き込んだ。もんどりを打つが、夜明はすぐに体勢を立て直してヴァーリに向かっていく。ヴァーリはその場から動かず、夜明の突撃に合わせてカウンターの拳を放った。夜明はヴァーリのカウンターを左腕で防ぐ。

(重い……!)

拳を受け止めた左腕がメキメキと剣呑な音を上げる。黄金の鎧もたったの一撃で罅が走った。夜明は左腕を大きく振ってヴァーリを弾き飛ばし、アスカロンを振るった。ヴァーリは上空へと舞い上がってアスカロンを避け、夜明に魔力弾の嵐を放つ。

「ちぃっ!!」

舌打ちしつつ夜明は目の前に何十枚もの盾を出現させて魔力弾を防いだ。盾と魔力弾がぶつかり合い、派手な爆風と轟音を撒き散らす。夜明はヴァーリへと突っ込むべく、黒煙の中へと飛び込もうとするが、一瞬で背後に回ったヴァーリの一撃を喰らって地面へと落下した。

(早ぇなおい!!)

内心で毒づきながら夜明は地面に激突する寸前、三翼を力の限り羽ばたかせて地面との熱烈なキスを回避する。ヴァーリは追撃に魔力弾を放った。それに合わせ、夜明はアスカロンから光の斬撃を飛ばす。光の斬撃はあっさりとヴァーリの魔力弾を斬り裂き、ヴァーリへと飛翔する。

「いくら龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)だからってこうも容易く俺の攻撃を切り裂くか!!」

ヴァーリが光の斬撃を避けた瞬間を狙い、夜明は一気に加速する。アスカロンで鎧ごと叩き切ろうとするが、アスカロンを握る右手を掴まれてしまった。もがく夜明。

『Divide!!』

『白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイング・スケイルメイル)』の宝玉が輝くと同時に音声が聞こえ、夜明の力とオーラが激減する。驚く夜明の腹部にヴァーリの拳が打ち込まれた。腹から嫌なものがこみ上げ、口の中に鉄の味が広がる。更にヴァーリは夜明を殴り飛ばし、地面へと叩き付けた。

「……今のが、白龍皇の半減の力か……! 敵の力を半減させ、己の力に変換する……」

衝撃で舞い上がった砂塵の中、夜明は口内にある血の塊を吐き出す。腹部と頭部への一撃、背中から地面に激突したせいで少し身体を動かすだけでも激痛が全身に走った。夜明は歯を食い縛って立ち上がり、アンリミテッド・ブレイドを無理矢理バーストさせ、半減させられた力を強制的に元に戻す。夜明の身体からオーラと血が噴出す。

『奏者よ! そんなことをしては奏者の身体が』

「こんだけの無理をしなくちゃ勝てないだろうが!!」

とは言っても、無理だけで勝てる相手じゃないのも確かだ。パワー、スピード、ドラゴンの力の扱い。何もかもが格上。格上の相手を下したことは何度もある。しかし、今回の相手は今までの敵とは別次元だ。

(考えろ! どんな強敵であろうと、突き刺せる弱点は必ずある……!!)

不意に夜明の頭の中にある考えが浮かぶ。夜明はブレイズハートとエジソンに己の考えを伝える。最初、二人は驚きを露にしていたが、徐々にブレイズハートは呆れ、エジソンは感心したように口笛を吹く。

(奏者、お主はそんな突拍子もないことを……)

〔でも、相手はブレイズハートと同じドラゴンだし効果はあるかもしれない。何より新しい事を試みようとするその心意気が気に入った。やってみよう!〕

ちなみにイスカンダルは夜明から相談されなかったことに軽く拗ねていた。夜明が彼に相談しなかった理由は、

(お前みたいな脳筋に聞いても根性論が返ってくるだけだろうからな)

{……相棒、余だって傷つくんだぞ}

イスカンダルの呟きをを無視し、夜明は砂塵の中から飛び出す。右手にアスカロン、左手に蒼星を握り、ヴァーリと相対した。にやっと笑い、ヴァーリが突進を仕掛けてくる。夜明はアスカロンで打ち払おうとするが、ヴァーリは夜明の一撃を避けて腹部目掛け拳を放った。

「同じ攻撃は喰らわねぇよ!!」

その一撃を予想していた夜明は蒼星でヴァーリの拳を防いでいた。相当な強度で創造されたらしく、蒼星はヴァーリの拳を受けても折れはしない。

「いい判断だ。だが、防ぐだけでは意味が無い!!」

『Divide!!』

白龍皇の半減の力が発動する。それと同時に夜明はヴァーリの拳を防いでいる蒼星を爆発させた。その瞬間、

「ッッッッ!!!!???? ガアアアアアァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!」

『ぐおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!??????』

ヴァーリとアルビオンが苦悶の叫びを上げる。『白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイング・スケイルメイル)』の各部にある宝玉が赤、青、緑、黄といった感じにしっちゃかめっちゃかに明滅を繰り返す。血を吐き出すヴァーリを、夜明は爆発のダメージに顔を歪めながらも笑って見ていた。

「……どうだよ、龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のオーラを己の力にした気分は!?」

さっき、ヴァーリが半減させたのは夜明のオーラではなく、蒼星の中に込められていた龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のオーラだ。半減の力が発動すると同時に蒼星を爆破し、内包させていた龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のオーラを放つ。そうすることで夜明はヴァーリに自分のオーラではなく龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のオーラを半減させ、力に変えさせたのだ。

『ドラゴンの天敵である龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)を力に変換すれば、白龍皇に大きなダメージを与えることが出来る。奏者の目論見は見事的中した訳だが……これが外れたらどうするつもりだったのだ?』

ブレイズハートが若干の非難を込めた声で夜明に問う。至近距離で龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のオーラを爆発させるのだ。覚悟を決めてるとはいえ、自身にもかなりのダメージがあるのは否めない。

「そん時はそん時でどうにかしたさ……さぁ、これでダメージ的には五分五分って感じか?」

「げふっ! まさかアルビオンの半減の力を逆手に取るとは……やはり君は面白い!」

龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)で内側をずたぼろにされて尚、白龍皇ヴァーリの瞳からは戦意が失われない。戦闘狂が、と笑いながら夜明はアスカロンを構えた。咆哮を上げ、ヴァーリに肉薄する。アスカロンが振り下ろされる瞬間を狙い、ヴァーリは夜明の懐に飛び込んだ。右手を殴られ、アスカロンを取りこぼす。すぐさま夜明は後ろに飛び退き、龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のオーラを纏わせた銀翼を創り出す。夜明に追撃をかけようとするヴァーリ。

「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」」

二体の龍の咆哮が交差する。ぶつかり合う拳と剣。ビキビキ! と『白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイング・スケイルメイル)』の右腕部分に亀裂が走った。競り勝つ事を確信した夜明は更に銀翼へ創造した龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のオーラを流し込む。だが、

バギィン!! 何の前触れも無く銀翼の刀身が粉々に砕け散った。驚愕しながら手元に残った銀翼の柄を夜明は呆然と見ていた。腹部に衝撃。ヴァーリの拳が夜明の芯に響く。血反吐を吐きながら吹き飛び、夜明は地面を二転三転し、そのまま動かなくなった。

「がはっ! ……何で、競り負けた? 龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)が不完全だったのか?」

『それもあるが、銀翼自体が白龍皇の攻撃に耐えられなかったのだ。それよりも早く起きろ奏者!! 奴が来るぞ!!』

ブレイズハートが叫ぶも、夜明は立ち上がることが出来ずにいた。『勝利に死翔せし穿ちの剣(ゲイル・カリバー)』の鎧も霧散していく。肩で息をしながらヴァーリは地面へと降り立ち、夜明へと歩み寄る。

『油断するなよヴァーリ。さっきの龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のダメージがかなり響いているぞ。早く回復せねば』

「分かっているさアルビオン。でも、撤退する前に未来のライバル殿の顔をよく見ておきたくてね」

夜明の傍らに歩み寄ったヴァーリは仰向けに横たわる夜明の胸倉を掴み、ゆっくりと持ち上げた。ぐったりと頭を仰け反らせている夜明の顔を覗き込もうすると、夜明と視線がかち合う。すると、ヴァーリの身体に異変が起こった。

「っ!!??」

『どうしたヴァーリ!?』

「身体が……動かない」

辛うじてそれだけを搾り出す。にやぁっ、と口元に笑みを浮かべる夜明の左目が銀色に輝いていた。数日前の訓練の時、ギャスパーがボールを停止させた時と同じ様に。

「創造したというのか!? この土壇場で、『停止結界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』を!?」

「かなり偶然の色が濃いけどな。俺もお前をぶっ倒すために必死だったんでな」

代償は大きかったけどな、と夜明は囁いた瞬間、彼の右眼球が内側から爆ぜ、血が噴出した。眼科からボタボタと血を垂らしながらも夜明は満足げに頷く。この正念場でヴァーリに決定的な隙を生ませたのだ。さて、と夜明は胸倉を掴むヴァーリの手を剥がした。両手に光り輝く籠手、『猛き極光(ベオウルフ)』を創造する。ベオウルフからは光と一緒に龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)のオーラが溢れていた。

「今までのお返しだ。熨しつけて返させてもらうぜ」

「やはり、君は俺のライバルに相応しい」

嬉しそうなヴァーリの呟きに応じず、夜明はベオウルフをヴァーリの顔面に叩き込んだ。龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の力が『白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイング・スケイルメイル)』を破壊し、露になったヴァーリの素顔を『猛き極光(ベオウルフ)』の光が焼く。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!」

夜明の拳は一撃に留まらず、機関銃のようにヴァーリの身体を貫いた。その度に『白龍皇の鎧(ディバイン・ディバイング・スケイルメイル)』が脆い飴細工のように壊れ、剥き出しになったヴァーリの素肌が光に焼かれ嫌な臭いを放つ。力の続く限り夜明はヴァーリを殴打し続け、最後は大きく腕を引いてヴァーリの顔面に渾身の拳を叩き込んだ。

「が、はぁ……!!」

吹き飛ぶヴァーリ。全身から肉の焼けた嫌な臭いを放つ黒煙を昇らせ、派手に地面を転がってそのまま動かなくなる。ヴァーリへのラッシュに全身全霊をかけていた夜明もヴァーリを殴った勢いを支えられず、そのまま前のめりにぶっ倒れた。

「「……」」

両者、動かず。勝敗や如何に?

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