『英雄龍の鎧(アンリミテッド・ブレイド・スケイルメイル)』
禁手(バランス・ブレイカー)、『英雄龍の鎧(アンリミテッド・ブレイド・スケイルメイル)』を纏った夜明は背中の三翼を大きく羽ばたかせる。放たれたオーラが周囲を吹き飛ばし、夜明を中心とした小型のクレーターを作り上げた。
「こいつが禁手(バランス・ブレイカー)か……」
身体中に力が行き渡っている。道理でヴァーリが強かったわけだ、と夜明は納得したよう一人に頷いていた。
『奏者、まずはおめでとうと言うべきか?』
「サンキュ、ブレイズハート。調子はどうだ?」
『時間にして一日は禁手(バランス・ブレイカー)を保っていられるようだ。タンニーンとの修行の成果がでたな。ただ、創造する神器(セイグリッド・ギア)のグレードが上がれば上がるほど、制限時間が短くなっていくぞ。それと、神滅具(ロンギヌス)も創り出せるようになったようだ』
マジか、と驚く夜明。ただ、現状の夜明が神滅具(ロンギヌス)を創造すると禁手(バランス・ブレイカー)の制限時間が極端に短くなる、とブレイズハートから注意が飛んでくる。了解、と頷きながら夜明は黒歌へと向き直った。
「さぁて、反撃開始と行きますか!」
「ついに至ったか! 懐かしい波動だ! 相変わらず、翼のように自由で空のように澄み切ったオーラだな!!」
空中でタンニーンが夜明の禁手(バランス・ブレイカー)を見て、豪放に笑っている。更にそこへ黒歌の笑い声も加わった。
「面白いじゃない! なら、妖術と仙術ミックスの一発お見舞いしようかしら!」
黒歌の両手にそれぞれ違う力が渦巻き始める。夜明はその場から動かず、無造作に片腕を突き出した。行動を起こさない夜明に構わず、黒歌は二つの波動を放つ。迫る衝撃に夜明はただ一言、呟いた。
「『復讐誓いし女神の凶星(ネメシス)』」
一条の閃光と共に夜明の眼前に一枚の盾が現れる。漆黒に彩られた盾の前面には紫のラインで五角星が描かれていた。二つの波動が盾にぶつかるが、盾は堅牢で揺るぎもしない。そのまま波動は霧散するかと思われたが、盾は黒と紫の光を放って波動を吸収して光を放ち始めた。
「嘘!?」
驚く黒歌。夜明は黒歌から、空中でタンニーンと渡り合っている美侯に視線を向ける。銃の形にした右手で美侯を指し示し、撃つような仕草をした。瞬間、光り輝いていた盾の輝きが爆発的に増し、美侯に向けて吸収した二つの波動を撃ち出す。
「あ? どわあああぁぁぁっっっ!!!???」
予想外の方向から飛んできた攻撃に反応できず、美侯は波動をもろに喰らった。
「ナイスショットだ、月光夜明!!」
更にそこへタンニーンの大質量ブレスが加わる。美侯の姿が一瞬で炎の中へと消えた。
「どわちちちち!!! いってぇじゃねぇか英雄龍!!」
すぐに美侯は炎の中から飛び出す。パタパタと全身を叩き、鎧の表面や肌を舐めている火を消した。知るかぼけ、と夜明は周囲に何十挺の武具を生み出しながらタンニーンに呼びかける。
「タンニーンの旦那! 俺が合図したら、美侯を黒歌の近くに叩き落して、部長と小猫を連れて空に上がってくれ! 出来るよな!?」
「この俺を誰だと思っている? 何を考えているかは分からんが、その話乗った!!」
タンニーンが美侯目掛けて飛翔したのを視界の端で捉え、夜明は黒歌に全ての武具の切っ先を向けた。殺到してくる武具を黒歌は波動で防ぎ、あるいは弾き飛ばす。
「まだまだあるぜぇ!!」
叫びながら夜明は手を掲げ、すぐに振り下ろした。夜明の動きに呼応して既に上空に待機させられていた武具が雨となって黒歌に降り注ぐ。黒歌は後ろに飛び退いて武具の雨を避け、更にバク宙することで爆発の被害をかわした。
「男だったらそんな遠くから攻撃してこないで、近づいてきたらどうなの!?」
挑発的な口調で黒歌は幾重の波動を夜明に向けて放つ。最小限の動きで黒歌の攻撃を避け、夜明はなら遠慮なく、と拳を構えた。その場から迅雷のように飛び出し、一瞬で黒歌との間合いを詰める。地を蹴った勢いを拳に乗せて黒歌の顔面に叩き込もうとしたが、黒歌は咄嗟に両腕をクロスさせてこれを防いだ。
「ぐぅっ!!」
メキメキと黒歌の腕が軋み、鎧が肌にめり込んで血を流させる。夜明は拳を振り切り、防御ごと黒歌を吹き飛ばした。吹っ飛びながら木々を数本へし折り、黒歌はようやく止まることができた。
「……っぅ〜いったいにゃん! 普通、女の子の顔をグーで殴ろうとする!?」
「女の子云々以前にお前は俺の敵だろうが。それにちゃんと防げるように手加減もしたぞ。タンニーンの旦那、頼む!!」
おうさ! と夜明の声に応じ、タンニーンは如意棒が伸びたタイミングを見計らい、一気に美侯へと肉薄する。美侯は慌てて如意棒を元の長さに戻して応戦しようとするが、タンニーンは元の長さに戻った如意棒の範囲外で急停止、宙返りするように長くしなやかな尾を美侯に叩き付けた。
「ごあぁ!!」
足元の筋斗雲を突き破り、美侯は勢い良く黒歌の近くの地面へと叩き落された。すぐさまタンニーン地面に急降下し、巨大な手でリアスと小猫を掴んで上空へと舞い上がった。
「やれ、月光夜明!!」
右腕を輝かせながら夜明はタンニーンと同じ様に空に向けて飛び上がる。三翼を羽ばたかせ、森全体を見渡せるほどまで上昇したころには輝きは集束し、夜明の右手で形を成していた。彼の右手に握られていたのは巨大な一本の斧剣だった。人の身長を軽々と上回る、岩塊を申し訳程度に剣の形にしたような無骨なシルエット。
「いくぞ、エクスライズ!!」
叫びながら夜明は巨大斧剣、エクスライズを担ぐように構える。夜明の声に応じ、エクスライズの刀身が眩い黄金の輝きを放ち始めた。その名を叫びながら夜明は斧剣を振り抜く。
「『勝利を射殺す百頭の剣(エクスカリバー・ナインライブズ)』!!!!!!!」
『『『『『『『『『ゴォアアアアアアッッッ!!!!!!!!!!!!』』』』』』』』』
エクスライズから放たれた光の濁流が咆哮を上げ、九つに分かれた。次の瞬間、閃光の斬撃は九頭のドラゴンとなり、黄金の哮りを上げて眼前の敵を葬らんと大地の蹂躙を開始する。光り輝く牙が無数の大木を紙切れのように斬り裂き、黄金の胴体が地面を柔らかな泥のように抉りとる。ものの数秒とかからずにドラゴンたちは森を更地に変えた。
「「……」」
木々や林の緑が根こそぎ吹き飛ばされ、ただの平原となった森の中で黒歌と美侯は呆然としながら上空で羽ばたいている夜明を見上げていた。黒歌は腰を抜かし、美侯は額に冷や汗を浮べている。
「……」
「は、ははは、何だよこれ。威力だけなら普通に『覇龍(ジャガーノート・ドライヴ)』発動させたヴァーリに匹敵すっぞ……」
二人を見下ろす夜明の隣にタンニーンが飛んできた。何時の間に手から移動したのか、背中にはリアスと小猫が乗っている。大した威力だな、とタンニーンは賞賛の呟きを漏らしながら、いまだ夜明の手で光り輝いているエクスライズを見た。
「『勝利を射殺す百頭の剣(エクスカリバー・ナインライブズ)』と言ったか? いずれ、本気で勝負してみたいものだ」
「勘弁してくれ。数年後ならともかく、今の俺じゃ完全に競り負ける……今ので張られてた結界が壊れたみたいだな」
「あぁ。いずれ、異変に気付いた悪魔達が駆けつけ」
「もう来てるってぇの」
ボゴォ! と少し離れた地面から手が生える。タンニーンの背の上でリアスと小猫が小さく悲鳴を上げて抱き合った。
「死ぬかと思った……いや、咄嗟に拘束制御術式第二号解放してなきゃ死んでたな」
地面の中から出てきたのは太陽だった。よっこいしょと地面から身体を引っこ抜き、服や髪についた土くれを払い落としている。
「何やってんだお前? 一人土竜ごっこか?」
「んな訳無いだろうが……森の中に結界で外界から遮断されてる箇所を見つけてな。その中から波動がぶつかり合ってるのを感じたから結界ぶち破って中に飛び込もうとしたんだよ。そしたら黄金のドラゴンが九体飛び出してきてな。消し飛ばされかけたから、慌てて地面の中飛び込んだんだよ……ってか、あれってお前が撃ったのか?」
あはは、と乾いた声で笑いながら夜明は視線を逸らす。太陽はジト目で夜明を睨み上げていたが、すぐに視線を黒歌と美侯の二人に向けた。
「テロリスト二人で冥界にいるとはな。その度胸は褒めてやる」
ボキボキ、と太陽は拳を鳴らす。上空では夜明がこの空間を囲むように無数の武具をドーム状に生み出し、タンニーンが歯の間から小さな炎を吐き出していた。『深紅の死神(スカーレット・デスサイズ)』に禁手(バランス・ブレイカー)に至った英雄龍、そして『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』。二人だけで挑むには余りにも無謀な面子だ。
「消し飛ばされるか、降伏するか。好きなほうを選べ」
太陽が最終通達したその時、目の前の空間に裂け目が生まれた。中から出てきたのは背広姿の眼鏡青年。手には『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』とほぼ同等、それ以上の聖なるオーラを放つ聖剣が握られている。
「美侯、黒歌、そこまでです。悪魔達が気づきましたよ」
聖剣の放つオーラの危険性をいち早く理解した太陽にゴッドイーターの銃口を向けられるが、意に介さずに眼鏡青年は美侯と黒歌にそう言う。美侯は握っていた如意棒を消して眼鏡青年を見た。
「お前、ヴァーリの付き添いじゃなかったのかぃ?」
「あなた達が遅いから見にきたのですよ。そしたら絶賛バトル中」
しかも、相手は英雄龍と元龍王ときました、と眼鏡青年は深々とため息をつく。それから黒歌に若干厳しい目を向ける。
「それに黒歌は英雄龍に禁手(バランス・ブレイカー)に至らせる切っ掛けを与えたようですしね。大問題ですよ、これ」
ヴァーリは喜びそうですが、と眼鏡青年は再び嘆息。黒歌は引き攣った笑みを浮かべながら、ごめんと小さく呟いた。
「全員、そいつには近づくな! 持っているものが厄介だ!」
「タンニーン、ありゃ何だ? 夜明が創った『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』並かそれ以上のオーラが放たれてるんだが」
「聖王剣コールブランド、またの名をカリバーン。『最強の幻想(ラスト・ファンタズム)』を謳われたエクスカリバーと双璧をなすコールブランドが白龍皇の下にいたとはな」
タンニーンが苦笑する。夜明はコールブランド、それから眼鏡青年の腰に佩いてある帯剣に視線を移す。夜明の視線に気付いた眼鏡青年は空いた手で軽く帯剣の柄を掴んだ。
「こちらは最近になって発見された最後のエクスカリバー。七本中最強の『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』です。原典には遠く及ばないでしょうが……」
「そんなに話して大丈夫なの?」
黒歌の言葉に頷く眼鏡青年。
「えぇ、実を言うと、私もそちらに興味がありましたし。聖魔剣に『絶世の名剣(デュランダル)』、そして『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』。いつか、聖剣を巡る戦いをしてみたいものです」
この眼鏡青年、物腰こそ柔らかで言葉遣いも丁寧だが、その実ヴァーリ並の戦闘狂だ。さて、逃げ帰りましょうか、と眼鏡青年はコールブランドを一振り、空間の裂け目が大きくなり、数人が同時に潜れるほどに広がる。
「さようなら、皆さん」
それだけ言い残し、眼鏡青年は美侯と黒歌を連れて裂け目の中へと入っていった。三人が空間の奥へと消えると、裂け目は見る間に小さくなり、数秒と経たずに消える。
「……孫悟空の末裔にSS級はぐれ悪魔、そして聖王剣か。流石は白龍皇ってとこか」
その後、魔王達の命で駆けつけた悪魔に夜明達は保護され、『禍の団(カオス・ブリゲード)』襲来により魔王主催のパーティは急遽中止されることとなった。
「失態ですね」
魔王領にある会談ルームにて、『神々の子を見張る者(グリゴリ)』副総督シェムハザは開口一番、辛辣な言葉を飛ばす。隣に座っているアザゼルが「ほどほどにな」、と顔に出しているが気付いてない様子だ。悪魔、天使、堕天使、それぞれのお偉方が集められたのは、先日の魔王主催のパーティで『禍の団(カオス・ブリゲード)』に襲来を受け、その件に関して話し合うためだ。
事態はリアスの眷属である夜明やタンニーンの活躍によって最小限に収められたが、天使や堕天使側にしてみれば、悪魔の警戒意識の有無を問うものだった。堕天使側はシェムハザが、天使側はセラフの連中が怒っている。
「まぁ、いいじゃないですかぁ」
まだ報告と一緒に小言を続けようとするシェムハザにのんびりとした声で待ったをかける者が出てきた。金髪の美女悪魔祓い(エクソシスト)、『銃剣(ベイオネット)』こと、クレア・サンドロだ。元十三課(イスカリオテ)の身である彼女は天使達の護衛として、この場に出席している。本来ならこのような場で発言することは許されないが、名実共に世界に響き渡っている彼女は特例を認められていた。いいじゃないですかぁ、ともう一度クレアは繰り返す。
「襲撃されたと言っても、被害を受けたのはリアス・グレモリー様とその眷属の塔城小猫ちゃんだけなんでしょう? それにお二人もすぐに回復したそうですしぃ。まさか、SS級のはぐれ悪魔が使い魔を使ってパーティを見ているなんて誰も想像できませんよぉ。冥界が『禍の団(カオス・ブリゲード)』の襲撃を受けたのは今回が初めてなのでしょうぅ? そこまで目くじらを立てる必要もないと思いますぅ」
「だが、こうして襲撃を受けている。だからこそ悪魔の管理能力を」
「被害はほとんどない。なら、冥界の皆様が次が無いようにすればいいだけのことですぅ。それに、英雄龍の月光夜明くんが今回の襲撃で禁手(バランス・ブレイカー)に至ったのでしょうぅ? 大局を見るのであれば、とても大きな収穫ですわぁ」
尚も言葉を続けようとするシェムハザをクレアはニコニコフェイスでやんわりと黙らせていた。クレアのゆったりとした口調に毒気が抜かれているのか、シェムハザの声がどんどん小さくなっていく。アザゼルは自分の組織の副総統が人間の小娘に黙らされている光景に腹を抱えて笑いそうになっていた。
離れたところでは、会談に出席するために小さくなったタンニーンとそれぞれの勢力の上役、そして冥界でも特に強大な力を有する悪魔としてアザゼルとサーゼクスに無理矢理出席させられた太陽が今回のリアスとソーナのゲームの予想をしていた。
「俺はリアス嬢を応援させてもらおうか。何せ、俺が直々に鍛えた英雄龍がいるからな。これは俺の贔屓目かもしれんが、あいつは条件さえ限定すれば最上級悪魔とすら互角に渡り合うぞ」
「だなぁ。聞いた話じゃソーナんとこの匙は禁手(バランス・ブレイカー)に至ってないんだろ? 元々神器(セイグリッド・ギア)のスペック自体もかなり差があるし、こりゃ匙が夜明に勝つのは無理だろ」
「それはどうだろうな。何でもありの実戦ならともかく、ゲームは力だけが勝敗を左右させる要因にはならない。それにアザゼルがもたらした知識をソーナ嬢は上手く使うだろうな。下手をすれば、半年以内に上位陣が変動するかもしれないほどだからな」
「それは良かった。ここ十数年、トップが入れ替わってなかったものですから。これで面白いゲームが拝めそうです」
協定前の膠着状態はどこへやら、何とも平和に話していた。四人の話が聞こえる範囲にいた者達は一様に苦笑いを浮べている。その時、部屋の扉が開かれ、入ってきた人物を見て誰もがハンマーで頭を殴られたような衝撃を覚える。
「ふん、若造共は老体の出迎えも出来んのか?」
くたびれた帽子を被り、質素なローブを纏った隻眼の老人。白い髭は床につきそうなほど長い。鎧を着込んだ戦乙女(ヴァルキュリア)を引き連れている。
「おいおい、おっさん。見たところ、あんた訪問予定は無かったんだろ? それに来訪の連絡もしてなかったようだし、それで出迎えを要求するってのはちょいと虫が良すぎやしないか? というか誰だあんた?」
老人のことを知らないのか、太陽は頬杖を突きながら問う。老人も飛んできた遠慮のない言葉に目を丸くしていた。一つため息を吐き、太陽の物言いに戦慄している上役達に変わってクレアが答えた。
「太陽。その方は北欧、アースガルズの主神、オーディン様よ」
へぇ! と太陽は眉を持ち上げる。
「このおっさんがかの高名な戦神か。随分とまぁ老けて……さしもの主神様も老いには勝てないってか?」
ケタケタと笑いながら恐ろしく無礼なことを言う太陽。会合に参加した面々が恐る恐るオーディンを見た。後ろに控えている戦乙女(ヴァルキュリア)は柳眉を吊り上げているが、オーディン本人は気にする様子もなく白い髭を撫でながら朗らかに笑っている。
「その遠慮もくそもないズバズバとした物言い、お主が『深紅の死神(スカーレット・デスサイズ)』、夕暮太陽じゃな。噂通りのえぇ乳じゃのう。とてもあれとは血が繋がってるとは思えん」
あれとは太陽の父、アーカード=ヘルシングのことだろう。オーディンは好色そうな目で太陽、特に胸部分を見ていた。するとオーディンの視線を遮るように戦乙女(ヴァルキリー)が介入する。
「オーディン様、卑猥な事はいけません! ヴァルハラの名が泣きます!」
「わーっとるわぃ。お前は頭が堅くていけぬわ」
「お久しゅうございます、オーディン殿」
サーゼクスが席を立ってオーディンを招く。様子からして、彼がこの戦神を招待したようだ。
「サーゼクス、ゲーム観戦の招待、来てやったぞい。しかし、お主も難儀よな」
本来のルシファーであるヴァーリが白龍皇、しかもテロリスト。オーディンの皮肉にサーゼクスは笑みを浮かべているだけだった。
「聞いとるぞ、サーゼクス、セラフォルー。お主らの身内が戦うそうじゃな? 大事な妹、それも親友同士をぶつけ合わせるとは底意地の悪い」
「この程度、踏破してもらわねば悪魔の未来は任せられません」
「うちのソーナちゃんが勝つに決まってるわ☆」
「おいおい、セラ。そいつぁ聞き捨てならねぇな」
悪いが、私達が勝つぜ、と太陽は余裕たっぷりに笑みを浮かべる。オーディンの登場で、話は『禍の団(カオス・ブリゲード)』からレーティングゲームのことへと移った。アザゼルは休憩と称し、会談ルームを出て行った。廊下にある長椅子に座り、一息入れる。
「アザゼル、ゲームが始まる前に一つ聞いてもいいだろうか?」
そこへサーゼクスが姿を現し、アザゼルの隣に腰を下ろした。
「何だよ?」
「お前がリアスの対戦相手なら誰を最初に取りに行く?」
「夜明か太陽のどちらかだな」
夜明はグレモリー眷属全員の精神的な支えとなっている。飄々としながらも、常に諦めずに敵に立ち向かう不屈の姿はリアス達に活力を与えているはずだ。太陽もまた、その圧倒的な実力と余裕を感じさせる態度でグレモリー眷属のテンションの支柱となっている。特に『王(キング)』であるリアスにとって、幼い頃からの親友である太陽の存在はとても大きかった。
「……ソーナは狙うだろうな」
「あぁ、問題は取られたときだな。あいつ等の戦意が上がるのか、それとも落ちるのか。あいつ等はまだ、『英雄龍』としての夜明、『深紅の死神』としての太陽を目の前でやられたことがないからな」
※後書き
ども、久々のサザンクロスでっす。この話、書き上げてたのはかなり前なんですが、丁度良くアットノベルスがメンテナンス始めてて……無事に始まってよかったですわい。それと、第一話に作者の考えたオリジナル神器(セイグリッド・ギア)の詳細を載せておきます。良かったら見てやってください、では。