小説『ハイスクールD×D 不屈の翼と英雄龍』
作者:サザンクロス()

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           『称賛』




ゲーム終了後、夜明は医療施設の廊下を歩いていた。抜き取られた分の血は既に入れられているため、足取りは軽やかだ。体内に血を入れる際、血液のほとんどを失っても死ぬどころか、倒れなかった夜明に医師が大きな驚きを見せていたのは余談である。

「是非、解剖させてくれって、口説き文句にしちゃ斬新過ぎだろ……」

しかも目がマジだったし、と夜明は肩を竦めた。ちなみにその医師は看護婦達に取り押さえられている。リアスと太陽に至っては夜明を守るため、それぞれの得物を医師に突きつけていた。

「え〜っと、匙の病室はっと」

今、夜明は匙の病室へと向かっていた。どうしても、言っておきたいことがあったのだ。ちなみにリアスの評価だが、余り芳しいとは言えなかった。勝って当たり前、とすら思われていたゲームで眷属の内、三人が戦闘不能に追い込まれたのは主であるリアスの失態だ、というのが上の評価らしい。

「ぬぁ〜にが部長の失態だ。全部、俺やギャスパーが到らなかっただけの話だろうが」

ウォルターから聞いた話を反芻し、夜明は眉間に皺を寄せる。しかし、眷属が至らない、それ即ち主の恥になるということを思い出し、夜明は深々とため息を吐いた。そうこうしている内に匙の病室の前に到着する。

「匙〜、邪魔するぜ」

ノックはするものの、返事を待たずに夜明は扉を開ける。視界に入ってきたのは、高価そうな小箱を胸に涙を流しているベットの上の匙と、それを慰めているソーナだった。

「あぁ〜……出直した方が良いか?」

目を真っ赤にさせている匙と視線が合い、夜明は気まずそうに頭を掻く。匙は慌てて目元を拭った。

「げ、月光!? 何時の間に……」

「今、だ。ちょっと話良いか?」

夜明の問いに匙は頷く。夜明が病室に入ると、ソーナが椅子を勧めてくれた。礼を言い、夜明は椅子へと腰かけた。

「元気そうじゃねぇか。あんだけぶちのめしたんだから、二、三日は意識を取り戻さないんじゃないかって心配してたんだが」

「へっ、お前のへなちょこパンチで俺がそんなになる訳ねぇだろ」

お、言うねぇ、と夜明は軽口に口角を吊り上げる。それから、匙が大事そうに抱えている小箱について訊ねた。それはレーティングゲームで優れた戦い、印象的な戦いを演じた者に送られる物だそうだ。サーゼクスが手ずから匙に渡したらしい。

「へぇ〜、凄いじゃん」

まじまじと小箱を見る夜明。照れたように笑っていた匙だったが、ふと表情を引き締めた。

「月光。お前、俺のラインで血を抜かれてたのに最後までゲームに残ってたんだよな?」

「ん? まぁな。て言っても、最後ら辺はほとんど意識無かったけどな……医師の話だと、体内の四分の三の血液が抜かれてたんだと。よく死ななかったよなぁ」

ケラケラと笑う夜明。一方、匙の表情は重かった。

「やっぱ、お前って凄いよな。そんな状態になっても倒れないんだから……やっぱ、俺はお前に勝てないのかな……」

箱を両手で握り締めながら匙は肩を震わせる。言葉こそ発しなかったが、表情から自分がそれを受け取っていい立場ではないと思ってることがありありと窺えた。泣きそうになっている匙にソーナが声をかけようとするが、それよりも早く夜明が動く。おい、と匙に顔を上げさせ、額に強烈なデコピンを打ち込んだのだ。

「いってぇっ!!??」

「がたがた難しいこと考えてんじゃねぇよ馬鹿。どうせお前の馬鹿な頭じゃどう思考を持って行こうがマイナスに向かっちまうんだから、素直に賞賛を受け取っとけ馬鹿。馬鹿は何も考えずに目の前の喜びを馬鹿みたいに噛み締めてりゃいいんだよ馬鹿」

「ば、馬鹿馬鹿って何回言うんだよお前!?」

「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いんだよ? あ、それともカバの方が良いか? カ〜バカ〜バ」

この野朗! と匙は手を伸ばすが、如何せん負傷中だから、その動きに精彩を欠いている。掴みかかってくる匙の腕をひょいひょいとかわす夜明。目の前の子供じみたやり取りにソーナは口元を押さえる。やがて、疲れたのか匙は肩で息をしながら腕を引っ込めた。

「ぜぇ、ぜぇ、この野朗……一応、俺は怪我人だぞ」

「俺はお前を怪我人にした張本人だがな」

あ、と匙は呆けたように口を半開きにする。夜明が軽く笑うと、匙もそれに釣られて笑い始めた。さっきまで殴り合ってたとは思えない、屈託の無い笑いだった。そろそろお暇しようと立ち上がった夜明に匙は決意に満ち満ちた目を向ける。

「月光、次は絶対に負けねぇ」

「上等、何度でもぶっ飛ばしてやるよ」

じゃ、と夜明は匙に手で挨拶し、ソーナに頭を下げて病室から出て行こうとするが、扉に手をかけたところで何かを思い出したかのように立ち止まった。

「そうそう、お前に言っておきたい事があったんだ。匙」

「何だよ?」

「俺と戦ってた時のお前、凄ぇ格好良かったぜ」

さらっと投げかけられた夜明の言葉。それが匙の総身を震わせる。

「な……何言ってんだよ、お前? 俺、お前に負けたんだぜ。それも大きく力を制限されたお前に」

声が震えていることを悟られないよう、匙は努めて平坦な声音で話す。しかし、その努力も夜明の次の台詞で水の泡となった。

「いや、制限は関係ないだろ。それに、今回のゲームで制限とか無かったとしても俺はお前に追い詰められてたさ。お前、強かったし。会長さんの夢のために何度も立ち上がったお前は誰が何と言おうが格好良かったよ」

それと、と夜明は肩越しに匙を振り返る。

「お前、俺のことが羨ましいって言ってたな? ぶっちゃけるが、憧れてたのは俺のほうだったんだぜ」

何度打ちのめされようが、何度吹き飛ばされようが。ぐしゃぐしゃのぼろぼろになりながらも自分に向かってきた匙はとても眩しく、イカしていた。夜明は拳を繰り出しながらも、匙に憧憬のような感情を抱いていた。

んじゃ今度こそバ〜イ、と夜明は言うだけ言って、手をヒラヒラさせながら病室を出て行った。病室には匙とソーナの二人だけ。全身を震わせながら涙を流す匙の嗚咽だけが響く。頭の中では先ほどの夜明の言葉が繰り返されていた。

『お前、強かったし』

『会長さんの夢のために何度も立ち上がったお前は誰が何と言おうが格好良かったよ』

『ぶっちゃけるが、憧れてたのは俺のほうだったんだぜ』

誰よりも認められたい相手からの紛れも無い賛美。それは匙にとって、サーゼクスから送られた言葉と小箱に匹敵した。涙で声を詰まらせる匙を、ソーナはずっと見守り続けていた。














『奏者よ。ヴリトラの宿主に言った言葉。全て真か?』

「ったり前だろ。あんなの嘘で言えるかっての」

自分の病室に戻る最中、ブレイズハートの問いに夜明は肩をコキコキと鳴らしながら答える。先ほどの夜明の言葉、それは紛れも無い彼自身の本心だった。

「俺の夢ってほとんどが自己満足だからなぁ……だから、会長さんの夢のために戦える匙のことは心の底から格好良いと思うぜ」

リアス・グレモリーの自慢になるような最強の『兵士(ポーン)』になること。過去現在、未来永劫において、誰も超えられないような“最高”の英雄龍になること。この二つの夢は誰かのための夢ではない。全て、唯の夜明の自己満足だ。

「誰かの夢のために戦えるような男になりてぇもんだな」

しみじみと夜明が呟くと、廊下の向こう側から誰かが歩いてくるのが見えた。長身痩躯、血のような赤黒いコートに帽子、そしてサングラス。異様と形容して差し支えない姿だが、何よりも異質なのはオーラだった。まるで、死という概念その物が服を着て歩いているような、そんな錯覚を覚えさせる。こちらに歩み寄ってくる長身の悪魔の姿に夜明は足が床に縫い付けられたかのように動かなくなった。

「……」

男は夜明の目の前に立つと、傲然たる視線で夜明を見下ろす。それも、居心地の悪さを感じるくらい念入りに。

「……何か用すか?」

辛うじてそれだけを訊ねる。しかし男は何も言わず、夜明の観察を続けた。やがて、口元を歪ませながら唇を動かし始める。

「神器(セイクリッド・ギア)という不純物が混ざってはいるが、紛れも無い人間だな。そのまま練り上げ続けろよ、愛しき御敵よ。いずれこの心の臓腑に刃を突き立てるために」

一方的に言い残し、男は夜明の横を通り過ぎ、廊下の向こうへと姿を消した。

「……誰だありゃ?」

男の姿が見えなくなってから漸く夜明は身体を動かせるようになった。分からぬ、とブレイズハートは囁くように答えた。いや、一つだけ心当たりがある。ゲームが始まる前、太陽の話した一人の悪魔。『魔神』、『第五の魔王』と恐れられた冥界史上最強最悪の悪魔、アーカード=ヘルシング。

「あれがそうなのか……」

長いこと、夜明はその場を動くことが出来なかった。














『そのまま練り上げ続けろよ、愛しき御敵よ。いずれこの心の臓腑に刃を突き立てるために』

グレモリー邸の和風温泉。夜明は頭を洗いながら医療施設でアーカードに言われた言葉を思い返していた。ちなみに温泉には夜明一人しかいない。

「練り上げ続けろよ、か……」

どういう想いでアーカードがその言葉を口にしたかを夜明に測る術は無い。ただ一つ言えることは、

「あんたのためなんかに強くなった訳じゃねぇよ」

全ては主と仲間達のために。サバァ〜っと頭からお湯を被り、髪の毛についた泡を全て流し落とす。腰まである銀髪が照明の光を浴びて鏡のように煌いている。

(身体を洗う前に一度、入っておこうかな)

少し夜風が寒いと感じていたところだ、風呂に入っておこうと腰を上げた夜明の耳朶にカラカラと戸が開く音が届いた。誰だ? と振り返る夜明。立ち上る湯気で誰かは分からない。しかし、シルエットだけは見えた。長い髪の、女性的なボディライン。ここら辺で夜明の頭上には?マークが浮かんでいた。

(あれ? ここって男湯だよな?)

確かにここは男湯だ。それは紛れも無い事実。そしてその事実を粉々に打ち砕くように湯気の向こうから現れたのは、

「こんばんわ、夜明君♪」

その見事な身体をタオル一枚で隠した姫島朱乃その人だった。目が点になる夜明。数秒後、

「ブルァァァァ!!!!!?????」

どこぞのメロンが大好きな魔物のような声を上げて風呂の中へと頭からダイブした。ザッパ〜ン、と派手な水柱が上がる。お湯が雨のように降り注ぐ中、朱乃はあらあらと頬に手を当てる。

「あああああああああ朱乃さんここここここっちは男湯であるからしてレディーである貴方様が入ってくるのはひひひひひ非常にナンセンスというか何と言いますか」

言語機能が崩壊したのかと思うほど支離滅裂な言葉を続ける夜明。にっこりと笑いながら朱乃も温泉の中に入った。

「えぇ、知ってますわ。夜明君の背中を流してあげようと思って」

「いや、他の人が入ってきたらどうするんですか!?」

大丈夫ですわ、と相変わらずのニコニコフェイス。グレモリー卿とサーゼクス、アザゼルは酔い潰れていて、祐斗は三人の介抱で忙しいとのこと。詰まる所、男湯には当分誰も来ないということだ。

「さ、夜明君。こっちに来てちょうだい」

「い、いえ、結構です! 背中くらい自分で洗えますから!!」

必死の様子で夜明は手を振る。それも無理からぬことで、こういう場面、夜明は大抵朱乃にエロいことをされている。そしてそこにリアスが乱入してきて酷い目に会う、というのが鉄板になっている。流石にゲームの後にそれは勘弁願いたい、と夜明は朱乃の申し出を全力で拒否した。

「……そうよね」

しかし彼女は姫島朱乃。夜明をどういう風に扱えば良いかなど、とっくの昔に心得ている。彼女は目尻に涙を浮かべ、少し陰のある悲しみの表情を作る。

「私みたいな女に背中を流されるなんて……嫌よね」

そうするとあら不思議。

「がぼ、がぼがぼぼがばばばばばば(いえ、全力でお願いします)!!!!!!」

眼前にはお湯の中で土下座している夜明の姿が。朱乃が瞬時にいつもの笑顔を取り戻したのは言うまでも無い。






「それじゃあじっとしてて下さいね」

「は、はい」

ガチガチに緊張した夜明の背中に朱乃は桶の中のお湯をかける。石膏で塗り固められたように動かない夜明に苦笑しながら朱乃はスポンジを手に取った。

「そんなに緊張しないでリラックスしてください」

(すみません、無理です)

いつ何時、朱乃が何かをしてくるか分からないので、夜明は一瞬たりとも気が抜けなかった。お前は彼女ことを何だと思ってるんだ? と問われても不思議無いくらいの緊張具合だ。うふふ、と笑いながら朱乃は夜明の背を洗い始めた。力加減は弱すぎず強すぎず。予想外に気持ち良く、夜明の肩から徐々に力が抜けていく。

「痒いところは無いかしら?」

「あ、はい……」

鼻歌なんか歌ったりしながら朱乃は夜明の背中を洗い続ける。何かする様子も無いので、少しずつ夜明の中の警戒心が薄れていった。そしてとうとう、何事も無く終わった。夜明の背中にお湯をかけ、泡を流す。

「あ、ありがとうございます……」

朱乃が何もしてこなかったことに戸惑いつつも夜明は礼を言おうと立ち上がる。しかし、朱乃がそれを制した。

「ちょっと待ってください。まだ、終わってませんわ」

え、そうなんですか? と返しながら夜明は素直に椅子に座りなおした。既に彼の中にあった警戒心は完全に無くなっていた。ごそごそと夜明の背後で何やら始める朱乃。数秒後、

ムニュ♪

脇の下から朱乃の腕が回され、背中に何とも甘美な感触が。硬直する夜明。ギギギ、とぎこちなく振り返れば、頬を紅潮させた朱乃と視線がかち合う。

「朱乃サン。貴方、何ヲシテイルンデスカ?」

「夜明君の大好きなおっぱいで背中を洗ってるんですわ……」

(やっぱ油断するんじゃなかったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!! この人相手に油断するって俺は馬鹿かぁ!!!!!!!! ってか、何時の間に俺そういうキャラ付けになったの!!?? 確かに嫌いではないが……!!!!!!!)

朱乃から逃れようと夜明は身を捩る。しかし、朱乃の腕はがっちりと夜明をホールドし、逃がしはしなかった。どっからそんな力が出るんだと問いたくなるほどのものだ。

「あ、朱乃さん!! 貴方、どこでこんな力を!?」

「うふふ、恋する乙女は自分の意思でその時、不思議なことが起こったが起こせるんです」

「あんたどこの太陽の子だぁ!!!!!」

逃げたくとも逃げられない。それどころか、逃れようともがく度に朱乃が艶っぽい吐息を漏らす。

「あぁん、凄い……夜明君の逞しい背中に擦れて、私、感じてしまいますわ……ひゃうん……」

「何が擦れるの!? 何を感じてるの!?」

朱乃の腕から逃れられそうも無い。そこで夜明は先人の知恵を借りる事にした。アンリミテッド・ブレイド内に意識を飛び込ませ、先輩の名を呼ぶ。

『おい、イスカンダル!! こういう場合、どうすれば良いのか教えてくれ!!!!』

夜明の切実な叫びに即座に答える覇軍の主。実にいい笑顔で親指を立てる。

『そういう時はな、一度抱いてやって耳元で愛を囁いてやれば大抵はころりと』

『人生観が違いすぎるぜ畜生が!!!!!』

そもそも、本物の戦場を駆け抜けた益荒男のアドバイスが自分如きに活かせる訳が無い。己の矮小さに歯噛みしつつ、夜明は次にエジソンに呼びかけた。

『おい、エジソン知恵をかして』

『落ち着いてブレイズハート!!! 誰が誰に恋をしようとそれは当人同士の問題でしょうが!!』

『話せ悪魔の発明!! 余は、余はあの淫乱痴女を排除しなければならぬのだ! じゃなきゃ奏者が、余の奏者がぁぁぁぁぁ!!!!!!!』

絶叫するブレイズハートを羽交い絞めにするエジソン。とても助言を求められる状況ではない。夜明はそっと意識を身体の中に戻した。

「我慢しなくて、良いよ……夜明がしたいなら、私は何時だって受け入れるから……」

蠱惑的な声と吐息が夜明の耳に吹きかけられる。濡れた女の目で朱乃は切なそうに夜明を見ていた。眼前の美女に求められる彼の運命は如何に?






次回、『さらば英雄! 月光夜明、暁に死す』をお楽しみに!














「そんな次回はねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!」

雄叫びを上げ、夜明は己の顎に拳を掠らせる。これぞ秘儀、セルフ失神。瞬く間に暗くなっていく視界。その中央に驚いた表情の朱乃が映る。最後の力を振り絞り、夜明は一つ伝えた。

「あ、けのさん。そういうのは、こんな、温泉ですることじゃ、無いですよ……ガクゥ」














「あ、気がつきました」

瞼を持ち上げると、そこには寝巻きの浴衣姿の朱乃がいた。

「こ、こは」

「私の部屋ですわ」

ベットから上半身を起こし、周囲を見回す。グレモリー邸に用意された一室の一つだというのはすぐに分かった。それに自分に宛がわれた部屋と違うことも。

「俺は確か……セルフ失神をして……」

その後、気絶した夜明は偶々温泉の近くにやって来た太陽とアザゼルに朱乃の部屋まで運ばれたそうだ。ちなみに夜明に服を着せたのはアザゼルだ。朱乃から顛末を聞かされ、夜明は何ともいえない表情で頷く。

「で、俺は何ゆえ朱乃さんの部屋に?」

「夜明君、意識を失う前に私に言いましたわね。温泉はそういうことをする所じゃないって」

つまり、と朱乃は妖艶に唇を舐めて見せた。

「ベットの上ならそういうことをしても良いということですわね?」

「盛大に墓穴を掘ってたでござるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」

逃げ出そうとする夜明。しかし、夜明が逃走を図ろうとすることは予想済みだったらしく、朱乃の方が動きが早かった。ベットから飛び降りようとする夜明に飛び掛り、そのまま馬乗りになる。

「お、落ち着いてください朱乃さん! 貴方は今、取り返しのつかない過ちを犯そうとしている!!」

「こんなにも甘美な過ちだったら幾らでも繰り返しますわ」

唇に当てた人差し指を舐め上げながら朱乃は夜明の胸を指でなぞる。浴衣の帯をゆっくりと緩め、完全にその気だった。

「夜明、私と一つに」

その時、派手な爆裂音と共にドアが吹き飛んだ。二人の視線がドアの方へ向くと、そこには五つの人影が。

「あぁぁぁぁぁけぇぇぇぇぇのぉぉぉぉぉ……!!!!!!!!!!!」

呪詛のように朱乃の名を呼びながら紅滅鎌から滅びの刃を迸らせているリアス。

「……ぐすん」

涙目になりながらも、健気な決意を浮べているアーシア。

「はっはっは、本当に朱乃副部長の手の早さには恐れ入る。見習わなければならないな」

笑顔ではあるものの、完全に目が据わっているゼノヴィア。勿論、デュランダルはオーラ全開だ。

「この時から朱乃お姉様って油断ならなかったのね。この時の私ももう少し勇気を出せないかな」

十年後の姿に変じたギャスパー。その両手には影が纏わされている。

「……夜明先輩は、渡しません」

猫耳、尻尾を生やして覚悟の表情を作っている小猫。

「折角良い雰囲気だったのに……私、怒っちゃいそうですわ」

全身から黄金のオーラと雷を放つ朱乃。その時の夜明の心情は、

「\(^o^)/ 」

次の瞬間、豪快な破砕音がグレモリー邸を揺らし、その一角を吹き飛ばした。














「行くぞ、ヤン」

「あいよ、兄ちゃん」

「連中に教えてやろう。闘争の何たるかを」













※後書き 

ども、こんばんわ、サザンクロスでっす。朱乃さん可愛いよ朱乃さん。というかえrゲフンゲフン。さって、次から少しばかりオリジナル話になります。いえ、大したことは無いです。ただ、英雄龍と赤龍帝を戦わせるだけですから。あ、それと質問なのですが、六巻でのディオドラ戦。夜明のやらせるかリアスにやらせるかで迷っているんですよね。皆様はどちらがみたですか? 答えていただけると嬉しかったりします。では、サザンクロスでした。

あぁ、それとISを書く気は今のところありません。書くとしたら……マジ恋かな。

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