小説『いじめ』
作者:小紗(小紗の小説部屋)

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そして、案の定、安海は男子にひどい目にあわされた。
立ち直れないほどに。
美久は安海の話を聞いて激怒し、華璃たちに立ち向かった。
結果はこれだ。
吏子は激しく後悔していた。
(私があんなこと言わなければ、マシだったかもしれない…)
男子たちに下げ渡すというのは吏子の案だった。
男子たちがひどくとも、華璃よりはましだと思ったから。
純粋で影を知らなかった吏子はそう考えた。
殴ったりするだけだと思っていた。
なのに、安海の話を聞いて愕然とした。
華璃は知っていたのだ。
よく考えれば、華璃がこんなに軽いことで済ますわけがない。
シメはもっとひどいはずなのだ。
そして安海は転校し、いじめの標的は美久に移る。
吏子は自分が浅はかだったと後悔し、口を出すのをやめることにした。

「そうねェ。男子たちの力には敵わないでしょうからね。」

華璃の声が耳に響く。
いつの間にか、話は進んでいたようだ。
「あんなに、強がっているけど男子たちに渡せば一発ですよ」
女子が笑いながら言う。
「男子たちも喜んで、私たちの言いなりになるじゃないですか」
「一石二鳥ですよォ!」
華璃の許可をもらおうと、女子たちはしつこく言う。
「吏子はどう思う?」
華璃はくるりと振り返り、吏子に意見を求めた。
女子たちの眼が賛成の意見を言えと言っている。

「も、もう同じことは飽きましたし、下げ渡したほうがいいんじゃないですか?
もう、シメでいいと思います」

吏子は言う。
女子たちは「一命を取り留めたわね」と言わんばかりの目を向け、華璃の方を見た。
その時、美久が教室に入って来た。
美久は涙をためた目を吏子に向ける。
(イチゴ…。聞いてたの?)
吏子はショックを受けた。

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