小説『いじめ』
作者:小紗(小紗の小説部屋)

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「杉浦ァ!」

1人の女子が、杉浦 疾風を呼んだ。
こそこそと話す。
「分かった。いつからOKなんだ?」
「来週あたりからかしら」
疾風と華璃はいい、自分たちの席に戻った。
その日、吏子はろくに授業なんて聞いていなかった。
美久のことが心配でたまらなかったのだ。

「吏子、帰りましょう。」

放課後、華璃は吏子に言った。
吏子は断るわけにもいかず、一緒に帰ることになった。
「イチゴ…市古を下げ渡すんですか?」
吏子はポツリと聞いた。
「ええ。もちろん。今まで手を焼かせてくれたわァ。でもこれでシメね。」
華璃は冷たい笑いを浮かべて言った。
そのまま、2人は黙って歩き続ける。
「私は、吏子といる時が一番休まるの」
華璃はいつもと違い、寂しそうに言った。
「他の子たちは、表面上の付き合いなだけ。
あなたは違うって信じてるわ。吏子。あなたはかけがえのない友達だから」
華璃は微笑みを浮かべて言う。
冷笑には‥‥…思えなかった。
いつも傲慢そうな華璃が、寂しそうな少女にしか思えなかった。

「華璃様、つきましたよ。一緒に帰っていただいてありがとうございました」

吏子はぺこりとお辞儀して言った。
「バイバイ、吏子」
華璃が手をふって言った。
吏子ははっとして、華璃を見る。
「ごめんなさい。一度こう言ってみたかったの…」
吏子が何か言おうとしたとき、華璃は家の中に入って行った。

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