小説『いじめ』
作者:小紗(小紗の小説部屋)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

翌朝。
いつもの朝。
華璃にとってだけ素晴らしい朝。

「おはよう。吏子」

華璃が言い、吏子が返す。
その日はとくに話さず、ただ歩いて登校する。
わたしは不自然の無いように、
「華璃様、靴をお片づけします」
と言う。
華璃は礼を述べ、そのまま教室へ向かおうとする。
吏子はあわてて華璃に言った。

「華璃様!
ゴミの処分はいいんですか?」

華璃は蔑んだように言う。
「来週から男子に下げ渡すでしょう。
それまでいじめがなくなったって言う誤解でひどく感じるようにしてやるから今週はいいわ。
来週からは男子に任せる」
吏子は口実を一生懸命に考えた。
「でも、市古は知っているようですよ。
私と市古は前仲が良かったんです。今は嫌いです……けど。
私が昨日、下げ渡したほうがいいと言った時に私の方も涙目で見てましたから」
華璃はふぅ〜んといい、
「それなら、最後まで責め苦を与えた方がいいわ。やっておきなさい」
吏子に命じた。
吏子は美久の上靴に水を注ぐ、いつもより少なくする。
そして、上靴の上に折りたたんだ手紙を置いた。
(イチゴ‥‥‥)
どうか気づいてくれますように。と思って、吏子は靴箱の戸を閉めた。
そして教室に向かい、華璃とともに男子に下げ渡すための話をしていた。
休み時間、美久は吏子の方を向いて一度だけにこりと笑ってくれた。
手紙を読んでくれたのだと、吏子は嬉しくなった。

-7-
Copyright ©小紗 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える