小説『親父と一緒にいきなりトリップ【H×H】』
作者:プータ()

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 第四話 念×これから

 
 親父とグリアさんのお付き合い宣言から暫く。やっと戦える程度の練度になった格闘修行から次のステップに行く事になった。つまりは念の修行だ!やっとだ。念もなしに猛獣と戦わせられたりするような修行から、逃げ切らないと猛獣と戦わせられるような鬼ごっこ。何が逃げ切れるなら戦う必要が無いけど逃げられないなら戦わないとだよ!合理的過ぎて反論できないんだよ!
 
 「じゃあ触るぞ純」
 「や、やさしくしくれ」
 「死ぬなよ?」
 「ジュン、落ち着いてね」

 今は親父に【練】で念を起こしてもらおうとしているところだ。親父自身もそうだったし、なんとグリアさんもそんな感じだったらしい。おじいさんじゃなくて親にやってもらったらしいけど。

 「いくぞ」

 親父が触れそうになった瞬間ドンとでかい音がし、同時に俺からオーラが噴出した。自分からまるで熱が出て行っているような感覚。急速な疲労感も襲ってくる。それを体にとどめていく感覚を思い浮かべる。何も知らずにされたら困っていただろうが、そこは知識として持っている分他人よりは数倍うまくいく確率も高い。イメージトレーニングもしたのだ。
 
 「もう大丈夫そうだな、眼開けてみ」
 
 眼を閉じて集中していたのをやめる。体を見てみるとオーラが膜を張っているように見える。これが【纏】か、とくに問題も無くできたな。後はもう自転車の乗り方と一緒で一度できたら忘れないだろう。

 「ふー、なんとなく疲れたな」
 「そりゃそうだろう、体のエネルギー垂れ流されてるんだからな」
 「纏が出来たら次は【絶】よ、これは気配を消す事が出来るし、している間は傷の治りやオーラの回復も早い。その次は【練】、これはオーラを増幅する技だからオーラ消費も早い、【絶】を覚えてないと効率が悪い。纏の方はほっといても出来るようになるわ」
 「はい」

 こうして念の修行は始められた。

 「あ、今度から格闘訓練から戦闘訓練になるからがんばってね」
 「……はい」

 過労死する10才の少年か、しゃれにならん。





 念の覚えてからまた暫く。

 「ねえ、そういえばジュンは小学校行かなくていいの?」
 「え?」
 「あーそっか、10才だったね、そうだそうだ」

 親父が心なしかにやけながら言ってくる。うぜえ、わかってて言ってるだろ。

 「いやー学校は別に……」
 「でも行ったほうが友達も出来るわよ?もうじきこの森からも出て違う場所に移り住む予定だしその時に町の近くに住めばいい。私も小学校だけは行かせてもらったしね。何より将来的にやくたつと思うわ」
 「あー」

 自分は小学校行く年じゃないですよ、といえない!まさにジレンマ。でもそろそろ街を見てみたいきもする。いつまでもここにいるわけにはいかないしな。
 
 「で、でも戸籍とか無いし……」
 「あ、そうよね、ごめんなさい」
 「ううん、気にしてないよ」

 よし乗り切った。グリアさんが悲しい顔をすると親父が殺気飛ばしてくるからやめてほしい。

 「あっ」

 親父が何か思いついたようだ、どうせろくな事じゃない。

 「僕ハンター試験受けてくるよ」
 「いきなりすぎるだろ!どうしてそうなった!」
 「なるほどそれはいい案ね、さすがユウキ」
 「俺に説明プリーズ」
 「ハンター証があれば身分証明にもなるし、多分学校通うくらいの権力はあるだろう」
 「あっ」
 「ええ、それに戸籍が無い人は将来的に困る事が多いけどハンター証でほとんど解決すると思うわ」

 なるほど今の俺たちにとっては有り余るほどのメリットがある。デメリットといえば俺が小学校に通う可能性がでてくる事、そしてハンター証を持っている事で生じる危険だ。
 
 「……でも危険もあるよ。試験では普通に人死にだってあるし、親父自身が人を殺したりしなきゃいけないかもしれない。ハンター証を持ってるだけでも危険な場合もある、それでもいいの?」

 これがこの世界の事実だ。殺人なんかもかなりあるし、ハンターともなれば人を殺すのに躊躇してたらそれこそ馬鹿に漬け込まれる。主人公のゴンは主人公だからそういった機会が訪れなかったといっていい。

 「この世界に生きる以上は仕方の無い事だ。覚悟は出来てる」
 「……それなら俺から言う事は無いよ。試験は一月だよね?あと三週間ぐらいで今年も変わる。少なくとも今週中に申し込んでおいたほうがいい」
 「だったらパソコンで申し込んじゃいましょう」

 そう言ってパソコンをいじり始めるグリアさん、ハンター協会のホームページを開き手早く申し込みをするとパソコンの横から開催地の案内が出てくる。俺もハンター試験を受けられる12歳って言っておけばよかったな。

 「はい案内状、多分簡単にたどり着けないと思うけど、気をつけてね」
 「ああ、開催地は……キノッサ?何処だこれ?」

 先行きが不安だ。



 

 ハンター試験はともかく、念の修行はしないといけない。だが今日は水見式だ。そうあの水見式だ。大事な事だからな、二回言おう。
 
 「今日は系統を調べるわ」
 「やっと来た!」

 これが一番の楽しみだ!個人的にはこれだけ格闘修行してるんだし強化系が一番戦いやすいと思うが、俺は単純一途なんて性格ではない。ぶっちゃけどの系統の性格でもない気がする。系統別性格占いはヒソカの独断と偏見の塊だからな。確率が高くとも100%当たるものでもない。それにこの世界の人間じゃない俺に当てはまるかも怪しい。
 
 「じゃあこれに向かって練をして」
 「よしきた!」
 「やけに気合はいってるな」

 親父が半ばあきれ気味に言ってくるが今回は言わせておこう。この系統一つで自分の戦闘スタイルや、自分に出来る事が決まると言ってもいい。それを考えると気合も入るってもんだ。
 コップに水を入れ葉っぱを浮かべ練をする。

 「これは?」

 グリアさんが困惑しているが俺も困惑している。

 「葉っぱが沈んで溶けたな」
 「てことは」
 「特質ね」
 「うえー、俺どうすりゃいいのさ」

 一番ほしくなかった特質系。よく二次創作なんかでは他の作品のキャラなんかの技を使ってるけど、念能力を学べば学ぶほど出来る可能性が下がっていく。出来なくも無いが誓約と制約をアホみたいに重く、使いずらくしなくちゃいけない。それこそ寿命を削ったり、人に見せないとかそういう感じにしないと形にすらならないだろう。まあ一つぐらいならどうにかなるかもしれないけど。
 特質系といえば、クロロやビノールト、ネオンなんかもあげられる。キメラアントの中のライオンの奴や王なんかもそうだった。ろくなものじゃあない。条件満たしたり、恩を売ったり、食べたりと発動条件がピーキーなものが多いのだ。ついでにほとんどの場合一つの能力だけっぽいし。やー困った困った、これからどうすっかな。

 「そういや親父は何系?」
 「操作系」
 「発は?」
 「まだ」
 「試験あるのにそれでいいのか!」
 「まあハンター試験では心配ないだろう、他に念能力者が居ない限りはさ、念自体覚えてるのがずるみたいなもんだし、それに操作するのには愛着のあるものや、自分に縁のあるものがないといけないんだ。中々ないだろうそんな媒体」
 
 確かに操作系はそうかもしれない。媒体は何かあったのかもしれないがこの世界にはない。それこそ自分の体の血とかぐらいか。 

 「でも、これならいけるんじゃないか?昔からこれでなんか作るの得意だったし」

 俺は砂を手に乗っけながら言う。親父は昔から砂で何かを作るのがうまかった。像だの城だのを砂場や砂浜で作ったりしては人の注目を集めていた。

 「砂か……サンドアートはまあ趣味だしな」
 「サンドアートですか?」
 「グリアは知らなかったか、砂で像なんかを作ったりする造形美術のことさ、僕は昔からこれが得意でね。よく海に言ったら作ってたよ」
 「へえ、見てみたいわね」
 「うーん、見せてあげたいけどね、水と砂がたくさんないと」 
 「そう……あ、だったら海にいきましょうよ!もう二人とも念は習得してるから森の外にでられるようになってるし。それにユウキがハンター試験に行く前に遊んでおきたいわ、多分終わって帰ってきたらすぐに引っ越しだし。この国は常夏だしね」
 「うーん、それもそうだね。僕はいいと思うけど純は?」
 「俺もいいよ、最近森の中ばっかで飽きてきたし、久しぶりに海にも行きたいし」
 「それじゃ決まりね。じゃあ水着を近くの町で買ってから行きましょう」

 海か、久しぶりだな。この国は熱帯に属すのか常夏だ、涼しくても20度はある。それにグリアさんや親父以外はほぼ人にあってないからな、楽しみだ。だが親父の顔がにやけてる。グリアさんの水着姿でも想像したのだろうか?
 
 


 「森の外は以外に普通だな」

 森を抜けてみれば草原が広がり少し遠くに道路が見える。あんまり人が来ないところのようだ。

 「それでここからどうするんだい?」
 「ここから歩くのよ?」
 「ゑ?」
 「それじゃ行こうか?純も固まってないでいくよ」

 町が見えない状態から歩く?しかも歩いてねえし、走ってるし。ああ、でも走っても疲れない体なんだな。そんな自分が怖いと同時に悲しい。まああれだけしごかれたらこういうことも出来るだろうけどさ。

 「ここから何時間ぐらいはしるの?」
 「三時間ぐらいかしら?」
 「結構走るね?」

 結構どころの話じゃない!というか下手な車よりも早く走ってるんだぞ?余裕でフルマラソン以上の距離じゃないか。でもあれだよな、海に言ったら水着の美女ぐらい居るんだろうな……ちょっとがんばろう。

 「ん?そういえば結局発はどうするの親父?」
 「ああ、砂でいいかなと思ってる、能力的には色々使い勝手はよさそうだしさ。思い入れがあるものといえばあれくらいだ。ただ砂を大量に操りたいんだよね。それを考えるとどうしたらいいかと思ってさ」
 「それなら制約をつければいいと思うわ」
 「制約か……」
 「ただ制約は変えたりすることはできないから気をつけないと取り返しがつかなくなるから、そこを気をつけてね」

 俺も能力考えないとな。普通の系統ならよかったのに。本当に悩ませてくれる。特質系の特徴としてはその人の性格なんかがあらわれるっぽいけど俺はなんだろう、器用貧乏とかはよく言われてたけど。戦闘特化な能力じゃ人生つまらんしな。まあ一つばかり候補はあるが出来るか不安だ。イメージは出来てるがなんとも怖い。まずは具現化の練習でもするか。ビー球出すだけだしな。

 「そういえばグリアさん」
 「何?」
 「俺お金持ってないんだけどさ……」
 「あっ」

 あっじゃねーよ。もしかして親父も忘れてたのだろうか。まあなきゃ稼げばいいのだろうが残念ながら戸籍がないんじゃそれも難しい。恥を忍んでグリアさんに借りてそのうち返すしかない。天空闘技場でもいければ返せるだろう。

 「すまないグリア、申し訳ないがハンターになったら返すから……お金を貸してくれないだろうか」
 「気にしなくてもいいわよ。事情が事情だしね」

 グリアさんは俺たちが飛ばされてきたという事は知っているからな。ただそれでも男が女に金を借りるというのはフェミニスト的な感情かもしれないが、しちゃいけないと思ってしまう。男二人そろってこれではな、マダオ(マジでだめな男k)といわれてもしょうがない。
 そうこうしている内に遠くのほうに街が見え始めた。俺にはゴンみたいな異常な視力はないのであまりしっかり見えないが独特の景観だ。日本っぽくないな。
 
 「あの町の名前はなんていうの?」
 「……そういえば知らないわ」

 先行き不安に思いながら走って街に向かう俺たちだった。
 
 

-4-
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