小説『親父と一緒にいきなりトリップ【H×H】』
作者:プータ()

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 第五話 海×誘拐



結局三時間近く走りっぱなしで街に到着。【纏】のおかげかあんまり疲れなかった。
 街並みは昔テレビで見たハワイに近いものだった。少しとおくには海も見える。潮の香りも混ざり、一種のリゾート都市のようだ。街の名前はパグナリアだった。
 グレアさんに聞くとこの国は小さいが常夏の国のため、旅行や観光に来る人が多いらしい。特に冬場は(今は12月だ)多いといっていた。ただここに来るお金持ちなんかを狙った犯罪もあり治安はほどほどに悪く、柄の悪い人なんかもいるため、そこらへんは気をつけないといけないらしい。

 「この水着はどうかしら」
 「最高だ、似合ってるよグリア、このまま……」

 今は街のショッピングセンターに居る。外見も中身も日本で見たところとそう変わらないが、文字が全く違うためここは日本じゃないんだなとわかる。
 今はグリアさんが水着を選びそれを親父が見て鼻を伸ばしているところだ。やや興奮しすぎな気がしないでもない。「このまま……」のあとはなんだろうか、教育上よろしくなさそうだ。
 俺は自分の水着を選び終えたらそそくさと水着を親父に渡して他人のふりをした。二人のピンクの空間に居たくはない。ちなみに選んだ水着は青いトランクスタイプの水着だ。
 ふと視界の隅に俺と同じぐらいの子供が居る。白いワンピースにサンダルを履いていてショートカットの少女、髪の色は黒だ。カラフルな髪色の人ばかりだからか、やけに目につく気がする。やや地味な女性用水着を数点手に取りどちらがいいか悩んでいるようだ。どうやらそこがおきに召さなかったようで他のところへ行く。お店の中の端っこのなにやらいかがわしい水着のところだ、大事なところに穴が開いていたり、紐だったり。

 「ちょっとまったあぁぁぁぁ!」
 「え?」

 それはまずいんじゃないかと俺は止める。明らかに小さいお子さん禁止の所に特攻していこうとする少女はとめておいていいだろう。いやとめるべきだ。

 「ここから先は子供は禁止だ、水着ならまだあっちのコーナーにあるから」
 「でも、あっちに行きたい」
 「いやいや、あそこは大人になってからの場所だから」
 「何で?」
 「え?」
 「何で大人になってからなの?」

 純真な眼で俺を見つめる少女。ただ疑問に思ったことを聞いただけなのだろう。だがその質問はなんと答えればいいのか悩む。

 「親御さんに聞けばいいんじゃないかな……」
 「お父さん?お母さん?どっち?」
 「え?えーと」

 しるか!でもどっちだ?こういうのは同姓かな?うんそうしよう。

 「お母さんかな」
 「そっか」 

 そのままぺちぺちとサンダルを鳴らしながら歩く女の子。そのまま何故かまた大人コーナーに特攻して行く子。頭が痛い……馬鹿なのかなあの娘。

 「ちょっと待とうか」
 「なんで?」
 「そこには行かないほうがいいって行ったじゃん」
 「あ、忘れてた」
 「忘れんなよ!アホか!?」
 「でもあそこにお母さんとお父さんが居る」
 
 マジかよ。子供ほうっておいてこれかよ……。まともな大人だろうな?つか大人コーナー行くなら子供はつれてくるなよな。

 「うーん、じゃあここで待ってなよ」
 「でも暇だし」
 「あーじゃあ俺とここで待ってよう、そっちは大人になるまで行っちゃだめだからさ」
 「……わかった」

 この子危ないなー。ここに居たら誘拐でもされるんじゃないかな?アホっぽいし、物忘れやばそうだし。

 「君はここには旅行で来たの?」
 「そう、最後の思い出にだって言ってた」
 「最後の?」

 おいおい、最後って物騒だな。いったい何だ?自殺?なんとなく違うな、それなら大人コーナーってのはおかしい。

 「……最後ってどういう意味?」
 「新しい親に貰ってもらうって言ってた」
 「新しい親?」
 「そう、今の親は5回目の親」

 聞けば彼女の本来の親は事故でなくなってしまったらしい。本人は顔も覚えてないみたいだ。それから引き取られたのだが、新しく引き取った人がろくでもない親で暴力を振るったり犯罪をしたりと色々していたみたいだ。いまは刑務所らしい。その後も似たような感じで親が変わり、今の親は一応まともらしいが何故かまた新しいところに引き取られるということらしい。それで最後の思い出でこの旅行を来た、という事らしいのだ。なんともいえない話だ。しかしちょっとおかしいような気がするな。なんというかきな臭い?

 「今の親って引き取られてどのくらい?」
 「半年ぐらいかな」
 「親と仲いいの?」
 「別に、あんまり話さないし、一応はお母さんとお父さんって呼んでるだけだし。でも今迄で一番ましな人たちだと思う」
 「……そうか」

 なんだか引っかかる。たった半年、それで最後の思い出。ほとんどかかわらない親。いきなり引き取られる。ここか現実ならいいがこの世界的には大丈夫なのだろうか……

 「そういやいまさらなんだけど、俺にこんな事話てよかったの?」
 「さあ?」
 「さあって……」

 この子感情表現が薄いし、思考能力も低いな。10才くらいってこんなもんだったかなあ?俺も親父に引き取られるまでは虐待されてたからな、なんとなく気になる。この子の場合は今現在は暴力等は受けてないみたいだけど。

 「学校は行ってる?」
 「行ってない」
 「じゃあ通信教育は?」
 「それ何?」

 はい決定。つまりは教育を受けさせてもらってないのか、今の親もろくなもんじゃないかもしれないな。

 「シズク!」

 俺と少女が話している所に四十台手前ぐらいの女性が来る。その後ろには俺を観察しているかのように男性が歩いてくる。多分この二人が少女の保護者なのだろう。だが二人とも金髪だ。血縁かも怪しい。シズクというのはこの少女の名前なのか?聞いた覚えがあり一瞬気が遠くなるが本人だと決まったわけではない。

 「水着は選んだかい?早く海に行くよ!」
 「はい」

 そのまま近場の子供用水着を一つ手に取りもって行く。最初に彼女が選んでいた少し地味な水着だ。引き止めて水着を選ぶ時間を削ってしまい申し訳ないことをしてしまったと思う。そのまま彼女はこちらへ来た。

 「名前なんていうの?」
 「ジュンだよ」 
 「そう、私はシズク、ばいばい」
 「シズク、早く」
 「いまいく」

 そのまま彼女は親のところへ帰っていった。もしかしたら初めての原作キャラなのだろうか?眼鏡もないし髪形も違う、元が二次元キャラから三次元に変わった世界だからわかりにくい事この上ないな。でもそうなるとこの後何かがあって幻影旅団に入るような何かがあったと考えるべきだろうか?だがあの馬鹿っぽさからほいほいついていってしまった気がしないでもないな。

 「純がナンパして女の子に逃げられた!」
 「違うわボケ!いきなり出てきたと思ったら何をおしゃっるこのくそ親父は!明らかに年齢がやばいでしょう!」
 「またまたー、どうせあと五年ぐらいたったら可愛くなりそうだなーとか思ってたんだろう?今のうちからつばつけとくなんてやるねー」
 「死ね、土に返ってろ」

 確かにシズクだとしたら可愛くなるのは間違いないだろうし、違ってても将来有望な少女である事に変わりはないが……
 
 「水着も選んだし行きましょう、ここ水着売り場だし恥ずかしいわ」
 「「はい」」

 苦笑しながら俺たちを諌めるグリアさん、周りの人もやや苦笑気味だ。

 「「失礼しましたー」」

 そのまま二人とともにそそくさと水着売り場を後にしたのだった。



 「おおー」

 海まで来たが、元の世界と変わらない海が広がっていた。だがこっちのほうが圧倒的に綺麗だ。ここが観光地になるのもよくわかる。

 「親父はそろそろその鼻をどうかしようか」
 「何が?」

 さっきからグリアさんを見つめて鼻の下を伸ばしっぱなしだ。確かに綺麗なのはわかる。このビーチにも美人は居る、というか全体的に容姿が整った人が多いが、その中でもグリアさんは頭一つ飛びぬけて美人だ。
 俺はレジャーシートとパラソルを建築中だ。
 「そこの姉さん、俺と一緒に遊ばない?」

 ふとチャラそうな男が グリアさんをナンパしに来た。だがしかしその人に手を出すのは得策ではないぞ。

 「連れに何かようかい?」

 声をかけた男に向かって錬をする親父、もちろん威嚇のためだ。そのオーラに押されてかすぐさまチャラ男は消えた。親父の目が血走ってるもんな、そりゃ怖いわ。

 「俺は少し泳いでくるよ」

 そう言って俺は海に行く、親父とグリアさんの桃色空間には居たくないし。それにもしかしたらさっきの子に会える可能性がある。あの子も産みに行くみたいだっし。
 砂浜を歩きながらシズクを探す。彼女があの幻影旅団のシズクなのかどうなのかはともかく、あの親が気になる。なんともいえない感だが。
 ふと砂浜の一角が騒がしくなっている事に気がつく、警官っぽいのも居るようだ。その近くの野次馬に聞いてみると、なんでも誘拐が合ったらしい。しかも最近は頻発しているようで何人も被害者が居るようだ。だが不思議な事に男女関係なく、身代金の一つも要求はないので、人身売買のための誘拐ではないかという噂があるらしい。

 「ありがとう」
 「ああ、君も気をつけて」

 そのまま野次馬から離れると視界の隅に黒髪の少女が居る事に気がつく。シズクだ。

 「よっさっき振り」
 「うん」
 「よければ一緒に遊ばないか?」
 「いいよ」
 「じゃあ泳ごうぜ」
 「……」
 「どうした?」
 「私泳げない」
 「そうなのか?」

 最後の思い出なのに、泳げない海にはこないだろう普通。まあ泳ぎを教えるとかならあるかもしれないがそんな様子もなさそうだし。

 「じゃあ、俺が教えてやるよ」
 「いいの?」
 「ああ」

 そのまま手を握って海のほうへ。この子が同年代の女の子だったらあれだが、この子はどう見ても10歳前後だ。気にする事もない。
 
 「水に顔つけられる?」
 「出来るよ」
 「じゃあもぐってみようか、それでどのくらい息が続くかやってみよう、目を開けられたらなおいいな」
 「わかった」

 手をつないだまま潜るシズク、てか素直すぎるだろこの子。ものすごく不安だ。無駄に俺の庇護欲を誘うのはなんなんだろうな。原作キャラのほうはあまり印象のないキャラだよな、デメちゃん具現化してるのは覚えてる、後は蟻編で下着姿になったな……おう、俺のマイボーイが!その時、シズクが水から頭を上げた。

 「お、おお一分ぐらいは出来たんじゃないか?」

 じとっと俺のこと、詳しく言うと俺のトランクスの所を見てくるシズク。まさかばれたか!?だとしたらものすごく恥ずかしいとかそういうレベルじゃなくて、軽くわいせつ物陳列罪レベルなんだが。一つ救いがあるとすれば俺はいま10歳程度の外見だという事か。

 「それなに?」
 「そ、それって?」
 「水着の中に何か居る」

 それは俺のちryげふん、どうしよう、ばれてーら。ごまかせ俺!

 「なんでもないよ」
 「でも」 
 「はは、それよりも潜れたら次はバタ足だ、俺が手を支えるから練習しよう」
 「……わかった」

 ごまかせたか?まあとにかく泳ぎ方を教えてごまかそう。
 暫く泳ぎを教えているとわかるが、この子運動神経はかなりいい。泳ぎもわりかしすぐに覚えたし。ただ俺が覚えた時よりもかなり早いのが俺のちんけなプライドを刺激した。これがこの世界のデフォルトの身体能力なのだろうか?それとも将来の旅団候補だからか?出来れば後者であってほしい。
 結局二時間近く水泳教室をしてわかった事は、この子には水泳の才能があったということと俺のちっぽけなプライドを叩き折られたという事実のみだった。

 「水泳って楽しいね」
 「そうかよかったな、まあこれで溺れる様な事はないだろう」
 「うん、でもそろそろ帰らないと怒られるかも」
 「あっそうか、もう結構泳いでたもんな」
 「うん……」

 心なしか寂しそうに俯くシズク。実際寂しいのかもしれない、学校に行ってないって事はこういった遊びなんかもしてなかったかもしれないし、この子日焼けとかもした事ないくらい肌が白い。今は日焼けで赤くなっているが。

 「なあ、シズクはいつまでここに居るんだ?」
 「二泊三日って言ってたから、明日まではいる」
 「そうか、なら明日もまた一緒に遊ぼうか」
 「いいの?」
 「もち!」
 「じゃあ遊ぶ」

 妹とかいたらこんな感じなんだろうか、上目ずかいで少し笑ってもじもじしているシズク、可愛いな。

 「そういえばしずくは何処に泊まってるの?」
 「ここから見えるホテル、あれ」

 そう言って一つの建物を指すシズク。外見はここらのホテルでも一番いいと思う。だがあの保護者達からしたらグレードが高すぎやしないだろうか?身なりや態度からして富裕層には見えなかったと思うんだが。
 
 「ふーん、じゃあまた明日海で会おう」
 「また明日」

 手を振ってわかれる俺たち。そのままそれぞれの親のところに行く。

 「見てたぞー、やるじゃないか純、さっきの子にまたアタックしにいくなんて」
 「懲りないなくそ親父」
 「もう、そんなにからかったら可愛そうよ、円まで使って見てたりして」

 また見ていたようだ。しかも円まで使って。うざすぎるぞこいつ。

 「私たちもあの子と一緒の宿に泊まりましょうか」
 「家のほうはいいの?」
 「あんなところ人は来ないわよ」
 「それもそうか」

 そのままシズク達と一緒のホテルにチェックインした。
 翌朝ロビーで警察を見かけ事情を聞くと、誘拐事件があったという。被害者は少女、名前はシズク。黒髪の彼女だった。

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