翌々日の朝、俺は捜査本部にいるひとみの父に携帯で電話をかけた。
「もしもし。」
「おはようございます、星野です。今日からハッキングを始めるので、今からそっちに行ってもいいですか?」
「分かった。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
「それではまたあとで。」
「はい、またあとで。」
そして俺は電話を切り、必要なものをかばんに入れて、電車で捜査本部に向かった。
俺がキーカードを使って捜査本部の中に入ると、ひとみもいた。
「秀の雄姿を観たくてここに来たんだ〜。いいでしょ?」
ひとみの父がひとみに懇願されて連れてくることになったんだろ。
「いいけど、いい子にしてろよ。」
「子供扱いですかっ。」
つっこみを入れるだけで嫌そうな顔はしない。そういうところがひとみの可愛いところだ。
「すでに捜査員がBBCのネットワーク上での居場所をつきとめている。が、
飽くまでもネットワーク上。これ以上被害者を増やさないためにBBCのコンピューターシステムを破壊してしまってほしい。」
「分かりました。情報を盗みながらの破壊でどうでしょう?」
「それは素晴らしい。情報まで手に入るのか。」
「スピードに変わりはありませんから。」
俺は、パソコンに向かい、捜査員に教えられたとおりにし、BBCの入り口に辿り着いた。
背後にひとみの気配を感じるが、
彼女とは気の知れた幼馴染で、その視線を負担に思うことは全くない。
俺は座り直した。
BBCのセキュリティーシステムによる経路のシャットダウンが始まった。
ここを素早く切り抜ければ、中に入ることができる。
セキュリティーシステムをロックする方法もあるのだが、それに失敗したら、
再度侵入を試みることは不可能だ。
ここは無難に、強行突破の道を選ぶのが先決。
俺は素早くキー操作を始めた。BBCのセキュリティーと生身の人間の戦い。
不利なのは分かっていたが、チャンスは残しておかなければ。
「くそっ!!」
俺はBBCのコンピューターシステムに侵入することができなかった。
あまりに悔しくてパソコンの乗ったデスクを右手でバンっと叩いてしまった。
横でひとみもため息交じりに
「あーーー。」
と悔しそうにしている。
落ち込んでいると、ひとみの父が俺の肩をポンと優しく叩き、
「よく頑張っていた。仕方がない。」
と慰めの言葉をかけてくれた。
「・・・・、いえ、まだチャンスはあります。」
「もう一度やってみるか?」
「いえ、今ので俺精一杯だったので、今度はセキュリティーシステムをロックして中に侵入します。
これにはリスクが伴います。失敗したら二度と侵入できなくなります。」
「そうか。自信はあるのか?」
「五分五分・・・、ですが、なんとかやってみせます。ちょっと作戦を練る時間をもらっても構いませんか?1週間ほど。」
「分かった。」