小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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…とは言ってみたものの…
事件概要はいまいち分かっていない。
彼女の話を聞きながら探っていくか。

「…お手を煩わせて恐縮ですが、ここに秋桜さんを疑う理由を書いていただけますか?」
私はペンと手帳の1ページを破って差し出した。
「はぁ〜い…」
そう言うと井原はさらさらと何かを書き始めた。

…10分後。
そんなに時間かかるか?と思いつつ私は彼女の手つきを見ていた。
「できました〜これだけですねぇ〜」
私は彼女からページを受け取った。
…私は絶望に苛まれた。
いや、別に勝ち目がないとかそういうわけではないのだ。
字が…読めない!
丸文字にもほどがあるだろう…
「?どうした、花茂芽。俺に貸してみろ…」
そう言った正治は無言の私の手からその紙を受け取った。
…正治も私と同じだったようだ。顔をしわくちゃにしながら読んでいる。
「なになに〜俺も読みたい〜。」
能天気な声とは裏腹に雑用の顔は真剣そのものだ。
正治はその雑用にメモを差し出した。
一番脳内年齢最年長の雑用には無理だろう…
「…フッ。これだけかw浅いよ、井原さん。」
…え?読めた!?
私はびっくりした。それはもう…
そして嘲笑するように雑用が何か言っている。だがその顔は別人だ。
不敵な笑みを浮かべたあいつの顔は自信に満ち溢れていた。
「ええ〜まだこの女性の方が役に立つと思いますよぉ〜?私はぁ〜」
「そんな大口叩いていられるのも今だけだよ。君は俺の苦手な人間だ。すぐ絶望に引き込んであげるよw」
…恐い!
声といい台詞といい…
だが今はあいつに…来井にかけるしかない。
私はそう思い、彼らのやり取りに耳を傾けることにした。

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