小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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「春さんは犯人ではない…どういうことでしょう?」
「…彼女は…そんなことしません…あの人だけは!」
「…春さんを信頼してらっしゃるんですね…ですが根拠がなければ…」
「根拠ならあります。」
「…!どういうことでしょう?」
「あの人はハンカチを持っておりませんでした。したがって凶器の指紋を拭き取ることはできません。しかもフォークで刺されていたはずです。フォークで刺されたなら返り血を浴びるはず。それを拭うには時間がかかります。そんなことしていたらほかの人に見つかってしまうでしょう?」
…完璧な推理だ。確かにそのとおりだ。
「…」
来井が何か言いたそうなかおをしている。
「…来井、どうしたのよ?」
「え?あぁ、うん。いや、なんで…」
そこまで言ったところで向こうから走ってくる足音が聞こえてきた。
「す〜ちゃ〜ん!」
「あ、兎螺!なんでここに…」
走ってきた子どもは天木に抱きついた。
「あの…その子は?」
「あ、ああ。この子は私の甥の天木 兎螺(あまき ばにら)です。今日は母親がいないから私が預かってて…兎螺、ちゃんと待ってなさいっていったでしょう?」
「あのね、さっき廊下でね、おじさんがわんちゃんくれたの〜」
「お…おじ…さん…!?」
来井がショックを受けている。どうやらさっきバルーンをあげた子だろう。
「あ、それよりだ。花茂芽、この子が一番大切な証言をしてくれたんだ。聞いてごらん。」
そうだ。子どもから証言を聞いたと来井はさっき言ってたな…
「兎螺君、あの…このおじさんにお話したこと、私にも話してくれる?」
「お…おじさん…」
「うんとね、廊下ですーちゃん探してたら、お姉さんがハンバーグ運んでたの。」
「そのお姉さんの顔ってわかる?」
「ううん、帽子かぶっててわかんなかった。でもね、バッグからキーホルダーが出てたの。お兄ちゃんとお姉ちゃんが写ったキーホルダー。」
…!これは…もしかして…!
「来井…これ…」
「そう。おそらくお兄ちゃんとお姉ちゃんっていうのは春と架令のことだろう。」
「兎螺君、それっていつごろのことかな?」
「お昼くらい!」
「そうか…ありがとう。それじゃ、私たち行くね。須照美さん、ありがとうございました。」
「いえ。それでは。」
「じゃ〜ね〜。」
私たちは厨房をあとにした。もう一度推理を練ってみよう…これは…とんでもない事件かもしれない。私はそんな感じがしていた。

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