小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

―探偵事務所 花茂芽―
私は新たに建てられた探偵事務所で今、テレビを見ている。
その画面には、今マスコミを騒がせているある事件が映っていた。

有名絵本作家の春 秋桜(はるの こすもす)が問題のある絵本を世に送り出したと言う事件だ。
事件が発覚したのは数日前、その絵本を手にした出版社の職員が気づいたことが始まりだった。
その内容がとても子どもに見せられるようなものではなかったのだ。
中を読んでみると、とても残酷な描写がされていた。
OKサインを出したという人物は、この事件の発覚直後、姿を消した。
出版社は謝罪会見を開いたが、その意味はほとんど無く、相変わらずその会社は叩かれ続けている。
第一あの有名な秋桜さんがあんな本を書くなんて…
私はにわかには信じがたかった。

「大変だねぇ…なんだっけ?『ふしぎなおともだちのはなし』だったっけ?」
能天気な声で私にそう話しかけてきたのは私と一緒に探偵業をしている知場 正治だ。
前の事件で親に見放され、ショックを受けているものかと思ったら、案外そうでもないらしい。
もうきれいさっぱり忘れている。

テレビを見ているとドアに付けておいたベルがなり、ドアが開いた。
「…!?誰か来た!」
私はその人物に近づいていった。
「ようこそ、染月探偵事務所へ。今回はどのようなご要件で?」
その人物はフードを深くかぶり、サングラスを掛け、マスクをしていた。
(明らかに私に追い詰められる人が来ちゃったじゃない…)
怪しいというか、不審者というか…
「…君、看板は自分で作ったのかね?」
…どういうことだ?
と言うよりこの声。地獄からはい上がってきた亡者のような声…
どこかで聞いたことがある…
まさかね。
そう思いつつ私はその人物に尋ねた。
「あの…お名前は?」
「ああ、俺か?俺は…」
そう言った瞬間、正治がその人物に飛びつき、サングラスをとった。
「やっぱりお前か…その声、お前しかいないだろうが。」
正治も同じことを考えていたのだろう。
そういうと正治は奴のサングラスをもったまま、またソファーで眠りに落ちた。
だがなぜコイツがここに?
ていうか来れるの!?
そう、私が考えたのは…
ピエロだ。狂ピエロ。この世界の作者。
「なんでここにあんたがいるのよ!ありえないでしょ!ここあんたが書いてる小説の中よ!?」
「うん、入ってきた。やれば出来るもんだねw」
「出来るもんだねwじゃないわよ!あんたここにきて何するのよ…ただでさえ探偵事務所作られて…ていうか、さっきのセリフなによ!『君、看板は自分で作ったのかね?』って…」
「自分で見てきなよwすぐわかるってw俺の嫌がらせがwww」
私はすぐ外に出て、看板を見た。そこに書いてあった文字は…

来井探偵事務所

私は黙ったまま歩いて事務所にはいり、奴の顔をビンタした。
「なによあれ!来井って…あんたの名前じゃないの!」
「俺が作ったからねwいいじゃないw俺も手伝うからw」
「今すぐ直しなさい!染月に直しなさい!」
「嫌だよぉ…だって俺のだもん…」
「な・お・せ」
「はい、承知しました。」
奴はすぐに外へ走っていき、ものすごい速さで帰ってきた。
「ハァ…ハァ…直して…きました…ハァ…」
「よし、OK」
「あんまりだ…俺作者なのに…」
「てかあんた、本当に探偵するの?」
「あ、うん!毎日暇だから…お願い。」
「別にいいけど…狂ピエロって名前呼びにくいのよ…なんて呼べばいい?」
「来井 非得炉(くるい ひえろ)。上か下の名前で呼んで。」
「わかった。雑用ね。」
「…人の話聞いてない…」
私達がそんな話をしていると電話がなった。
「…お客さんかい?早速忙しいねぇw」
能天気に雑用がなにか言っている。
「だから雑用じゃない…」
「なんで心の声が聞こえるのよ!」
「だって…作者だし…」
あ、こんなことをしている場合ではなかった。
電話に出ると…
その内容は、最初の依頼についてだった。

-2-
Copyright ©狂ピエロ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える