小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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―夜烏ビルエレベーター 花茂芽―
私、このトライアングルをずっと歩いてるような気がする…春の楽屋、厨房、現場。まぁ仕方ないといえばそれまでなんだろうけど…
現場は当然だし、厨房には第一発見者がいるし、今回の事件のキーパーソンの春…
それよりも、今回の事件。難解だな…問題図書になぞらえた殺人事件…しかも被害者がその問題図書の関係者…
あぁもう!もういい。難しい事を考えるのは後にしよう。

―厨房 花茂芽―
私たちが厨房に入ると、まっさきに天木がこちらに駆け足でやってきた。
「来てくれたんだ!春さん…」
その喜びに満ちた顔は、私たちを発見した途端消えた。
「…と、染月さん方も。」
「どうも。」
どうやら私たちは歓迎されてないらしい…そこで私は春にあのことを。とハンカチについて尋ねるよう促した。
「それで?私のハンカチは?」
「え?ああ、うん!あの…失くなっちゃったんだ…」
幼い猫なで声で話す天木は言葉の語尾を濁した。そして目を背ける…
「…天木さん、ちょっと失礼するよ?」
そういうと来井はいきなり彼女のカバンに手を伸ばした。
「え!?ちょっと!」
しかしその声は遅かった。来井はカバンから布を取り出した。それは…

赤黒く汚れた、薄い黄色のハンカチだった。その隅には英語で「HARUNO」と刺繍されていた。
「これは…どういうことかな?天木さん?」
天木さんはその静寂を守るように、うつむいたまま小さく話し出した。

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