小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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―紅葉出版社客人室 花茂芽―
私たちは中まで入っていくと、すでに三人は中に入って話を聞いていた。その対する人物は女性で、背は井原くらいで眼鏡をかけて、大人の女性っていう感じだ。
普通こういうのって主の刑事とその助手みたいな二人でやるようなイメージがあるのだが、まさか五人でおしかけることになるとは…
「えっと…今は何の話をしてたの?」
私は小声で正治に聞いた。
「今は架令の交友関係について聞いていたんだ。なんでもかなりのプレイボーイだったらしいよ。」
「あの…その方は…」
私と正治が話をしていると女性は私について疑問を抱いたようだ。
「あ、これは申し遅れました。私、染月探偵事務所の染月花茂芽と申します。」
「そうでしたか。私は架令の部下、鈴白 薺(すずしろ なずな)です。あなたも架令の話を?」
「え?あぁ、はい。そうです。ちょうど今お話されてたことなのですが…あの、架令さんの交友関係…特に女性で何かトラブル等ありませんでしたか?」
すると薺は一息ついて、話だした。
「こういうのって、言っていいのかわかりませんが…私、あの人と付き合っていたんです。」
…また面倒くさいことになってしまった。薺と架令が付き合っていた…?
「それは大変重要な証言となりそうです。もう少し詳しくお聞かせ願えますか?」
「ええ…私あの人と付き合っていたんです。先月から。それが今こんな状況になってしまいましたが…」
「その話はどちらから?」
「あの人からです。人がいなくなった出版社に呼び出されて…付き合ってほしいと。しかし…」
薺は話の最後を濁した。
「しかし、なんでしょう?」
私は食い下がった。
「しかし…あの人は春先生とお付き合いをしていたと、自慢のようにおっしゃってましたから…そのことが気がかりで。」
「それで、あなたはどうされたんですか?」
「もちろん断りました。あなたには春先生がいるじゃないですか、と。しかしあの人はしつこかった。あいつとは別れる、俺にはお前が必要なんだと…それで負けてしまって…付き合ったのです。」
「そうですか…ありがと…」
そこまで言いかけたところでいきなり来井が口を挟んできた。
「初デートで行かれたところは?」
「え?」
「初デート…行かれたはずですよね?どちらへ?」
私は意味がわからなかった。なぜ初デートで行った場所など…
しかし私のそんな考えも薺の答えで吹っ切れた。
「…縁中…神社ですが?」
室内の空気が凍りついた。縁中神社…これも重要な証言となりそうだ。私はこの話も食い下がることにした。

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