小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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―事件現場 花茂芽―
事件現場にはたくさん…とはいえないが、十数人の人間が集まっていた。無論、この中に犯人がいるわけなのだが…
「花茂芽さん、どうしたんですか?こんな夜遅く。」
最初に口を開いたのは須照美だった。
「いえ…今回の事件、やっと真相に辿り着きました。それより、兎螺君は?」
「…先程母親が迎えに来て帰りました。」
「そうですか。それではお話しましょう。この推理に辿り着いたその経緯を…」
私は深呼吸し、話し始めた。

「今回の事件で一番難しかった点、それは凶器でした。私たちは重大な勘違いを犯した、その元となったのは春さんの書いた問題図書でした。」
「私の絵本がですか?」
春が恐れるように聞いてきた。
「ええ。あなたの絵本が私たちの推理を心理的に捻じ曲げたのです。まず、警察が春さんを疑ったのはその凶器からでした。その持ち主は春さん、あなただからです。しかし本当の凶器は別にありました。それはこの…」
私は近くの甲冑からレイピアを抜きとり、続けた。
「レイピアです。このレイピア、凶器からはずされた理由はその切っ先でした。これは切っ先が一つです。しかし、死体についた傷は三つ…これは真犯人が最初にレイピアで刺した後、偽造工作でもう一度フォークで刺したから本来の傷を隠すことができた。その上私たちは必ず一度、あの問題図書を見かけました。その内容にはフォークが凶器となった殺人について書いてあった。そこで私たちは勘違いしたのです。これも犯人が作った偽造工作の意味です。そしてこの偽造工作をし、架令さんを殺した人物…それは、あなたですね?」
私はあの人に指を突き付けた。その指先にいたのは…

「ねぇ、天木 須照美さん?」
須照美は無表情で私のことを睨みつけていた。

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