小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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「ど、どうしたんですか?そんな剣幕で…」
「あなたは嘘が苦手のようですね。下手な嘘は命取りになりますよ?」
「だから嘘なんて…」
「秋桜さん、あなたがいつも本を出している出版社、本当にケータイ小説をしているのですか?調べれば分かることですが…見え透いた嘘、ですね。」

カァァァ…

銃が光る。どうやら正解のようだ。弾は勢いよく飛び出し、彼女の仮面を破る。
ただ、今回の仮面は割れやすいようだ。もう三分の一は割れている。
「…ッ!?」
「あなたに依頼したのは出版社ではなく、架令さんなのではないですか?」
「…なぜですか?彼に依頼されるようなことはひとつとしてない。彼が私に何を要求したと言うのですか!」
声が変わってきている。そうとう動揺しているようだ。
「もちろん、あの絵本ですよ。あの内容、架令さんが依頼して書いたものではないのですか?」
「…ッ!!?」
銃から再び光が飛び出し、彼女の顔めがけて飛んでいった。
もう一息だ。
「…あなたねぇ…言わせておけば適当なことを…」
「適当なこと?ではそんなに動揺することないでしょう?戯言と思って聞き流しておけばいいものを…」
「黙りなさい!私があの人に依頼されていた?だから何の理由があってよ!理由も聞かないでかくわけないでしょう?」
…正直それはわからない。だが、彼女の動揺から今まではいい線を行っていることが分かる。
彼女は理由を聞いてした?本当にそうなのだろうか?
何か別の理由は…
ふと彼女の胸ポケットに入っている写真のキーホルダーが見えた。
その写真の中には…
彼女と…架令?
これは…そういうことか!
「ふん、言い返せないようね。もういいかしら?私も疲れてるの。放っておい…」
私はその言葉を遮った。
「本当にそうでしょうか?」
「…どういうことよ?」
「理由が無いと小説を書かない、本当ですか?」
「ええ、私は疑り深いの。理由もなくかけだなんて…」
「いえ、あなたは彼の言うことを受け入れた。そうでしょう?」
「…何が言いたいの?」
「いくら疑り深いとはいえど、さすがに恋愛感情をもった相手に対しても警戒する人も少ないでしょう。あなたの胸ポケット、その写真なんですか?」
「…ッ!」
「その写真を見る限り、撮った場所は縁仲神社(えんなかじんじゃ)の境内でしょう。あそこは縁結びの神がいるところでしょう?なぜそこにあなたと架令がいるのでしょう?答えは単純です。あなたと架令は恋愛関係にあった!したがって、彼の言ったことに何も疑いを持たずあの文章を書いたんだ!!」
「…ッ!!!!!!!!!!」
最後の仮面が虚しい音をたてて割れていた。
その仮面の裏には…口を開けたまま立ち尽くす彼女の顔があった。

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