小説『ローズヒップは事件の香り』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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―通常世界 花茂芽―
「本当の事、話していただけますね?」
私は彼女に問いかけた。その質問に彼女はコクっとだけ頷いた。
「私は…彼に騙されてたのよ…彼の甘い言葉に…酔ってただけ…ただそれだけなのよ…」
彼女はぽつぽつと話し始めた。

「私と彼が出会ったのは2年前…出版社で出会って彼から私を誘ってきたの。あの時はてっきりいい人かと思って話してた…そこから関係が発展して…縁仲神社へ行ったのはちょうど去年の冬、雪の降りしきる寒い日だった。そこで写真を撮って記念にと、携帯電話に付けておいたの。だけど先週、あの男は裏切った。『新しく漫画を連載したいんだけど、書き出しがわからない。どうすればいい?』と。だから専門外なんだけど私が書いてあげたの…なのに、彼はそれを児童書として出版した…これが真実よ。」

そうか…あの文章はやはり秋桜が…だが何故?まだおかしい…
「そうですか…ですが紅葉出版社はそのような漫画出していませんよね?なのに彼は何故そんな要求をしてきたのでしょう?」
「私もそれは疑問に思いました。しかし彼は、知り合いの出版社で出すなんて言ってましたから…今思えばそれも嘘なのかも知れませんね…」
そうか…
信頼していた人物に裏切られる…これほどの苦痛はないだろう…
大丈夫だろうか?
「…心苦しい中、貴重なお話ありがとうございました。それでは失礼します…」
「…あの!」
立ち去ろうとしたその瞬間、秋桜が私を呼び止めた。
「どうされましたか?」
「あの…私、助かりますか?」
「ええ、私を信じてください。助けて見せましょう。」
私は笑顔で彼女にそう告げ、部屋を後にした。

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