小説『東方鬼蠍独拒記』
作者:寄生木()

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うーん、思うように書けないなあ…。

それでは、其の十五。どうぞ。




一部描写不足があったため加筆しました。

ごめんなさい、結構加筆を行いました。オレのバーロー……




あ、そうだ。アンケート第二弾を行うので、できればご参加ください。


其の十五。星熊童子と鬼蠍の勝負。それと…?





「―――ちっ!やり辛いったらありゃしない!」

「褒め言葉と受け取ろう。だが―――それは此方の台詞だ」

オレと星熊との喧嘩が始まり、周囲は再び熱気に包まれた。星熊は右頬に浅い切り傷を、オレは左腕に痣を負っていた。
だが、それと対比するように互いに攻め込めない事も、また事実だ。

―――オレの場合、星熊からすれば愚者の長さから近寄りがたく、安易に近寄れば防御不可の椿で斬り裂かれる。
星熊の場合、オレからすれば攻め方が一気に距離を詰め、乱打戦に持ち込む戦法の上、一発一発が相当重たい一撃を見舞われる―――

そういった理由で、互いに互いの距離を詰められずにいた。
…こういう一対一では使いたくは無かったが。

「―――悪いが、勝ちに行かせて貰おう」

「上等だね!存分に使ってきな!」

左腕を武器庫に突っ込み、椿を手放し、代わりに鷲爪を掴み、そのまま引き出し―――

「隙だらけだよ!」

「ぐっ!」

腹に真正面から蹴りを受けた。まあ、それも当たり前だ。あれだけあからさまに隙を晒していたのだ。寧ろ、この判断は正しい。―――通常ならば。

蹴りを食らい、後方数メートルに吹き飛ばされながら星熊の腹を狙って鷲爪の引き金を引く。バン!と爆発音と共に星熊は目を見開き、すぐさま横に飛び退いた。

後方に吹き飛ぶのも終わり、背を引きずる前に愚者を無理な体勢で地面に突き立て、そのまま宙返りの要領で着地する。が、どうにも余程あの蹴りが響いたのか、体勢を崩してしまった。

「っつ…なんだいあの変な鉄の塊は。穴から小さい礫が飛び出して来たよ…」

その声を耳に捉え、星熊の方を見れば、横腹の辺りを掠めるような形で僅かに破けていた。そこから流れ出す、少なくない量の血。

「―――まったく、あれを避けるとは、化け物か」

「ああ。鬼だから化け物だろうね。でも…今の、なんだい?あんな代物、私は生まれてこの方一度も無いけどねぇ…」

いつつ、とまだまだ余裕有り気で、転んでしまった好奇心旺盛な子供の様な声が帰ってきた。しかも、顔の傷はもう塞がっている様で、遅いながらも腹からの出血の量も減ってきている。
…元人間だからか、再生能力が人と変わらないオレにはとても出来そうには無い芸当だった。

「何。大した物では…あるか。永琳が作った物だし、下手な中妖怪なら十中八九一撃だしな」

「…無茶苦茶だね」

「…認めよう。では―――続きと洒落込もうか」

全力で踏み込み、彼我の距離を一気に詰める。左腕を再び突っ込み、椿に持ち替えて―――

「―――ふ!」

「―――くっ!!」

そのまま首目掛けて横に一閃する。星熊はしゃがんでこれを避けるも、そのしゃがんだ身体の目の前に迫っているのは、刃先が地面に沈み、まるで海に住む巨大な魚の背を連想させる様に迫る愚者の刃。

「甘いよ!」

「な!?―――ぐぅっ!?」

が、その刃は右の手首を掴まれ、愚者の進む向きは逸れ、御返しと言わんばかりに腹目掛けて赤い一角を伴った頭突きが繰り出された。
どすり、と貫かれる感触が伝わり、同じ感覚が背中にもあるという事は、角が貫通しているのだろう。

「うらぁ!」

「が、ああぁ!?」

そのまま頭を振るい、オレを投げた。コテツの時の様な状態だなと、意外にも冷静な自身の思考に驚きながら。
…にしたって強い。―――ちゃんと戦った訳では無いため、恐らくだが、八坂に次ぐくらいか、ほとんど同じ程か。はたまた、オレが衰えたのか―――星熊相手なら全力で戦っても殺し合いにはならないだろう。問題は、オレ自身だが。

「―――ク」

「…?どうした?降参かい?」

―――ああ、駄目だ。こんなに、こんなに、こんなにも―――

「―――ク、クク……クハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!こんなにも強いなら、或いは…」

「…!?」

星熊は不審そうな眼で警戒しつつオレを見る。だが、警戒を解いておらず、それでこそだ。そう思った。その強さに慢心せず、絶対の自信を持ち、真向勝負を好む、妖怪の種族―――鬼。
オレはその存在達に敬意を持って―――全力で戦おうと思う。

―――こんなにも、こんなにも強く―――楽しいのなら―――!!

「或いは―――全力で戦っても良さそうだ!」

「!?」

言葉と共に意識を集中させ、身体に妖力を纏わせ―――『悪鬼化』を発動する。
何時も―――とは言っても最後に使ったのは相当前の筈だが―――同じように、オレを覆うように妖力が発生し、右上半身から妖力が噴き出す様な状態になっている―――筈だった。

「―――つっ」

感じる筈の無い、右側の視界。それに真っ白い、焼きつくような『何か』が映った。愚者を持ったままの右腕で無い筈の右目のある位置を隠そうとして―――驚いた。
左目に映るのは、皮膚の剥げた痛々しい右腕でも無く、妖力が噴き出している様にも見える腕でも無く―――本来の腕の太さと全く変わらない、オレの妖怪時の姿の黒き鎧を模した様な―――若干の違いが在るとするなら、肘の先が淡い紫色となって尖っている―――真っ黒な右腕だった。

右手に持った愚者も、左手に持った椿も、変化していた。
愚者には正六角形の形状をした黒い鍔が付き刀身の片面に『縁断不愚者之大太刀』の字が彫られ、黒色の透明な妖力を纏っていた。
椿は刀身に花が彫られ、柄頭に紫色の縄が結び付けられていた。
そして―――右側の視界は回復し―――映る筈の無い右目の世界も、確かにオレは捉えていた。集中を解いても、元に戻る様子は一切ない。


…ふと、昔のオレとコテツの会話を思い出した。




『えーと、まず僕なんですが、元々動物は長生きすると自然と妖獣となったりして生きる事が出来ます。
自然界にいる妖怪たちの妖力に常に晒されているから、自然と妖怪になってしまうんだと思います。僕の場合は、ちょっと違いますけどね。
人間も主の様に妖怪になること自体は可能ですが、本当にごく一部のしかなれないうえに、人間は妖怪化してしまうと妖力を放出することが出来ないから死んでしまうと思うんです』

『妖力を放出できないから?』

『はい。人間は他の動物と違って霊力を扱うことが出来る。でも、霊力に慣れ過ぎているのが原因で妖力に身体が適応できないんだと思います』

『じゃあ、何で本来適応できないはずの人間であるオレがまだ生きてるんだ?』

『憶測に過ぎないんですが、妖力が溜まらないようにする為の出口…捌け口とでも言えば分りますか?』




…これは完全にオレが妖力に適応した―――つまり、完全に人間ではなくなってしまった(・・・・・・・・・・・・・・・・)という事だろうか。
いや、だろうか、ではない。そうなのだろう。
刀も、妖刀へと変貌を遂げたのだろう。
だが、その驚きも一瞬。

「それが、アンタの奥の手かい?」

「―――ああ。悪い、予想外の事が起きた。」

「いや、いいさ。じゃあ―――続きをしようか?」

「ああ―――」

ふと、ある言葉が頭を過ぎる。

鬼蠍。
オレの妖怪としての姿が人々に、妖怪達に、神々に語られ、気が付けば災厄という意味を含んだ存在。誰もオレの名を知らなかった故、そうゆう風に呼ばれる様になってしまった、もう一つのオレの姿。

ならば―――知らしめよう。
鬼蠍の名を。そして―――その本当の名を。

「―――我が名は数多泡沫!又の名を鬼蠍!恐れずして掛かって来い!」

再びオレは、星熊との戦いに戻って行った。






今私が喧嘩している相手―――数多泡沫とか名乗った妖怪の男は、私から見れば妖怪らしくないと、断じることが出来た。いや、この判断は私だけでは無い筈だ。そこらの妖怪以上に特異な―――半分皮の無い―――外面。見ていて溜め息が出そうになるほど華麗で、それでいて実戦で生きる苛烈極める剣技。何処か感じる人間臭さ。

でも、こいつを妖怪だと誰もが納得せざるを得ないのは―――その余りにふざけた量と密度だ。

そして今――――それが私との喧嘩の為にそれが使われた。それも正面から。
もしかしたら、杯を持ちながら闘おうとしなかったのはこうなるのを私の感が察知していたからかもしれない。それでも、何処か手を抜いていた私は、少し前の自分を殴り飛ばしたくなったね。

改めて泡沫を見る。
皮膚が無かった所は黒くて硬そうな物に覆われていて、唇は右側が無く、代わりに黒い牙の様な物が隙間なく並んでいた。顔の右側だけ見れば、黒い御面を被っている様にも見える。
右目の或る筈の位置には、淡い紫色の妖力で出来た小さい玉が収まっていた。

体が震えるのが分かった。恐怖―――では無い。
それは、明確な歓喜であり、感謝。それと僅かな怒り。鬼として―――私個人として正々堂々とした戦いを望む者として―――これ以上に無い最高の場であり、そんな場を用意して見せた存在に対する感謝。

―――勝っても負けても、こりゃあ何か礼をしなきゃいけなくなっちまったね…

そう考えて、考える事を止めた。いや、止めざるを得なかった。

「―――我が名は数多泡沫!又の名を鬼蠍!恐れずして掛かって来い!」

その声と共に辺りが一気に静かになる。

…まさか
まさか、
まさか。
まさか!
まさか!!

鬼蠍。
その名を知らない筈が無い。存在そのものが災厄として―――あらゆる種族分け隔てなく語られる―――存在するとされている、名無しの妖怪。
嘘を吐いているようには―――とてもでは無いが―――見えない。

昔から何度も憧れ、そして戦ってみたいと強く願い焦れた存在。
それが―――真偽の程は分からないが―――私の目の前に居る。

「―――鬼の四天王が一人!星熊勇儀、尋常に勝負!」

名乗りを上げ、私は彼我の距離を一足で詰め、渾身の右拳を黒い顔に叩き込もうとした。が、それは易々と避けられ―――

「―――避けねば死ぬぞ!」

「ッ―――あぐっ!!!」

―――怖気を感じて、その場から飛び退いた。だけど、それも僅かに遅かった。
右肩から腰まで、斜めに浅く斬られて―――いや違う!
斬られて出来た傷なんかでは無い。
僅かに斬られた筋から、抉り取る様に、服と私の体が、浅く、削られたかの様に―――抉られていた。

「…悪いが」

「な―――」

突如、身体が宙を舞った。下には短い方の武器を手放している泡沫の姿。直後―――左腕が巨大な鋏の様な、顎の様なモノに変貌した。

そして、その顎が僅かに開き、そこに、途方も無い程の妖力が感じられた。

拙い。あれを食らえば負ける―――!
本能がそう叫ぶ。空中に留まれる様に妖力で飛び続けられる状態にするも―――

ダンッ!ダンッ!!ダンッ!!!と、良く響く音をまき散らしながら、その長い髪を靡かせ、何も無い場所を踏み締めて―――そして。

「終わりだ」

私はその大顎に噛み付かれ、身体が軋む音を聞いた直後。
そのまま、黒色の妖力の奔流が見えた直後、私は意識を失った。








星熊が意識を失い、地面に下りてから元々緩めてあった『口』の力を更に緩め、右腕で押さえながらゆっくりと伊吹の横に降ろした。

星熊に対して行ったのは、簡単な事だ。
妖力を集め、逃げられない様に噛み付きながら固定してから、零距離で妖力を解放する。
オレが鬼蠍の姿の際に使える―――鬼蠍大砲とでも呼ぼうか。―――あれの威力が少し下がった物を直接ぶつける様な物だ。
ただそれだけの事。単純的故に直結的。威力は、想像以上だった。

それだけでは無く、オレの今の身体能力がどれほどの物かがよくわかった。
結果として言えば―――悪鬼化の効率を極端に良くした様な状態だということが分かった。また、オレの意思によって妖力が流れ出すかどうかが分かった事は、十分な収穫だ。

「…さて」

後ろを振り返る。そこには、今まで観戦に徹していた、無数の鬼達。星熊を運ぶ際、オレに道を譲り、オレはそこを通った訳なのだが。

鬼達の顔を見る。皆が皆、違う表情を浮かべているが、まるで何かを我慢するように落ち着きが無かった。
理由は、分かりきっている。
だからこそ―――乗ってやろう。

「命の保証は出来ないが、それでも構わないと考える猛者は、掛かって来い。相手をしてやる」

一瞬の無音。直後に―――

『オオオオオオォォォォォォォォォ!!!!』

―――鬼達は歓喜の表情で、歓声を上げた。

この日、オレはコテツと伊吹、星熊が目を覚ますまで、ずっと連戦で戦い続けていた。戦っていた鬼達曰く、『凄く活き活きしながら戦っていた』らしい。












えーまず、一か月くらい前のアンケートの結果を発表します。


結果…ヒロインは八雲藍に決定しました!
…ヤッヴぇえ、書けるかな………?

んでもって、アンケート第二弾に入りたいと思います。

「んなことやってねえでさっさと続き書け!文才無いくせしてよお!」

等と御思いの方もいらっしゃると思いますが、個人的な願望を叶える?機会なので。
まあ、お気軽に答えてください。

アンケート第二弾
?吉光を出しても大丈夫か。また、出してよい場合、どの外見にするか(申し訳ありませんが、分からない方は『鉄拳』で調べてください。なお、出る場合はヒロイン?は既に決まっているのであしからず)
?泡沫から、椿を失わせるべきかどうか。
?読者の皆様から見た、泡沫とコテツの印象。
この三つです。期限は十一月中。それではまた次回!

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