小説『東方鬼蠍独拒記』
作者:寄生木()

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すみません、真里の一人称を修正しました。



其の三。遠距離戦対策



永琳と過ごして更に一年ほど。今の所何か問題が発生したわけでも―――あると言えばある。それは『誰にも関わらずに過ごす』という目標がいきなり崩れ去ったことだ。正直、未だに何故あの時の自分が永琳を引き取るという行動に出たのか、ちゃんと分かっていない―――ない。

ただしそれは日常的な部分に限ってだ。最近、妖怪退治である二つのことが原因でここの所、苦戦することが多くなってきた。
一つは妖怪たちが妖力を使ってレーザーやら弾やらをまるで壁になる様な物量…弾幕とでも言えばいいのか。
まあ、呼び方はどうでもいい。とにかくあんなもの至近戦で食らえばほぼ間違いなく死ぬ。逆に距離をとっても、あくまでソレは遠距離攻撃。対してこちらは遠距離攻撃の手段を持ち合わせて―――いるが、それは『愚者』を使った所謂「空間切断」とでも言える代物であり、可能な限り使いたくはない。何故なら一回使えば確実に周囲に甚大な被害を及ぼすことがほぼ確約されているからだ。

と言うか、山の辺りで前に一度試したら、山の土台の部分を切ってしまい、結果山一つ崩れてしまったので、空間切断はあまり使いたくはない―――いない。

もう一つは、まあ、その、何だ…オレが自分の霊力使ってそういう遠距離攻撃が出来ないからだ。因みに永琳は普通に出来る。さっき言った弾幕もあれば、弓矢も使う。

だー、くそ。なんか恥ずかしい。

よって、

「永琳。頼みがある。オレに遠距離武器を作ってはくれないか?」

「いきなりどうしたのよ…できればちゃんと話を聞かせて。ね?」

今オレは自主的に、永琳に土下座しているわけだ。
というか、養子に土下座する養父…うん、相当シュールだ。

「実は…」


養父説明中………………………………………………




「なるほどね。要するに、私に遠距離戦対策の武器を作ってほしい、と」

「ああ、そういう事だ。オレがちゃんと霊力使って弾幕とか出せればよかったんだが…ごめんな。こんな父親で」

「ちょ、今そういう事は関係ないでしょ!?それに私たちは家族なんだからそんなこと言わないで!」

…はは、永琳にそれを言われちまうか。なんか今だけ親子関係が逆転してる気がする。

「…うん、そうだな。悪かった」

「分かればいいわ。それで、何か要望はあるかしら?」

要望…要望ねえ…。個人的には銃系統が望ましいけど、今この世界にある銃は拳銃のように片手で扱える代物では無い筈だ。あっても…確か前世で言うところのM4A1とかAK47ってやつとソックリな、片手で扱えそうもないようなものしかなかった。

「無茶な要望だった悪いが、弾丸の代用として霊力を使う事は出来るか?」

『戦闘中に弾のリロードなんかやっていたら確実に殺されるよな?』とたった今思いついたことをそのまま口にしてしまったようなものだ。
まあ、『無理よ』って断ってくれると気が楽なんだけどね?苦労させないし。…いや、銃作ってもらおうとしている時点で苦労させてるか。

そんなことを考えてたら、永琳から返答が来ないことを不思議に思って永琳のことを見ると――

「…………弾丸の代わりに霊力を…いやでも………………」

――永琳はブツブツ呟きながら、思考の海に没頭してしまっていた。
反応がなかったのはこういうことか。…てか考え込んでるって事は実現可能範囲内…?

若干永琳の頭の中どんな作りになってるんろうか。などと真面目に思案していたら永琳がいきなり立ち上がった。あと、目が研究者のそれになってる。

「ちょっと待っててくれないかしら。自分の部屋で紙に書いたりしてまとめた方が整理が付きそうだから」

「ああ。それじゃ今日は妖怪退治とかの依頼も入っていないし、今のうちに昼食でも作っておくか…」

時計を見れば既に十一時。あと一時間で正午だ。何もやることが無いときはオレがこうやってご飯を作っている。永琳もちゃんとできるが、本人曰く『出来はお義父さんより下』とのこと。そうでもない気がするが。

「あ、そうだ。何か食べたい奴でもあるか?」

「そうね…それじゃあ、から揚げを頼んでいい?」

「お安い御用だ。んじゃま武器の件、よろしく頼む」

「ええ、任せて。一週間以内に作り上げて見せるわ」

科学者として凄まじいことを言っている気がするが、これが永琳として普通なのだろうか?そんなことを考えつつ、昼食を作る為オレは台所へと向かった。












「…うーん」

今私はお義父さんに頼まれた銃の設計図を書いている。でも…

「うまくできないわ…」

どうしても納得のいく出来にならない。と言うか、お義父さんが霊力を使った遠距離戦が出来ないことを今さっき知ったので、驚くと一緒に納得もしていた。

「どうりで最近依頼から帰ってきたときに、ボロボロになっていることが多いわけね…」



一番酷かったのは三か月ほど前の大怪我だろう。

着ていた着流しに袴は、原型すら留めていなかった。左腕は折れ曲り、背中全体に大火傷、横腹は裂傷により左側の肋骨が数本見えてしまっていて、足も両方とも切り傷まみれ。更に、身体の至る所から出血。

そんな姿になって帰ってきたお義父さんの姿を視界に入れた直後から、私はお義父さんをうつ伏せに寝かせ、そのまま治療を開始した。

そんな時の第一声が「ただいま」と笑顔で言い。それだけ言ってお義父さんは意識を手放した。
血を流し過ぎたせいで体温はいつもよりあまりに低く、身体は痙攣し始めている。

私は近場の病院にすぐさま連絡し、私もそのまま治療室に入った。

自分の腕に自信を持っているからこそ、お義父さんが死なずに済んだのはすぐに輸血が出来た事と、元々持っている体力のおかげだと思う。正直、治療の途中でお義父さんの体力が尽いてしまえば、それまでだった。

治療が終わった後、私は腰が抜けてしまって立てなかった。
周りからは心配されたが、『大丈夫』と生返事を返すだけで終わってしまった。



その一週間後、お義父さんはようやく意識を取り戻した。本音を言えば、あと一か月かかると踏んでいたからこそ、改めてこの人の体力と言うか、そういう部分の異常さを実感した。

そして、私はお義父さんに抱き着いた。傷が開かないように優しく、それでも、しっかり。離さないように。

『………あ、れ?永…琳。ここ…どこ…?』

何か話そうとしたのだろうが、実質一週間ぶりに話すのだから、声は掠れ、舌がちゃんとまわっていないことが分かった。

『よかった…本当に良かった……』

『…ごめ…ん』
そう言いながら彼は弱弱しく空中に吊るされていない右腕で、優しく抱き返してきた。




その後は早かった。立てるようになってすぐリハビリを始め、僅か一か月程度で退院してしまったのだ。流石の私も、お義父さんが本当に人間なのか疑ったけど。

けど、怪我までは治りきっていないようで―――もしも治っていたら、妖怪認定するかしないか、本気で検討する必要性があったと思う―――とりあえず今までより依頼を受ける回数はやや減り―――というか最初の一か月に依頼を受けようとして、私が無理して止めた。それでも毎日欠かさず刀を振るってはいる―――最近は家に居ることが多い。今では殆ど治っていて、横腹が完全に塞がるのを待つばかりだ。

…ただ、今まで何故そこまでの大怪我を覆ったのか今日まで一切話してくれなかったけど。

「…片手で扱えるようにした方がいいかしらね?」

それなら刀と併用して使える―――そもそも、『愚者』を片手で振るえる時点でどうかと思うけど―――し、何よりいちいち武器を持ち替える必要性が無くなる。

「…そうね、そうしましょう。デザインは………………………………………………………………こんな感じでいいかしらね?」

よし、と設計にもデザインにも納得がいった所で作業を一旦切り上げる。時間帯的にもそろそろご飯が出来ているころだ。そう思っていると―――

「永琳。ご飯で来たぞー?」

―――丁度、お義父さんの声が台所から聞こえた。

「はーい、今行くわ」












「「いただきます」」

ただいま十二時半。お昼時真っ盛りな時間帯だ。丁度昼食もできたので永琳を呼んだらすぐに来てくれた。作業に熱中してるときは聞こえてない事が多々あるから、今回は珍しい。

「それにしても……」

「んあ?どうした?」

作った自分の分のから揚げを口に運びながら永琳の疑問に答える。何となく、永琳の顔が心配しているように見えた。

「何でそれだけの量で足りるの…?」

永琳が言ったように今オレが食べている昼食の量は、傍から見ても永琳の昼食の半分以下だ。

「まあ、良いんじゃないのか?オレはこの量で満足してるし、正直、これ以上食ったら戻しそうで怖い」

「…身体には気を付けてね?」

…なーんか、辛気臭い空気になっちまったなあ。どうしようか。
――よし、こういう時は話題を変えるに限る。

「あ、そういえばさ。依頼しておいてなんだが、調子はどうだ?」

「うーん、とりあえず設計とデザインは書き終えたわ……どうしたの?」

「はは…まだ一時間半しかたってないのにそこまで既に完成させてるって、どういう事なの…?」

驚きと言うか、呆れと言うか、もはやそんな感情しか湧き上がってこない。

「それにしても…はあ」

「どうした?そんなに作業が厳しそうなのか?」

「そういう訳じゃないわよ。ただ、こういう所はお義父さんには全然かなわないんだなーって改めて実感してるだけだから」

そうは言っているが永琳。普通に料理作れるし、美味しいと思うんだが。
…まさか。

「好きな男でもできたのか?」

「…何でそういう話になるのよ?そういう心算で言ったわけじゃ無くて、女としてどうなのかって思っただけよ。逆に、お義父さんはどうなのよ?」

永琳は楽しむ様な視線を込めてオレに聞いてきた。
…オレ?そういえば前世でもそういうやつは居なかったし、今ちゃんとした人間関係築けているのは永琳だけだし、そもそもそういう事に全く興味すら無かったからな…

「いないよ。と言うかそういう事全般に興味がない」

「…意外ね。てっきり好き人くらいいるものだと思っていたけど」

「今言っただろ?そういう事に全く興味が無い。結婚する気だって、子供を作る気だって全くない。まず、子供の作り方を知らない(・・・・・・・・・・・)」

まあ正確には忘れただけなのだが、忘れるくらいの事だし、思い出す必要性も無いかなーと。

「ムグッ!?げほ、げほ!!」

「ちょ!?だ、大丈夫か!?」

何故か、永琳がいきなりむせだした。喉にから揚げを詰まらせたのか!?そう思って水をコップに慌てて注ごうとしたら永琳に止められた。

「大丈夫よ…」

「…いきなりどうした?」

「う、ううん。本当に大丈夫…はあ…お義父さん、そういうのは人前で軽く言っちゃだめだからね…?」

そこまで行くと逆に不安なのよね…と、そんな言葉がボソッと聞こえたり何かよく分からないことを言ってたけど、別にどうでもいいか。



「……ごちそうさま」

「ご粗末さまでした。この後はどうするんだ?」

「そうね…研修所に向かうわ。流石に家にある物だけじゃ銃なんて作れないし。あ、何日か家に居ないつもりだから」

「はいよ。…その、悪いな。本当に……………」

「気にしなくていいよ。私たちは『家族』なんでしょ?」

そう微笑みながらそんなことを言ってくる永琳。
そうだよな、全く。オレはいつまでそういう事を気にしてるんだか。

「そうだな、うん。オレたちは『家族』だ」

「分かればいいわ。それじゃあ、行ってくるわね」

「ああ、行ってらっしゃい。気を付けてな」

そういって永琳は研究所へと向かって行った。











「みんな、お疲れ様。調子はどう?」

「「「「永琳(さん)(博士)(殿)(主任)!」」」」

お義父さんに銃の開発を頼まれた私は、自分の受け持つ研究所へと足を運んだ。
みんなは私の受け持つ部下たち―――とは言ってもみんな友達みたいな関係で、『天才』とか、そういう肩書きを関係なく接することのできる数少ない人たち―――だ。

みんなが私に挨拶をしてくれた直後、

「やーやー永琳!!ひさしぶりやなあ。一週間ぶりかえ?」

みんなの後ろから私よりやや背の低い(本人の目の前で言うと恐ろしい目に合うけど)藍色の髪を持った女性が出てきた。

彼女は真里。私の数少ない友達の一人で、初めて出来た友達であり研究所の上司。その割に私が呼び捨てにしているのは、真里曰く『そんなに堅苦しくされるとウチの方が困るよ』とのこと。あと、年齢が近い――今の私は十六で、真里が十八と言っていた――かららしい。

「うん!久しぶり…どうしたの!?顔色悪いよ!?隈も酷いし!!」

「?あーこれな?いやーウチ久しぶりに張り切ってもうてな。気が付いたら三日もたっとったんや」

「それって三日寝てないってことだよね!?研究は良いから今は寝ておきなよ!ていうより、何の研究をしてたの?」

「おー!よくぞ聞いてくれました!いやー実はなー、上層部からの依頼で新しい武器を作れって頼まれたんよ?」

――上層部。この町の権力者たちの総称で、私はあまり好きではない。何故なら、普通に何でもないように人体実験染みた依頼を運んできて、それを知っているうえで見て見ぬふりをするやつらが普通にいるから。

真里もそういう部分は嫌っているが、そういうやつらは彼女が押さえ込んでいるらしい。私もあまり人のこと言えないけど…。

「そんで、そんなこんなで依頼されてたモン作って、ちゃっちゃと終わらせたのはよかったんやけど…その時の研究してたモノが結構面白くてな?ついつい三日ぶっ通しでやってもうたんよー」

「普通、ついついの調子で三日もやらないと思うけど…それで?その面白いものっていうのは?」

「いやそれがなー?簡単に言えば霊力とか妖力を吸収して、あらかじめ設定しておいた通りのモノに変換することが出来るんや。例えば、霊力を別の物にー、とかな。凄いやろ?」

「――真里。それ、出来れば譲ってくれない?」

流石に生き物は無理やけどなーと、真里は『えっへん』と言いつつ胸を張って誇らしげにしていたけど、私の耳には届いていなかった。それがあればお義父さんの頼みごとも楽になるかもしれない。そう思って聞いてみたところ、

「?別にええで?ていうか何で……あー、成程なあ」

「む、何よ。別に変なこと言ってないでしょ?」

何故か真里はにやにや顔で私を見てくる。

「――いやなー、永琳のお義父さんは娘に愛されてるなあ思うて」

「な!!べ、べべべべべ別にお義父さんは今関係ないでしょ!?」

「ちょ!わ、分かったから。分かったからそんな近くで大声ださんといてーな!?」

「あ、ゴメン…」

「まあ、別にええで。それで?何でそれが必要なんや?」

「えーと…」

天才少女説明中…………………

「あー、そういう事な。通りで最近泡(うた)さん怪我することが多くなったわけや」

事情を説明し終えたら、真里は納得したような顔をしていた。
あと、“泡さん”って言うのは真里が考えたお義父さんのあだ名のこと。

「そういう事。だから、いい?」

「そういう事なら全然かまわへんで!むしろ泡さんにはいつもお世話になっとるしな。これ位お茶の子さいさいや!じゃあ、一緒に作ろうか?」

「その前に、真里はしっかり寝る事!分かった?」

―――このとき、この場に居合わせていた永琳の部下たちは皆似たような心境に立っていた。

まるで、手のかかる姉とその面倒を見ているしっかり者の妹のようだ、と―――












「―――にゃー」

「…ん?」

永琳が研究所に向かって一時間経つか経たないかくらいの頃。
縁側で寝そべっていたら、突然何かの動物と思われる鳴き声が聞こえた。

「聞き間違い…は無さそうだ」

何故なら、その鳴き声の主が、自らオレの目の前に出てきたからに他ならない。

目の前にいるのは子猫だ。毛並みは黄色にところどころ黒の斑模様が入っている――遠目から見ればチーターの子供にも見えなくはない。

「にゃー」

「んお!?どうした?」

そんなことを考えていたらその子猫がオレの足にすり寄ってきた。始めは驚いて変な声を上げてしまい子猫を驚かせてしまったが、ここに来てグルから貰った能力――と言うよりは体質に近いのかもしれない。オレの『他者に何もしなくとも嫌われる程度の能力』は頭の中で何となくわかるのだが、その感じが一切ない。なので、オレは能力ではなく体質と言っている――動物に好かれる体質のことを思い出した。

言葉通りにその体質は効力を発揮してくれたようだ。

「…なあ。子猫ちゃんよ。お前、親はどうした?」

「…にゃー」

そのことを聞くと――オレの勘違いでなければだが――子猫はあからさまに落ち込んでしまったように見えた。どうやら、親とはぐれたか、はたまた、親が死んでしまったか。どの道、途方に暮れていることだと思う。

「――お前の言葉が理解できるかと聞かれたら、俺には絶対無理だ。そうは言っても、お前もオレの言葉を理解するのは無理と思う。自分勝手でも言わせてほしい――行く当てがないなら、オレたちと一緒に暮らすか?」

「…にゃー」

その一鳴きと共に、子猫はオレの足から離れ――ジャンプし、膝の上に着地。そして今度は肩目掛けてジャンプ。そして―――肩に胴体を預ける様な感じで、肩の上に乗っかっていた。

「…凄いな。あっという間にそこまで移動しちまった」

「にゃー」

うん。やっぱり何言ってるのか分かりゃしない。でも、それでも良いか。

…あ、後でちゃんと永琳に相談しよう。勝手に飼うなんて言ったら怒られそうだ。
















丁度永琳が研究所に行って一週間が経つ。猫は今、オレの膝の上で丸くなってる。

「一週間で作るとは言ってたけど、流石に無茶だったかな…?」

「にゃー?」

「ああ。お前の事じゃない。気にするな」

永琳は自分から言った約束は絶対に破らない。だからこそ、無茶をしてるんじゃ無いかと心配になる。

あと、一週間この子猫と一緒に過ごして分かったけどコイツ、言葉を理解できてるんじゃないかと思う。さっきの会話みたいに(オレの聞き間違いでなければ)疑問符つけたような感じで鳴いてたし。
と。
そんな事を考えていると―――

「ただいま…」

「…永琳、おかえり。久しぶりだな」

―――永琳が帰ってきた。何やらアタッシュケースの様なモノを持っている。

「弾丸と火薬については問題なかったけど、問題は反動なのよね…あと、その猫は?」

「後で話す。それより何があった?と言うか銃は?」

「少し落ち着いて。これを作るときに真里にも手伝ってもらったんだけど、なかなか納得のいく大きさと威力にならなかったのよ。それで、そこまでいったはいいけど、今度は反動が強くお義父さんでも使えるかどうか…」

永琳は、はあ、とため息をついた。まあ、お疲れ。
でも、その反動っていうのは永琳には強すぎただけで、オレは大丈夫なんじゃ?とも思った。

「それで、銃はこれよ」

「コレ、か…」

そこにあったのは―――見間違いでなければだか―――『デザートイーグル』そっくり、いや、そのものの銃がある。
しかし、あるモノが足りないことに気付いた。恐らく、それが無ければ銃として成り立たないであろうものが。

「銃弾と、それを入れるマガジンが無い気がするんだが…」

と言うか、マガジンを入れる部分が完全に塞がってしまっている。
すると返ってきた答えは意外なモノだった。

「あ、それに関しては大丈夫。元々その銃には必要ないから」

「…スマン。流石に説明してもらわないと理解できそうもない…」

その後、説明を受けた。
要は、自分の霊力を銃に送り込むと中で弾丸と火薬が勝手に作られ、あとは引き金を引けば良いとのこと。
…製作に真里という天才という名のアホが関わってる時点で、いろいろカオスになる材料はかなりあったが、ここまで来ると、どう対処すればいいのか…。

試し撃ち――これは町の外にいる雑魚妖怪相手に頭を狙い撃ってみたところ、頭が原型を残さず吹っ飛んだ。あと、猫がオレから離れなかったため肩の上に乗っかっていたが、突然大きな音がなったせいか、危うく肩から落ちかけた――をしてみたが、反動は結構あったが撃てないほどではなかった。あと、セミオート(半自動式)だったので、いろいろ戦いのときに助かる。

それで、町に戻って使った感想を永琳に伝えたところ、ある一言を言い渡された。

「あ、あと名前を考えて欲しいの」

「名前?」

「うん。真里が言うには『永琳とウチの共同作なんやし、折角だからお義父さんに銃の名前つけて貰ったらどや?つけなかったら使わせへんで?』って」

はは。アイツらしいというか、やっぱり子供なんだな。根本的に。

「んー、名前、名前ねえ…てか、試し打ちの時点で決めてたんだけどな」

「そうなの?教えて?」

「――『鷲爪』だ。一発一発が獲物を捕らえる鷲の爪のように感じたから。だから『鷲爪』。どうだ?」

…正直、前世の記憶にあるデザートイーグルの名前から取っただけなんだけどな。まあ、いいか。

「それでいいと思うよ?じゃあ後で真里にも教えてあげないとね」

そんな感じで、オレは遠距離専用の武器、『鷲爪』手に入れた。

あと、永琳に猫のことを説明し「飼っていいか?」と尋ねたところ、「良いよ?」との返事をもらったので――名前はまだ決まっていないが――猫をうちで飼うことが決定した。



後日、『かっこええ名前つけてくれてありがとなー!』と叫びながら抱き着いてきたバカなのか天才なのかよく分からん奴が一名来て、とりあえず礼を言って置いた。
そしたら、『礼なら永琳に言ってな?あの子、泡さんの事大好きやし』とか言って、それを聞いていた永琳が暴走したが、あえて記さないでおくものとする。


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