小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第七話


 朝食が終わり午前の訓練が始まった。あの後リオとコロナを寮母のアイナさんに頼んだ。彼女も快く引き受けてくれた。後で何かお礼に作っていくか。

シ「ん? 葵か」

ヴァ「おぉっ。葵の旦那か!」

葵「よっ。ヴァイス、シグナム」

 私はフォワード陣の訓練を見に来てみたらシグナムとヴァイスに出会った。

ヴァ「葵の旦那も見学ですか?」

葵「ああ。といよりヴァイス。その旦那というのは止めてくれないか。年齢はお前の方が上だぞ?」

ヴァ「でも階級は旦那のほうが上ですよ?」


葵「階級など所詮はお飾りだ。いざ戦闘になった場合は前線メンバーの方が重要になる。階級が上に行けば上に行くほど安全な場所に座っている屑どもが多い」

シ「その分葵は前線で戦っていると思うが?」

葵「部下が不安というか、前線に出て的確な指示を正した方が確実だからな。というかシグナムは教えないのか?」

シ「私は教えることができんからな。古代ベルカ式ではなく近代になると勝手が違う。それに作戦みたいなもので教えることと言えば近づいて斬れとしか言えんしな」

葵「ふふっ。シグナムらしいな」

 笑いながらもシグナムらしい作戦にどこか安心してしまった。変わっていないことに。

シ「わ、笑うな///!」

葵「まぁ、それにしても・・・」

ヴァ「旦那は何か御不満でもあるんですか? 見たところなにもなさそうですが」

葵「問題はない。【魔法】に関してはな」

 今回の敵はガジェットだけではない。まだ六課に来て遭遇してはいないが【不の者】もいる。

葵「・・・・仕方ないか。シグナム訓練はあとどれ位で終わる?」

シ「後少しだが、どうかしたのか?」

葵「全員に教導する。私がな。お前も訓練着に着替えておくといい」

ヴァ「だ、旦那が!?」

葵「意外そうな顔をするな。こう見えても教導資格は取ってある。はやてにも伝えておいてくれ」

 そう言っているとなのは達がこちらに来た。

な「あれ? 葵君も見てたの?」

葵「まぁな。全員に一応通達しておく。午後からは私が教導を取る。隊長副隊長陣も同時に行うので覚悟しておくように。なおフォワード陣の強化も行う。以上」

 そう言ってその場を後にした。


SIDE残された者


な「・・・えぇええええええ!?」

ヴィ「あ、葵が教導を!?」

 二人がかなり驚いているが、

フェ「でも葵は確か教導官の資格以外にも執務官、特別捜査官の資格も取っていたよね」

シ「あぁ。実際見に行ったのだ。間違いはないだろ」

アイン「そうだな。だがなぜ急に?」

 以前から葵のことを知ってるメンバーは驚いてる者と冷静に判断している者二組に分かれているがフォワード陣はかなり驚いていた。

ス「あ、葵さんって三つも資格持っているんですか!?」

キャ「す、すごいですね!!」

エリ「カッコいいです!!」

ティア「そう言えば相手したの兄さんだったっけ。見たこともない魔法で腕もかなりたつって言ってたな」

 そう思っていると、

ヴァ「あ・・・あ・・ああ・・・」

ヴァイスが顔を真っ青にしてガクガクと震えていた。

ティア「ヴァ、ヴァイスさん?」

ヴァ「た、隊長たちとちびっこたちのことは生涯忘れません!!」

 そういって敬礼した。

アイン「ヴァイス。何を隠している」

シ「正直に吐け」

ヴァ「い、言ってもいいですが、訓練からは逃げれませんよ?」

フェ「え? 訓練と関係あるの?」

ヴァ「はい。実は以前友人から聞いたんですが・・・あ。そういえば特殊訓練校って知ってるか? ちびっこ達?」

ティア「はい。確か地上の地獄と名高い訓練校ですよね。とてつもなく厳しくそれこそ地獄と思わせる」

ヴァ「そう。そこの管轄は白。つまりガーディアンなんだ。でだ、よーく思い出してくれ旦那の所属部隊と部隊の役職を」

全員「・・・・!?」

 そう言われた瞬間全員の顔が一気に青ざめた。

ヴァ「お気づきで何より。そう。葵の旦那がその地上の地獄と名高い訓練校の校長でもあるんだ。頑張ってくれ!」


SIDE out


 午後。全員を一列に並ばせて、

葵「簡単に説明する。今回お前らに教えるのは基礎体力並びに武術だ」

エリ「ぶじゅってなんですか?」

葵「戦闘に関する術のことだ。ただ魔法ではなく鈍器や刃物、己が体を武器として戦う術だ」

ティア「でもなぜそれが必要なんですか?」

葵「要因はAMFだな。今はガジェットが魔法に対する防御法として使っているだけにすぎんが、もし広域結界並みのAMFを使用されたらどうする? また、【不の者】と対峙した時どうやって戦う? もし魔法が一切使えなかったらお前らはどう戦い、撤退するにしてもどう逃げる?」

全員「・・・・」

 全員黙り真剣に聞いている。

葵「そのための予防策だ。必要最低限のことだ」

シ「それは分かったがなぜここに集めさせたのだ?」

 そう。今いるのは六課の隊舎の玄関前。

葵「決まっているだろ。外周三十周だ」

な「えぇええええ!?」

は「結構な広さやで!? それを三十周!?」

フェ「でも魔法を「後これをつけてもらうぞ」なに、これ?」

葵「つけてみればわかる」

 そう言って全員がリストバンドみたいなものをつけると、

シ「なっ!?」

ヴィ「お、重い・・・」

ス「なに・・・これ・・」

葵「それは魔法の供給をオールカットする道具だ。今お前らは素の体重、素の力しかない」

キャ「素の体重?」

葵「まぁお前らは知らず知らずのうちに魔法で体重を軽くしてたりする。異常に早く行動できるのもそれが原因だ。体重計に乗ったそのままの体重というわけだな」

ヴィ「素の力ってのは?」

葵「そうだな。体験するのが一番か。ヴィータ。これを素手で壊してみろ」

 そう言って取り出したのは一枚の鉄板。

ヴィ「これを壊せばいいのか?」

葵「あぁ」

ヴィ「おりゃぁっ!!」

―ガンッ

ヴィ「・・・・・いってぇええええ!!」

葵「とまぁ、普通の女の子に戻るわけ。ヴィータこっちに来てくれ」

 そういって治癒魔法をかける。

葵「これでよしっと。つまりお前らの握力も所詮は魔法がない人と同じぐらいしかないわけだ。どれだけ魔力に頼ってきたかというのも実感するはずだ。この状態で今から出す指示に従ってもらう。で、まずは外周五十周。始め!」

は「増えとるで!?」

葵「ん? そうか。まぁ気にするな。気にしたら負けだ」

全員「えぇ!?」

 まぁ以外と土地が広いため一周でもかなりの距離になる。それを五十周するということは・・・まぁ、大丈夫だろ。で、終わると、

フェ「はぁ・・はぁ・・」

ティア「い、いがいと・・・きつい・・・」

葵「誰が休んでいいといった?」

な「にゃっ!?」

葵「次腕立て五百。その後スクワットも同数。始め!」

全員「ひぃいいいいい!!」

 その後全員を見て回り、

葵「スバル! 腰が落ちていない! 後百回追加!」

ス「ひぇええ!!」

葵「返事は「はい」か「了解」だ! あと百回回合計ニ百回!!」

ス「は、はい!!!!」

は(お、鬼や! 鬼がおる!?)

葵「はやて。お前もスバルど同数しろ」

は「な、なんd・・・りょ、了解!!」

 よかったなはやて。そこで拒否っていれば倍になってたぞ。

は「ひぃいいいいいいい・・・・・」

全員(はやて・スバル以外)(地獄の意味がわかった・・・・)

 声が小さかったらあと百回追加しようと思ったんだが。

 後ほかの連中もそれを口にしていたら倍の量をしてもらっていたぞ?

葵「次、背筋五百! 腹筋も同数!」

全員「はい!!!」

 その後も回数をこなしていき、

葵「今日はこれまで。一応これを渡しておく」

 そういって全員にスポーツドリンクとタオル、後は冷却シートを渡した。

葵「それを足、腕などに張っておけ」

 まぁアフターケアをしなければ体を壊し兼ねんからな。

アイン「こ、これを、毎日するのか?」

葵「当たり前だ。私がいる域まで来い! とまでは言わんが最低でもガーディアンの局員レベルまでにはなってもらう」

ヴィ「が、ガーディアンって訓練校卒業してんのか?」

葵「あぁそれが必須だからな」

エリ「はぁ・・・はぁ・・・が、ガーディアンの力って・・・どのくらいなんですか?」

 まだ肩で息をしているエリオがそう尋ねてきたので、

葵「そうだな確かレジアスの話だと特殊訓練校通ってた陸の局員が魔法ランクでそいつより上の海の局員に圧勝したといっていたな」

ティア「そ、それ本当ですか!?」

葵「魔力よりも体を鍛えた方がそれに引きつられる形で魔法も引き上がる」

ティア「そ、そうだったんだ・・・」

葵「さらに体を鍛えることによってダイエット効果にもなる。余分な脂肪の燃焼、食べても脂肪がつきにくい体にもなるとか医学的に言っていたな」

 詳しいことは知らないが。

全員(スバルとエリオを除く)「!?」

 すると、女性陣の顔つきが一気に変わり、なぜか闘志の炎を目に焼き付けていた。・・・何故かわわからんが怖い・・・。

ス・エリ「「??」」
 
 一方のすばるとエリオというよく食べる派はいまいちわからんようで。ちなみに私もこっち派と同じ考えだな。

葵「まぁ敵がガジェットだけなら楽なんだがな」

 愚痴をこぼしていると、

ヴィ「〈どういう意味だ葵?〉」

葵「・・・(話しておいた方がいいか)〈なのは、フェイト、シグナム、ヴィータは後でブリーフィングルームに来い。はやて聞こえいるだろ? お前も来るようにな〉」

 念話でそういって、休憩したら来るようにと指示を与え場所を後にする。フォワード陣には事務処理を孤狐とヴェルから教えてもらうように伝えた。



 場所は変わりブリーフィングルーム。

葵「さて、今回我々白が直接こちらに呼ばれた理由についてだ」

アイン「ん? 派遣ではないのか?」

葵「それも一つだ。主にレリックと関係がある」

 そういってモニターに一つの画像を出す。

は「ん? これのどこが変なんや?」

 出したのはガジェットとガーディアン局員との戦闘の一枚。

葵「ここだ」

 そう言って拡大すると、

全員「!?」

葵「そう。ここにあったのはレリック。それを回収する際ガジェットと戦闘になった。だが問題はそこではない。この拡大部分に映る黒い影」

シ「【不の者】・・・」

葵「今回の派遣は主にそれが理由だ。レリック出現場所並びにロストロギア之出現場所にはほぼ確実といっていいほどこいつが出現するようになった。確認されているだけでレベル1と2。3も発見されたが成長仕立てだったのか簡単に倒すことができた」

フェ「それでレリック関連を追っている私たちにも危険が及ぶと思ってガーディアンの局員を派遣」

ヴィ「でもなんで葵が?」

葵「本来ならティーダあたりになると思っていたんだがミゼット議長直々の御指名でな」

 一回大きくため息をつき、

葵「そのための訓練だと思ってもらえればいい。AMFに加えて【不の者】という最悪のコンビだ。油断すれば最悪死に直結する」

 隊長副隊長陣の目つきは一気に変わった。その後孤狐、ヴェルを含め今後の方針と訓練内容などの打ち合わせに入った。

 その後はなのはと訓練のスケジュールやフェイト達隊長陣達の今後の訓練などを考え、その日は終わった。

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