小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第二十話

 その後、アースラに移り、しばらくの間こちらで生活することになった。その後、神姫を見せると、

「ゆ、ユニゾンデヴァイス!?」

 といっていた。似たようなものなのかは分からんが、とりあえずそんなものだといっておいた。変に研究されたらたまったもんじゃない。

 まぁ他にもクロノと何度か模擬戦を繰り返していた。

 まぁ、結果は言わんでも分かってくれ。というか、コイツぐらいの相手なら魔法を使うまでもなかった。

「はぁ・・・はぁ。君は一体どれほどの力を持っているんだ!?」

「クロノ。なのはもフェイトもそうだが君達は明らかに魔法に頼り切っている。それが勝敗を分けると言うことがなんでわからんのだ?」

「ど、どいう・・・ことだ」

「とりあえず座れ。後これ」

 そういって近くの自販機で買ったポ○リがなぜかあったので買ってそれをクロノに渡した。

「済まない」

「遠慮するな。で、続きだが魔法の前にお前の場合は体ができていない」

「だからどういう意味だ?」

「君はもし【魔法が使えなかったら】ということを想定して訓練したことがあるか?」

「そういえば、無いな」

「その時点でアウトだ。魔法は万能ではない。もし使えなかったら、武器がなかったら、最終的に頼りになるのは己が身体だ。そのためには最低その場から逃げれるほどの足、護身術程度の武術を習得しておく必要性がある。君の場合はそれをスルーして魔法の基礎、応用に走っている。それでは負けるのは当たり前だ」

「君はそれもこなしているのか?」

「当たり前だ。基礎体力をつけることは戦闘においては必須だ。両手腕立て、片手腕立て、腹筋、背筋、スクワット。それぞれ最低でも二千はする」

「に、二千!?」

「そうだ。君も私もそうだが才能がない。なのはみたいな恵まれた才能がな」

「そうなのか? 僕から見れば君は才能に満ち溢れている気がするが」

「あぁこれは努力の賜物だ。愚直なまでに地道にな。それでもまだ君は私より才能はある方だ。だが、その才能も開花させねば意味がない。なら地道に努力し続けるしかないと思うぞ」

「あぁ、そうだな(だが、これだけの戦闘力、どれほどの年月をかければ。それに彼はあの子と同い年だろ!?)」

 才能か。私には縁遠いものだな。

「あとクロノ。君の悪い癖はもう一つある」

「なんだ?」

「勝ったと思い油断をしている。勝って兜の緒を締めろと言う諺がある。勝っても気を抜けばそのすきにやられる可能性がある。勝っても気を緩めることなくありとあらゆる可能性を考え行動しなければならない。君の悪い癖は必殺技を撃った後に油断が生まれそこから隙ができている。それを注意しろ」

「・・・あぁ、わかった」

 すると、突如緊急事態を告げるアラートが鳴り響く。

「何事だ!?」

 クロノの顔が局員の顔に戻る。

「分からんがとりあえずブリッジに向かおう」
 

 ブリッジに着くとそこには荒れた海と、嵐のように荒れ狂う空が映し出されていた。

「・・・・天気予報だと台風はこないはずだが?」

―ズガァアー

「どうした?」

 私がそんなことを言うとみんながこけた。足腰弱いな〜。

「あ、葵君。じゅ、ジュエルシードが反応したんだよ?」

「神無月君。もう少し緊張感を持ってね」

「そうか、場を和ませようとしたんだが」

 それよりも、あの荒れ狂う場にフェイトがいた。

「あのバカ・・・」

 はぁ、あれほど怪我をさせるな、人に心配させるなといったのに早速これか。

「すまないが現状の説明を頼めるか?」

「えぇ。残り六つのジュエルシードが海にある可能性が高かったの。彼女達は魔力を繰りそれを半ば強制的に発動。そして今に至ると言うわけ」

 リンディ提督もどうやらあきれた様子だ。確かにあれは一人で抑えられるものではない。私でもあと一人、いや二人支援系の魔法使いがほしいぐらいだ。

 するとなのはが、

「あの! わたし、急いで現場に!」

「その必要はないよ」

 クロノがそうなのはに言い放った。

「放っておけば彼女は自滅する。仮に自滅しなかったとしてもそこで彼女を叩けばいい」

 なるほど。

「そうだろうな。君達組織は常に最善の方法をとる―――というわけか」

「えぇ。そうね」

「葵君!?」

「だが、私は組織の人間ではない。というわけで私は私のとるべき道を進ませてもらうよ」

 エクスに起動命令を出して白騎士の格好をする。

「なにを言っているだ、君は!?」

 クロノがそう言い放つが、

「クロノ。最初の契約時に言ったはずだ。私となのはは独立した行動権を持たせるように言ったはずだぞ? それを今行使するだけだ」

「うっ」

「それに、彼女は私にとって大切な者だ。それを護って何が悪い? 友を、仲間を護って何が悪い? 友や仲間を助けるのに理由がいるのか? それを悪というのか? ジュエルシードなど後回しだ。今は彼女の安全確保を、人の命を護る方が優先すべきことではないのか?」

「・・・・・」

「あぁ、あといっておくことがある。私を止めたければ止めるといい。だが、その時はこの艦がどうなるかは分かっているな」

 私の身体からは魔力だけでなく、殺気、覇気と呼ばれるモノを一気に放出する。

「クロノ。そう言えば君とはエクスとルミルのどちらかを使って戦ったことはなかったな。今からでもどうだ? ちょうどエクスを使っている。間違ってあの世に案内することになるかも知れんがその時は許せ」

 そういってジャベリンの銃口をクロノに向ける。

「・・・・はぁ。止めておくよ。まだ僕も死にたくない」

「そうか」

 すると、リンディ提督がこちらを向いて、

「あなたはどうしてそこまでするの? 彼女は――」

「さっきも言ったはずだ。彼女は大切な者だ。なのはやユーノと同様にな。それにリンディ提督。あなたはなぜ管理局に入ったのですか? 人を助けるためじゃないんですか?」

「!」

 その顔を察するにあたったようだ。

「・・・・そう、だったわね。歳は取りたくないものね」

「おや? 私から見ると十分若いと思いますが?」

「そう? 嬉しい言葉ね。それより、神無月君。お願いしていいかしら。彼女の救出と保護を」

「無論そのつもりだ。なのは、君はどうする?」

「いくよ! わたしも、フェイトちゃんを助けたい!」

「そうか。では、行くとしようか」

 待っていろフェイト。お前が望む未来を必ず作ってやる。誰もが幸せな世界は無理かもしれない。だが、せめてお前達が、私にとって大切な者たちが幸せな世界を創るために。

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