小説『黄泉路への案内人』
作者:楽一()

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第二二話

「戻りました」
 
 そういって無事アースラに戻り報告をしていると、クロノが、

「きみを敵に回さなくてほんっっっっとによかったよ」

 そういって私の両肩に手をのせて半ばあきれ顔で言っていた。

「そうだな。敵に回して暴走でもしてみろ。太陽系が無くなるぞ」

「「・・・・は?」」

「冗談だ」

「君の場合冗談に聞こえないんだが!?」

「やろうと思えばできる!」

「しなくていい!」

「まぁまぁ。神無月君もそんなことはしないわよね?」

「えぇ。それよりもあの雷は何だったんですか?」

「あぁ。そのことについてたが」

 そうクロノが言うと一つのモニターが現れ、そこにはプレシアの写真があった。

「彼女の名前はプレシア・テスタロッサ。僕達と同じミッドチルダ出身の魔導師だ。専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師ながら違法研究の失敗によって放逐された人物です。登録データと先ほどの魔力波も一致しています」

「クロノ君、プレシア・テスタロッサの追加データ持ってきたよ!」

 扉から出てきたのはエイミィだった。

「彼女は二六年前まで管理局の中央技術開発局の第三技局長でしたが、当時彼女が独自に開発していた、次元航行駆動路【ヒュードラ】使用の際違法な材料を使用し失敗。結果、中規模次元震を引き起こし、中央を追われ地方へ異動となりました。随分もめたいみたいですよ? 事故は結果に過ぎず実験材料には違法性はなかったと。辺境に異動後も数年間は研究に携わっていたみたいです。しばらくして行方不明になったと・・・」

「他の情報は無いのか? 家族構成、その研究内容とか」

「抹消されているみたいですね」
 抹消?

「おかしくないか?」

「え?」

「どういうことだ?」

 周りの人間が一気に私の方へと注目する。

「エイミィ、その研究内容に使われた材料も抹消されたのか?」

「え? うん、そうみたい」

「それはおかしくないか? 普通なら失敗は成功の母というように、失敗データは二度と事故をおこなさないためにも保存しておくだろう。ましてや、違法な材料ならなおさらだ」

「確かに」

「それに実験内容だけならまだ分かるが、なぜ家族構成まで消す必要性がある。おかしいだろ明らかに」

「確かにそうね」

 これは徹底的に調べてみる必要性があるな。

「クロノ。確か君は執務官だったな」

「あぁ」

「悪いがプレシア・テスタロッサのその違法実験の内容や実験材料について調べてもらえないか? あと、リンディ提督も彼に権限を使わせて調べれるところまで調べてもらえませんか?」

「そうね。確かに謎が多すぎるわ」

「それに、事の発端はもしかして・・・・あり得るな」

 あいつが関わっているとなれば・・・・。それにあいつならやりかねん。

「あれが、フェイトちゃんのお母さん」

 なのはがプレシアの画像を見ながら、そうつぶやいた。

「何か気になることでもあるのか?」

「葵君。さっきの雷、フェイトちゃんを狙ってたよね」

 鋭いな。気付いていたのか。

「あぁ。間違いなく。だが、それが果たしてプレシアの意思なのか、他の者による介入かは定かではないな」

「? 神無月君。どいうことですか?」

「確証を持てないからいまだに保留。ということでお願いします」

 出来れば、そうであってほしくないな。でも、そうなるとあの雷はプレシアの意思だったということになる。

 どちらに転んでも結果は最悪だな。


SIDEアルフ


 あの女がフェイトに用があるといったから呼ばれたとおりに来てやった。だけど、

―パシンッ!!!

「なにをやっているの。フェイト。私はジュエルシードを集めるよう言ったはずよ」

 容赦なくフェイトに鞭を振るう。

「ごめ・・・んな・・・さい」

「それに、あれだけの好機を持って、ただボーっとしているだけなんて。それにあそこにいた二人は敵なのよ! 何のんきにしていたの!?」

「ご、めんな・・・さ・・い」

 フェイトの声が小さくなるが、それでも容赦なく鞭の音が場を包む。

「なにが違うの! あの娘とあの少年、神無月葵は敵なのよ。それとも、私を裏切るつもり?」

「ち、ちがいます・・・・私は!」

 もういいよフェイト! なんでそんなにも、あの女を!

「黙りなさい!」

―パシンッ

「うぐっ・・・・・」

「プレシアーーーーーー!」

 もう我慢できない! よくも、よくもフェイトを!!

「きちゃ、だめ・・・・アルフ・・・」

 それを最後に、フェイトは気を失った。

「ふん・・・」

 そのままあの女は地下へと降りて行った。

「フェイト! フェイト!!」

 あの女は絶対に許せない! この怒りを数十倍、いや数百倍にして返してやる!

 そのままあたしはプレシアの後を追った。

「プレシア、あんたよくもフェイトを!」

 そういってあの女に向かって殴りかかる。だが、障壁が展開され拳が届かない。でもかまわず、拳を振るい続け障壁を破る。

「あんたは母親で! あの子はあんたの娘だろ! あんなに頑張ってる子に・・・あんなに一生懸命な子に・・・なんであんなひどいことができるんだよ!?・・・え?」

 そのときあたしは目を疑った、うっすらだがあの女の眼に涙があった。

 でも、次の瞬間。

―バシュゥウ

 腹部に魔法を叩きこまれ、あたしは壁に激突する。

「・・・いつも、いつも、フェイトを心配して、ときには怒っていやったり、時には笑ってあげたり、時には心配してやったり、よっぽど、よっぽど葵の方があんたより家族だよ! それなのにあんたは!!」

 あの女の眼を見ると、もうその目には涙は無かった。見間違いだったのか。

「あの子は使い魔の作り方が下手ね。余分な感情が多すぎる」

「フェイトは、あの子は、あんたに笑ってほしくて、以前の笑いあえる家族に戻ってほしくて、一生懸命巌ばてるんだろうがぁあああああ!」

 一撃、一撃でいい。あいつに入れられるなら!

「邪魔よ・・・きえn・・・ぐっ」

 すると、あの女が、頭を抱え始め何かを言い始めた。

「あ、アルフ。は、はやく、ここから、逃げ・・・な、さい」

「え?」

「あ、の少年に、伝え・・・て・・・。私は・・・・も・・・いい。あの・・子・・。フェ・・イトだけでも・・・助けてあ・・げて」

「な、何を「アァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」な、なによアレ!?」

 あたしは目を疑った。あの女の背中から黒い、黒色の影の化け物が姿を現した。

「行きなさい! アルフ!」

 そういってあの女は移動魔法を展開させてあたしをどこかに移動させた。

 な、なんだったんだい、最後のは。あいつなら、葵なら何かわかるかもしれない!

 そう思いつつあたしは意識が途切れた。


SIDE Out


SIDEプレシア

「はぁ、はぁ」

 いまだに頭の中で何かがうなっている。

―ナゼ、タスケタ

―モウ、ホロブシカナイノニ

―オマエモ、モウ、シヌ

―アノ、ムスメモ

―キボウナンテナイ

 子供、女、男、老人さまざまな人間が恨みや憎しみを私に言い放ってくる。

「黙りなさい!」

 あの子だけ、せめて、あの子だけでも!

「カハッ!?」

 吐血。あの事故のせいで体を病がむしばみ、さらに研究を続けた結果がこれだ。さらに、この化け物のせいで浸食速度が上がっている。
 
 でも、ここで意識を手放せば、あの子・・・が・・・

 そう言って目の前が真っ暗になった。


SIDE Out

SIDEフェイト


「フェイト、起きなさい・・・・フェイト」

「はい、母さん」

 どれぐらい時間がたったんだろう。母さんが呼ぶ声が聞こえ、起きる。そこには私が母さんのために集めたジュエルシードと母さんがいた。

「あなたが手に入れてきたジュエルシード9つ。でも、これじゃまだ足りないの。最低でもあと5つ、出来ればそれ以上欲しいの。急いで手に入れてきて母さんのために」

「はい」

 そういって私は起きて、すぐにでも母さんのためにジュエルシードを集めようとした。でも、母さんから予想外の言葉が来た。

「それより、あなたのそばにいた少年のことを聞かせて。フェイト」

「え?」

 葵のこと? でも、なんで?

「あなたが以前、あなたを助けたのを思い出してね。お礼がしたいの。それにその子はとてもいい子なんでしょ?」

「はい。葵はとても優しくて、強い男の子です。でも、彼は今管理局に」

 そう、葵は今管理局にいる。管理局がそれを見逃すわけがない。私が言ったら葵に迷惑がかかるし、下手をすれば母さんが捕まってしまう。

「大丈夫よフェイト。それに彼はかなりの魔力を保持しているみたいね。きっと管理局から無理難題を押し付けられているわ。そのまま放置しておくと彼が死んじゃうかも。それを助けてあげるの。あなたが」

 あ、葵が死んじゃう!? そんなの嫌だ! 絶対に助けないと!

「わ、分かりました。葵を、葵を説得してみせます」

 葵。絶対にあなたを助けてあげるから。


SIDE Out


「さて、リニスと久々の再会だな。後いろいろ相談しないと」

 あの後、リンディ提督から相手方が動かないからと新しい情報が入るまでゆっくりしていていいと言われた。その後帰宅許可をもらい一度家に戻ることにした。

≪でも、なのはちゃん、家族に会えるんだ。嬉しいだろうな≫

「そうだな。久しぶりの再会だしな」

≪はい、家族というのはいいものです≫

 帰宅時にリンディ提督が高町家に説明するという提案があった。まぁ、あの高町家の全員を納得させるのは私でも疲れる。特にシスコンと士朗さん。

 帰宅後、リニスと今まであったことを話し、今後アースラと協力するのでリニスにも協力してほしいとお願いをしてリニス自身も自分の身内のことなので協力することになった。

 翌日、私は普通に学校に行くと、

「おはよー」

「あ! 葵君!」

「あんた、ここ数日何してたのよ」

「んー。秘密。というか叔父の用事を手伝っていただけだ」

「おじさんって、お世話になってる?」

「あぁ」

「へぇ。何やってるの?」

 ・・・・そこまで考えていなかった。

「まぁ、人には言えないこと?」

「なんで疑問形!? というかそんなやばいことしてるのあんたの叔父!?」

「すずかちゃん! アリサちゃん! 久しぶり!」

 なのは。ナイスタイミング!

「あんたも何やってたのよ!」

「え? えっと・・・その・・秘密」

「はぁ〜、あんたも?」

「ふふふふっ」

 この三人の光景を見るのも久しぶりだな。やはり三人は大切な友人同士なのだろう。誰かが欠けてもいけない。かけがえのない者たちなんだ。

 昼休み。久しぶりの四人での昼食にアリサが、

「ねぇ、今日うちに遊びに来ない?」

 と、アリサの家へご招待されました。

「〈葵君、どうすればいいの?〉」

「〈別にかまわんだろう。いざとなれば私だけでも行けるし、あちらにはクロノもいる。問題はないだろうしな。それになのは自身も久しぶりに遊びたいんじゃないのか?〉」

「〈えへへへ。分かっちゃった? じゃあお言葉に甘えて〉うん、行く!」

「よかった。すずか、あんたももちろん来るでしょ?」

「うん。もちろん」

「そういえば、葵。あんたまだ家に来たこと無かったわよね?」

「そう言えばそうだな」

「じゃあ決定ね」

「なにが?」

「来ること」

「どこに?」

「うちに」

「・・・初めから主語つけようなアリサ。今ので四行無駄にしたぞ?」

「? 何のこと? それより来るでしょ」

「あぁ。お邪魔しよう。それよりデザートというほどのものではないが。久しぶりに作ったこれなどどうだ?」

 そういって取り出したのは動物の形をしたクッキーだ。

「「「いただきます!」」」 

 さすが女の子。甘いもの好きだ。

 食べた瞬間。

「おいし〜!(葵君の料理もおいしかったし、甘いものもおしいの!)」

「うっ、まあまあね(おいしい。そこらへんのものよりもおいしい!)」

「おいしぃ〜(そう言えばお家に呼んだ時のケーキ、葵君が作ったんだっけ?)」

 その後も昼食も終わりお茶を飲んでいると、アリサが。

「あ、そう言えば昨日の夜に家がしてる犬を拾ったの」

「犬?」

「うん。すごい大型で、なんか毛並みがオレンジ色で、おでこに、こう、赤い宝石がついてるの」

 その話を聞いてアルフを思い出した。

「〈葵君。それって・・・〉」

「〈間違いないな。アルフだ〉アリサ。その犬の写真とかないのか?」

「写真? あるわよ」

 そういって携帯の写真を見せてくれた。

「わぁ〜。本当にオレンジ色なんだ」

「〈間違いない。アルフだ〉」

「〈うん〉」

「どうしたの?」


「いや、どこかで見たことのある犬だと思ってな。どこだったかな?」

「心当たりあるの!?」

「あぁ。アリサの家に行くまでには思い出しておく」



 そして放課後、アリサの家に着き早速アルフがいる檻の前についた。

「〈あ、葵・・・〉」

「〈休んでいていい。無理をするな〉」

「どう? 知っている犬だった?」

「あぁ。知り合いの犬だ。間違いない。休み時間にそいつとも連絡を取った。叔父の家を知っているのでこちらで引き渡したいが良いか?」

「えぇ。良いわよ」

「ありがとう。それと、もう少しこの子を安心させたいから檻から出してもらっていいか? あと三人には悪いが下がってもらえないか?」

「え?でも・・・」

「アリサちゃん。行こ」

「すずかちゃんの言うとおりだよ。葵君。すぐに来てね」

「あぁ分かっている」

 檻からアルフを出した後三人が行ったのを確認して。

「リニス。出てきてくれ」

 茂みから一匹の猫が出てきて、アルフの前に座る。

「〈アルフ!? 大丈夫ですか!?〉」

「〈り、リニスかい? あぁ、このぐらい・・・ぐっ〉」

「〈無茶をするな。今、治癒魔法をかける〉」 

 そういって詠唱を始めるとアルフの下に魔法陣が展開され傷口が収まっていく。

「〈すごい・・・・痛みどころか魔力も回復してる・・・〉」

「〈それより何があったんだ?〉」

「〈葵、フェイトを、フェイトを助けてやってくれ! お願いだ!〉」

 アルフは泣きながらも、しっかりと自分の目の前で起きたことを放した。

 フェイトがプレシアからの虐待を受けていたこと。そして我慢の限界が来てプレシアを殴ろうとしたら彼女の後ろから黒い魔物が出てきたこと。

「〈そうか。つらかったろ。もういい。我慢しなくていいんだ。泣いてもいいんだ。アルフはよく頑張った〉」
 
 そういって子供をあやすように優しくアルフを抱きしめてやる。

「〈う、うわああぁああぁああああああああああ!〉」

 ダムが決壊したかのようにある府は泣き始めた。

 間違いない。奴だ。あいつが! また誰かの幸せを踏みにじったんだ! 覚悟しておけ、貴様だけは絶対生きていてはいけないんだ!

 心に怒りの焔がついた瞬間だった。

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